アニメやゲームなどのコンテンツ産業は、国の基幹産業とされ、海外市場を切り開いている。しかし、その目覚ましい発展の裏側で「取引適正化」の課題も指摘される。
2025年12月には、公正取引委員会が映画・アニメ制作の取引実態調査を公表するなど、業界内外でコンプライアンスへの意識が高くなっている。
コンプライアンス違反は必ずしも悪意によって発生するものばかりではない。複雑極まる製作委員会の権利処理や、表計算ソフトによる「ブラックボックス化」した管理体制、属人化した契約管理などが、意図せぬミスやうやむやな処理を生んでいるケースも考えられる。
こうした状況では、担当者の努力だけでミスを防ぐのにも限界がある。だからこそ、まずは「どこがリスクになっているのか」「どこから手を付けるべきか」を整理し、ツールやシステム比較・検討の土台を作ることが重要になる。
もはやコンプライアンスの順守はマナーではなく、企業の「生存戦略」と言える。この課題に対し、解決策として日立システムズが提供するのが「ロイヤリティ契約管理支援システム」だ。
本システムは収益分配の計算が煩雑になりがちな日本の製作委員会システムの契約管理とロイヤリティ計算を自動化するものだが、企業のコンプライアンス対策にも大きな力を発揮する機能があるという。
ガバナンス強化を実現し、「守りのDX」でIP産業の健全な発展と信用を担保する同システムの真価について、システム部の山田浩貴氏、営業部の須貝玲哉氏、デジタルマーケティング推進部の赤井希氏に話を伺った。

ロイヤリティ契約管理支援システム
コンプライアンスに関する相談が増えている
――昨年末に公正取引委員会が映画・アニメの製作現場の取引環境に関する実態調査の結果を公表するなど、映像産業のコンプライアンス意識に対する社会の認識に変化が見られます。実際にクライアントから、コンプライアンスに関する相談を受けることは多くなっていますか。
須貝:はい。例えば、IPライセンス料の計算ロジックの透明性を確保したいというご相談をよくいただきます。また、取り引き先へ発注する際に、契約内容が信頼できるものか、そのプロセスを後から確認できるようにしたいというお声も増えています。業界全体で、中小受託取引適正化法(以下、取適法)を順守するためのシステムを整備しようという意識の高まりを感じますね。
赤井:当社にお問い合わせいただくお客さまは、「現状を変えねば」という強い危機感をお持ちなのだと思います。作品の海外配信やグッズのグローバル展開など、アニメ業界の事業規模が拡大している背景もあり、業界全体でコンプライアンス意識が変わってきていることの表れだと認識しております。
――現状、コンプライアンスという観点から、映像産業ではどんな問題が起こりやすいのでしょうか。

須貝:やはり、業務の属人化によるリスクが挙げられます。なぜなら、その業務を担当している人にしか内実がわからない状況そのものが、コンプライアンスリスクが高い状態だからです。
例えば、契約締結をメールでやり取りする場合、担当者のメールボックスにしかプロセスの履歴が残らないケースがあります。また、ライセンス料の計算を表計算ソフトで行なっている場合、ファイルを開かないと中身が分からないうえ、ローカルPCに保存されたデータを誤って削除すれば、すべて消えてしまいます。さらに、手作業での計算はミスも起きやすく、それが何度か続けば、取り引き先から悪意を疑われかねません。
しかも、いざ問題が起きてから経緯や根拠を追い直そうとすると、関係者への確認や資料の探索に時間がかかり、説明コストが膨らみやすい。だからこそ平時のうちに、履歴や根拠が残る仕組みを前提に、現実的な選択肢を比較・検討しておく必要があります。
映像産業はこれまで「性善説」で回ってきた面もあると思いますが、属人的なやり方で意図せぬミスが起きやすいのであれば、仕組みを改善する必要があります。実際に今、その必要性に迫られている状態だと認識しています。
契約プロセスを残せる機能を追加
――「ロイヤリティ契約管理支援システム」は、製作委員会のロイヤリティ分配の自動計算ツールですが、コンプライアンス向上にも活用できるツールなのですか。
山田:取適法への対応として最も重要なのは、「契約プロセスのログを残す」ことで、当社ではそのためのオプション機能の提供開始の準備を進めています。お客さまからよく受けるご相談に、「契約内容は問題ないが、なぜその内容に至ったのかを後から分かるようにしたい」というものがあります。たとえ下請け会社にとって不利な条件で双方が合意していたとしても、なぜ合意に至ったのか、その経緯を残す必要があります。「本当に相手が納得したのか」という証跡が昨今は求められるのです。
――そのオプションを開発したのは、やはりクライアントからの要望が増えているからですか。
山田:それもありますし、もともと私たちも「もっと手軽にトラブルを防止できる仕組みを提供できないか」と考えていたんです。実はこのオプションは、当社の別製品「相談管理」にある機能を応用したものです。これをロイヤリティ契約管理支援システムと組み合わせれば効果的だと考えました。実際にお客さまにご紹介すると、「まさにそういう仕組みが欲しかった」と高い評価をいただいております。

