松竹の業績に異変が生じる、今期見通しを営業黒字から赤字に一転【決算から映像業界を読み解く】#86

松竹の業績に異変が生じている。

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松竹の業績に異変が生じる、今期見通しを営業黒字から赤字に一転【決算から映像業界を読み解く】#86
松竹の業績に異変が生じる、今期見通しを営業黒字から赤字に一転【決算から映像業界を読み解く】#86
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松竹の業績に異変が生じている。

2025年2月期(2024年3月1日~2025年2月28日)通期見通しを増収から減収、営業利益を営業損失に一転させた。主力事業の一つである演劇事業において団体客の回復が遅れていることに加え、秋から年末年始にかけての興行に苦戦。映像関連事業も低調に推移した。

松竹が得意とする伝統芸能は、コロナ禍を境に人気が低迷している。2025年は試練の年となりそうだ。

通期予測を今期3回目の下方修正

2025年2月期第3四半期累計期間(2024年3月1日~2024年11月30日)の売上高は前年同期間比4.9%減の594億2,000万円、営業利益は同96.0%減の7,400万円だった。10億1,800万円の純損失を計上している。

松竹は今期の期初に売上高を前期比8.7%増の929億円、営業利益を同35.8%減の23億円と予想していた。売上規模はコロナ禍を迎える前の2020年2月期の974億7,900万円に迫るものだった。しかし、2024年10月11日に映画興行が計画に比べて低調に推移していることを理由に、売上高を予想比5.5%減の867億円、営業利益を同23.1%減の10億円に引き下げた。

一度目の下方修正で売上見通しは大幅に引き下げられたものの、前期を割り込む水準には至っていなかった。しかし、2025年1月14日に発表した下方修正では、売上高が前期比3.5%減の824億円、9億4,000万円の営業損失(前年同期は35億8,400万円の営業利益)となっている。二度目の修正で、松竹の業績の停滞感が鮮明になった。

決算短信より筆者作成

2025年2月期第3四半期累計期間における、映像関連事業の売上高は前年同期間比8.1%減の302億円、5億4,800万円のセグメント損失(前年同期間は14億3,300万円のセグメント利益)を計上している。松竹は今期、人気エッセイを映画化した『九十歳。何がめでたい』を公開。興行収入10億円を突破するヒットを飛ばした。

また、人気ミュージシャンのライブに迫った『Mrs. GREEN APPLE // The White Lounge in CINEMA』も興行収入18.9億円を突破する人気作となっている。映像のもととなったライブは音楽劇という、演奏と芝居が同居する方式が採用された。一般的なライブパフォーマンスをエンターテインメント空間へと昇華させたことも、映画のヒットに一役買っているだろう。

松竹がシルバー層をターゲットのど真ん中に置いた作品や、ライブフィルム作品をヒットに導いた功績は大きい。ヒットの再現性を持たせられる可能性が高いからだ。

特に松竹は古典芸能を映画化する『シネマ歌舞伎』、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場と提携して取り組むオペラの映画館向け映像作品『METライブビューイング』で舞台作品を映像化する技術を磨いてきた。

『Mrs. GREEN APPLE // The White Lounge in CINEMA』のヒットは、そのノウハウが花開いたものと見ることもできる。

しかし、映像関連事業は減収だった。興行においては、前期は『名探偵コナン 黒鉄の魚影』『君たちはどう生きるか』『キングダム 運命の炎』などのヒット作があったが、今期はそれらのヒットには届かず反動減に見舞われている。

また、松本幸四郎と市川染五郎の父子が共演した時代劇映画『鬼平犯科帳 血闘』が2024年5月10日に公開されたが、本作の興行収入も振るわなかった。

演劇事業も厳しい。


《不破聡》

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