【アヌシー現地レポート】グローバル・アニメ・チャレンジ参加者がMIFAでピッチ。日本アニメの新世代によるオリジナルIPを世界へ

アヌシー国際アニメ映画祭MIFAで開催されたグローバル・アニメ・チャレンジ(GAC)のピッチセッション。国内で活躍する11名のクリエイターが登壇し、短編からTVシリーズ、長編、キャラクターIPまで多彩なオリジナル企画を世界に披露した。

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アヌシー国際アニメーション映画祭のマーケット「MIFA」において、グローバル・アニメ・チャレンジ(GAC)の参加者によるピッチセッションが開催された。

登壇したのは、監督、アニメーター、プロデューサーとして国内外で実績を重ねてきた11名。短編、TVシリーズ、長編映画、キャラクターIPまで、幅広いオリジナル企画を世界のアニメーション関係者に向けて披露した。

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オリジナルIPに挑む日本アニメの新世代

最初に登壇したのは、小出卓史監督。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』ではTVシリーズと劇場版で副監督を務め、『メイドインアビス』第2期ではオープニング演出や第10話演出を担当した。2026年7月には、自身が監督を務めるオリジナルTVシリーズ『さよならララ』も放送されている。

小出氏が紹介した新企画はTVシリーズとして企画された『Lucifer’s Lawyer』だ。悪が原因ではなく、「誰もがルールを守った結果」として地獄のようになってしまった街を舞台にした、ファンタジー・ミステリー・ロマンス・バディコメディだ。

主人公は、故郷を守ろうとする若き弁護士マリと、人間と悪魔の契約を成立させる力を持つ悪魔ルシファー。かつて美しい湖を中心に栄えた街ブルーレイクは、ルシファーが町長、警察、建築家、観光業者らと次々に契約を結んだことで経済的な繁栄を手に入れる。その一方で、街は炎と血、重力異常、悪魔に満ちた“ヘルタウン”へと変貌してしまう。

正反対の価値観を持つ二人は、契約の抜け穴を探しながら街を取り戻そうとする。小出氏は「誰が地獄を作ったのか。悪魔か、それとも私たちか」と問いかけた。

続いて登壇したアニメーターの工藤真奈氏は、初のオリジナル企画となる短編コメディシリーズ『Error 403』を発表した。同企画は、1話約2分、全12話の短編アニメーションシリーズ。企画の出発点になったのは、工藤氏自身が学生時代に抱いていた「家から逃げ出したい」という感情だった。大人になるにつれ、自由とは単に逃げることではなく、自分が何者になりたいのかを選ぶことでもあると気づいたという。

主人公は、人間に仕えるために作られた家事ロボットの少女Robot Girlと、研究対象として研究所で育てられた希少な宇宙人の少女Alien Girl。二人はそれぞれの“与えられた人生”から逃げ出し、地球から遠く離れた小さな町で出会い、共に暮らし始める。その町には、自分だけの生き方を選んだ風変わりな人々が暮らしているという内容だ。

プロデューサーの史耕氏は、自身の2Dアニメーションスタジオ「騎虎」の活動を紹介した。騎虎は2021年から東京を拠点に活動するスタジオで、土海明日香監督と共に、広告やミュージックビデオなど幅広いクライアントワークを手掛けてきた。

会場では、同スタジオが土海監督と制作した短編『もし、これから生まれるのなら』のトレーラーも上映された。本作はファンタジー/ドラマの2Dアニメーション作品。胎内で生まれるのを待つ命と、夫を失い深い悲しみの中にいる母親の心情を対比させて描く。2026年に公開され、史耕氏は海外映画祭や配給に関する推薦を会場に呼びかけた。

続いて紹介された新企画は、土海監督による長編企画『Nightmare』。ジャンルはファンタジー/ホラーで、ビジュアルスタイルは2Dアニメーションだ。

物語の舞台は、終末への恐怖が広がっていた1999年。夢の中で出会う存在“Mare”と、現実世界に生きづらさを抱える子どもたちが描かれる。夢に逃げるのか、現実に生きるのか。便利なテクノロジーに囲まれながらも、人と深くつながることが難しくなっている現代に向けて、同作は「本当に誰かとつながるとは何か」を問いかけるという。

