2026年5月15日、カンヌ国際映画祭のマーケット部門「マルシェ・ドゥ・フィルム」内にて、The European Audiovisual Observatory(EAO)主催のセッション「FOCUS on World Film Market Trends」が開催された。同機関が毎年発行する映画市場データ集「FOCUS」の2026年版発表を兼ねた45分間のセッションには、フィルム・アナリストMartin Kanzler氏、Nicolas Edmery氏、Elisa Joliveau-Breney氏、そして今年のカントリー・オブ・オナーである日本から経済産業省の梶直弘氏が登壇した。
冒頭、マルシェ・ドゥ・フィルム エグゼクティブ・ディレクターのギヨーム・エスミオール氏は「FOCUSはマルシェの『バイブル』」と紹介。続いて法務情報部門責任者のMaja Cappello氏は、日本がカントリー・オブ・オナーに選ばれた今年、世界興行を牽引するアジアにスポットが当たることを「偶然ではあるが、極めて示唆的だ」と語った。

本記事では、興行回復、製作構造、公的支援という三つの観点から、世界・欧州・日本の比較を整理する。
世界興行の回復はアジア主導、日本のみがコロナ前を超える
最初に登壇したNicolas Edmery氏は、82カ国のデータを集計した世界興行の概況を示した。2023年の世界の映画館入場者数は約50億人で、コロナ前(2017~2019年の平均)と比較して依然28%減の水準にとどまる。一方、2022年比では3%増と回復基調にあり、その牽引役はアジアである。アジア全体では10%増を記録し、中国の市場回復、インド、日本、ベトナム、マレーシアなどの伸長が寄与した。


対照的に欧州は前年比5%減。Edmery氏は要因として、フランス市場における米国・国産大作の不在、そして欧州全体で米国映画の動員が約4,000万人減少したことを挙げた。北米も減少傾向にあり、欧州とほぼ同水準で推移している。
世界の回復率(コロナ前比)は概ね60~70%だが、アジアは78%、中東はコロナ前を超えた。また、主要市場(中国、インド、米国、日本、メキシコ)のなかで、コロナ前の入場者数を上回ったのは日本のみである。










