2026年5月16日、カンヌ国際映画祭マーケット部門「マルシェ・ドゥ・フィルム」のMain Stage(Riviera)で、「The Power of Place: Made in Japan」と題したパネルディスカッションが開かれた。主催は国際フィルムコミッショナーズ協会(AFCI)とジャパン・フィルムコミッション(JFC)。
「The Power of Place」のプログラムは、ロケーションが制作の意思決定にどのような影響を与えるのかを、創造面、経済面、戦略面から考えるシリーズだ。
本セッションのテーマは「Made in Japan」。カンヌ2026のカントリー・オブ・オナーである日本が、国際制作にとってどのような機会を提供できるのか。インセンティブ、高い技術力を持つスタッフ、制作インフラ、そして変わりつつある受け入れ環境が議論された。

モデレーターは、世界各国のスクリーン産業政策やインセンティブ設計を手がけるOlsberg SPIのCEO、レオン・フォード氏。登壇者は、JFC事務局長の関根留理子氏、東京フィルムコミッションの杉崎まりこ氏、KNOCKONWOOD Inc.代表でプロデューサーの山口晋氏、そして群馬県知事の山本一太氏。
モデレーターのフォード氏は、2023年に経済産業省が本格導入した国際共同製作向けのインセンティブ制度、さらに日本政府が掲げる「IP 360」戦略に言及。同戦略では、日本発コンテンツの海外売上を2033年までに20兆円規模へ拡大することが目標とされている。
近年日本では、A24『スマッシング・マシーン』、『レンタル・ファミリー』、Apple TV+『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』、『神の雫/Drops of God』など、海外作品の撮影や制作協力の事例が積み上がっている。今回の議論は、その実務面を国際プロデューサーに向けて解きほぐす場となった。
日本の制作文化は何が違うのか
まず問われたのは、日本の制作文化だ。山口晋氏は、海外プロデューサーが日本で制作を行う際に理解すべきポイントとして、大きく2点を挙げた。

ひとつは、ビジネス慣習と文化的背景の違いである。山口氏は、日本では意思決定に時間がかかりやすく、最終キャスティングや予算の確定といった重要事項が後ろ倒しになることもあると説明した。その結果、責任の所在が曖昧なまま制作が進み、後に混乱を招く場合があるという。
もうひとつは、制作体制の違いだ。日本の現場では、各部署が高い独立性を持ち、暗黙の了解や日常的な非公式確認によって調整が行われる傾向がある。一方、欧米の国際制作では、ラインプロデューサーを中心とするトップダウンの指揮系統が一般的だ。
山口氏は、「誰が何を決めるのか、最終決定権がどこにあるのか、情報がどう流れるのか」をプリプロダクションの段階で明確にする必要があると強調した。