“かわいい”から怪談、書道、死生観まで。多彩な企画群

谷本馨氏は、書道家としての経験とアニメーションを結びつけた企画『Kaku Calligraphy』を発表した。谷本氏はアニメーターであり書道家でもあり、『地獄楽』第2期ではアニメーター、作画監督、筆文字を担当。『戦国妖狐』でも筆文字を手掛けている。

タイトルの「Kaku」には、日本語の「書く」と「描く」という二つの意味が込められている。同作は、幼少期から谷本氏の人生にあった書道と、現在の仕事であるアニメーションをつなぐ試みだ。書くという行為を通して、人間の感情、創作の苦悩、人とのつながりを描くファンタジーアニメーションとなる。

森山愛弓氏は、『ポケットモンスター』シリーズで原画や演出を担当し、『Pokémon Horizons: The Series』では12話分の演出を務めた。今回発表した『Mahora』は、現代日本を舞台にした50分の短編映画企画だ。

物語は、はるか昔、大きな川の氾濫を止めるために生贄となった子どもが、妖怪として現代に蘇るところから始まる。人間への復讐を望む妖怪だったが、ある日、肝試しにやってきた女子高生のシホとウララに見つかる。二人は妖怪を恐れるどころか「かわいい」と受け止め、「一緒に動画を作って有名になろう」と誘う。最初は人間を怖がり、復讐を考えていた妖怪も、シホとウララとの交流を通じて、次第に「人間はそれほど怖くないのかもしれない」と感じ始める。

篠原啓輔監督は、TVシリーズ『その着せ替え人形は恋をする』を監督したほか、長編『BLACKFOX』などを手掛けてきた。今回の企画『Phantom of the Cadillac』では、『すずめの戸締まり』『天気の子』など新海誠監督作品に携わり、『きみの色』『ハイキュー!!』『僕のヒーローアカデミア』などにも参加してきた岡村和佳菜プロデューサーと共に開発を進めている。

『Phantom of the Cadillac』は、アメリカを舞台にしたホラーのTVシリーズ企画。両親を亡くした三姉妹の物語で、長女マッケンジーはキャデラックの事故で命を落とし、次女ジャナは焼けたキャデラックを目撃したことで心を閉ざしてしまう。数年後、末妹リーガンは弁護士となり、家族の思い出が詰まったピンクのキャデラックを修復する。だが、そこには死んだはずのマッケンジーの魂が宿っていた。三姉妹の時間は再び動き出すものの、穏やかな再会は長く続かず、復讐が始まる。

山本ゆうすけ氏と伊藤優希氏は、『YU-REI-Chan』を発表した。山本氏は『ぼっち・ざ・ろっく!』第1期の副監督、『その着せ替え人形は恋をする』第2期の副監督を務め、現在は『ぼっち・ざ・ろっく!』第2期を監督として制作中だ。伊藤氏は『モブサイコ100』第1期の動画検査、『ぼっち・ざ・ろっく!』第1期のバンド演奏シーン作画、『逃げ上手の若君』第1期の作画監督などを担当してきた。

『YU-REI-Chan』は、日常系とスーパーナチュラル・コメディを掛け合わせた作品で、1話3分のショートエピソードのシリーズ。

着想のきっかけは、伊藤氏がGACでフランスに長期滞在した際に墓地を訪れた経験だった。フランスでは墓が身体と結びついたものとして感じられ、死者が戻ってくるならゾンビのように想像される。一方、日本では火葬が一般的なため、死者の帰還は幽霊として想像されやすい。この文化差から、怖いだけではなく、かわいく、奇妙で、日常の中にいる幽霊少女“YU-REI”が生まれたという。

舞台は、東京のようで東京ではない架空の街、波鹿野区。幽霊少女YU-REIと、静かな生活を送りたいアルバイト生活者KYO-BATEが、奇妙で心地よい日常を送る。YU-REIと共に過ごすささいな日々を笑いとともに描く作品で、3分完結型の構成により、オンラインやソーシャルメディアとの相性も意識されている。

伊藤氏は、別企画『Mouse Undertaker』も紹介した。チームは、伊藤氏がアニメーター、中目貴史氏がプロデューサー、刈谷暢秀氏が監督を務める。中目氏は『君の名は。』『未来のミライ』『葬送のフリーレン』などに携わり、刈谷氏は『ぼっち・ざ・ろっく!』『葬送のフリーレン』『その着せ替え人形は恋をする』第2期などに参加してきた。

