アニメーション制作のIGポートは、2025年5月期第2四半期累計期間(2024年6月1日~2024年11月30日)を5割近い増収で折り返した。
100%出資している『君に届け 3RD SEASON』の版権収入を第1四半期に一括計上しており、2025年5月期上半期における版権事業の売上高は前年同期間の1.7倍に急増。テレビアニメ『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』の放送を開始したこともあり、映像制作事業も2割近い増収となった。
『真・侍伝YAIBA』や『SPY ×FAMILY Season3』などの制作が決定しているものの、今期の下半期はやや好材料に欠ける展開になりそうだ。
売上高は通期予想に対して6割進捗
2025年5月期第2四半期の売上高は前年同期間比47.0%増の76億8,900万円、営業利益は同38.0%増の8億2,500万円。今期の通期売上高は前期比9.7%増の129億9,300万円、営業利益は同41.8%増の17億3,700万円と予想している。
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※決算短信より筆者作成
上半期時点の進捗率は、売上高が59.2%で営業利益が47.5%だ。前期の通期予想に対する進捗率は売上高が50.1%、営業利益が67.1%だった。今期はすでに売上高の進捗率が6割に達している。
ただし、前期は2024年2月に公開した映画『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が興行収入115億円突破して異例のヒットを飛ばした。そのため、IGポートは上半期時点の通期予想を13.4%上回って着地している。
今期の下半期においては『怪獣8号』の劇場公開が2025年5月に控えている。しかし、これは第1期の総集編だ。テレビ版の総集編を劇場公開した作品では『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!』が前後半で興行収入11.9億円を突破しているが、このアニメは音楽ものであり、劇場に足を運ぶ価値が高い作品だった。『怪獣8号』は質の高いアクションシーンが魅力となっている。その力で多くの観客を呼び込めるかどうかが試される。
今期は『真・侍伝YAIBA』が2025年4月から放送を開始する。原作は『名探偵コナン』の青山剛昌氏によるもので、1988年から1993年まで連載されていた。1993年に『剣勇伝説YAIBA』としてテレビアニメ化されている。『真・侍伝YAIBA』は青山剛昌氏がシナリオの完全監修を行ったものだ。
『らんま1/2』や『うる星やつら』など、80~90年代の人気作がリメイクされるケースがよく見られるようになった。『キン肉マン』『地獄先生ぬ~べ~』『シャーマンキング』などのリメイク版も製作されている。
往年の人気作は、新たなIPを育てるよりもヒットさせる潜在性を持っている。すでに一定の認知があるからだ。特に80年代から90年代のテレビアニメには『ドラゴンボール』や『北斗の拳』など、世界的な人気作が含まれている。そうした時代背景があった中で磨かれた作品は、一様に質が高い。それが現在のリメイク熱につながっているのだろう。
『真・侍伝YAIBA』は作画を原作に寄せるなど、「週刊少年サンデー」や原作の愛読者をターゲットとしているのは明確だ。しかし、ファンの裾野が決して広いとは言えず、大衆的な人気を博していた『らんま1/2』のリメイク版ほどの話題作りはできないのではないか。
映像制作で赤字を出しても版権で回収するモデル
IGポートは映像制作事業、版権事業、出版事業、その他事業の4つで成り立っている。