――契約トラブルは結局のところ「言った、言わない」となることが多いですから、ログを残せるのは大切ですね。
赤井:契約内容の根拠を示せと言われてもできないのは、発注側にとってリスクが高い状態です。また、受注側も自分たちを不利な立場にしないために、記録を残すことを意識した方がいいと思います。そのためにこうしたツールを提供しております。
担当者が退職しても答えられる状態にすることが重要
――相談管理の導入以外に、基本機能としてガバナンス強化につながる機能はありますか。
山田:すべての操作ログを保持することができます。これにより、不正な操作やデータの改ざんを原則として防ぐことが可能です。また、システムにデータを登録するだけで自動計算されるため、人為的なミスを防ぎ、属人化も解消できます。承認権限のコントロール機能も備えており、少人数の会社から大企業まで柔軟に対応可能です。より複雑な承認フローが必要な場合は、別のワークフローパッケージと組み合わせてご提供することもできます。
――すべての操作ログが残るので、例えば監査法人が入ったときにも説明可能となるわけですね。
山田:はい。根拠を示すことができなくて、結果的にトラブルに巻き込まれてしまうという事態は避けられるのではないかと思います。それに、こうしたツールがあることで、万が一自社の内部に悪意のある人物がいたとしても、抑止力として機能すると考えています。
須貝:ガバナンス強化の観点では、操作ログや計算の根拠が一元管理されていること自体が重要です。担当者が退職してしまい、誰も詳細を答えられないという状況を作ってはいけないのです。
赤井:アニメは現在非常に注目されている産業ですから、異業種からの参入も増えています。そうした事業者さまは業界独自の商慣習に詳しくないため、当社のシステムをお求めになるケースが多いです。本システムにはあらかじめ標準的な業務プロセスが設計されているため、そのフローどおりに進めていただくだけで、コンプライアンス違反の防止につながります。

山田:これから映像などのコンテンツビジネスに参入を検討される企業さまには、その標準フローをぜひ活用してほしいと思っています。また、お客さまそれぞれの特色に応じて、カスタマイズも可能です。
事業は「守り」を固めてこそ「攻め」に転じられる
――こうしたシステムでガバナンス強化をすることは、クリエイターと信頼関係を築くうえで大切だと考えますか。
須貝:映像産業において、クリエイターや取り引き先との信頼関係は切っても切れない要素だと思います。クリエイターの方々も、さまざまな理由で仕事を選ぶと思いますが、契約や支払い体制などの透明化を図ることで信頼度が高まることはあるはずです。信頼性を高めることで優秀なクリエイターを集めやすくなるのであれば、それは作品のクオリティーにも反映されるはずです。
――コンプライアンスを守るための仕組み作りが、作品のクオリティーを高め、競争力の向上にもつながるわけですね。
須貝:そうですね。こういった業務は間接部門が実施することが多いので、どちらかというと「守り」のイメージを持たれがちですが、守りの土台をしっかりと固めてこそ、ビジネスの「攻め」に転じやすくなるんです。
山田:私たちは、世界に誇る日本のコンテンツ産業を応援したい。そして、その裏側をしっかりと支えたいという想いを持っています。だからこそ、攻めも守りもオールインワンでカバーできるサービスをご提供しております。

赤井:あるお客さまのお話ですが、当社のシステムを導入される以前は、毎日長時間の業務をせざるを得なかったと言います。しかし、導入後はかなり時間に余裕ができたそうです。やはり、余裕のない状況で仕事をすると苦しいですし、ミスも起こりやすくなります。そういう意味で、当社のシステムは「人にやさしいシステム」でもあると思っています。
須貝:現在、製作委員会用途でSaaS版のリリースを予定しております。イニシャルコストを抑えて導入できるため、中小企業の皆さまにもお使いいただきやすくなるはずです。 現在、モニターとしてご協力いただける企業さまを募集しております。ご興味のある方は、ぜひご参加いただければと思います。
SaaS版モニター募集に関するお問い合わせはこちら日立システムズ「ロイヤリティ契約管理支援システム」詳細はこちら