『Mouse Undertaker』は、ファンタジー、ドラマ、コメディの要素を持つ全対象向けの短編企画。現在は2~3分のパイロットフィルムを準備中で、最終的には30分の短編映画を目指している。

物語で描かれるのは、死と隣り合わせに生きるネズミたちだ。彼らは恐ろしい敵に気まぐれに襲われ、仲間を次々に失っていく。それでも、その過酷な世界では、死は日常の一部にすぎない。そこへ、死者を弔う一匹のネズミ、“Mouse Undertaker”が現れる。

斎藤圭一郎監督と中目貴史プロデューサーは、『Kawaii Lore: Moko & Pyle』を披露した。斎藤氏は『ぼっち・ざ・ろっく!』第1期と『葬送のフリーレン』第1期で監督を務めた人物だ。

同作のジャンルはコメディ/ドラマ/ファンタジー。上映時間は30分、ターゲットは全年齢、ビジュアルスタイルは2Dアニメーションだ。

企画の中心にあるのは、日本語の「かわいい」という感覚。斎藤氏は、「かわいい」は単に“cute”と訳せるものではなく、弱さや不完全さの中に価値を見出し、あるがままを受け入れる感情だと説明した。それは、自分が好きなものを好きだと言い、自分らしく生きるための“感情の自由”にもつながっている。

物語は、かつて世界をかわいいで満たしたいと願った神が、人間界に転生し、生きたぬいぐるみ“Moko Mo Kōmo”になるところから始まる。モコは世界的な成功を収めるが、本当の自分を隠し、孤独に生きている。そこへ、使い古されたぬいぐるみPyleが現れる。正反対の二人は少しずつ友情を築きながら、かわいいの本当の意味と、自分たち自身を再発見していく。

将来的には「Kawaii Lore universe」として、短編、長編映画、シリーズなど複数フォーマットへの展開を目指す。

最後に登壇したのは、BLUE RIGHTSのCEOである木村誠氏。アニメプロデューサーとして18年の経験を持ち、2007年からフジテレビジョンで複数のアニメ制作を担当した。2018年からはMAPPA取締役に就任し、アニメ制作だけでなく、音楽、イベント、製作出資、ライセンスビジネス管理にも携わってきた。『チェンソーマン』などでは、100%自社出資による製作スキームも構築、その後独立した。

木村氏は、戦争や対立、分断が進む現代において、アニメーションは何を語るべきかという問いから、世代の異なる作家たちによる3本の企画が生まれたと説明した。

最初に紹介されたのは、中村隆監督による長編アニメ『Orochi: Seventh Echoes』。中村監督は、『風の谷のナウシカ』で原画、『AKIRA』で作画監督・チーフアニメーターを務めたレジェンド・アニメーターだ。

続いて、中村亮介監督による『Ouroboros: The Stars and The Memories』が紹介された。中村監督は『魍魎の匣』、『グリムガル、灰と幻想の世界』などの監督として知られる。映像では、子どもたちが想像した“大森林”の世界、異界、神隠し、そして消えた友人ノアの記憶をめぐる物語が提示された。

三本目は、35歳の宝井俊介監督による長編アニメーション企画『Ninja Scooler』。宝井監督はAiobahn feat. 牧野由依「non-reflection」MVで監督、レイアウト、原画、編集を担当し、『メイドインアビス 深き魂の黎明』や『メイドインアビス 烈日の黄金郷』、『盾の勇者の成り上がり Season 3』などにも参加している。

木村氏は、これらのプロジェクトは異なる世代のアーティストによって生み出されたものであり、それぞれが今日の世界を異なる視点から見つめていると語った。現在は、世界の観客へ届けるための国際共同製作パートナー、国際共同製作に知見を持つスタジオとの出会いを求めているという。

今回のGACピッチでは、日本のアニメーション産業が培ってきた技術やキャラクター表現を土台にしながら、クリエイター自身の個人的な体験、欧州滞在で得た発見が、それぞれの企画として形になっていた。

これらの企画が欧州をはじめとする世界のプロデューサー、配給、投資家、スタジオとどう結びついていくのか。近い将来、この日紹介されたプロジェクトが実現することを期待したい。

なお、本ピッチプログラムに参加した史耕氏、中目貴史氏、森山愛弓氏が登壇するトークイベントを8月31日に開催する。アヌシーで披露されたオリジナル企画についても話を伺う予定だ。詳細・申し込みについては以下のページを参照されたい。

《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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