歴代最高2700億円超えの陰で進む「映画館の地域格差」。最新データで読み解く日本のスクリーン偏在と未来

2025年、日本の映画興行収入は2744億円で歴代最高を記録した。だがその裏で、映画館のない自治体は全国の8割を超え、スクリーンの都市集中が加速している。『映画上映活動年鑑2025』のデータから、繁栄と格差が同居する日本映画界の現在地を読み解く。

映像コンテンツ 劇場
出典:一般社団法人コミュニティシネマセンター
出典:一般社団法人コミュニティシネマセンター

2026年3月10日、一般社団法人コミュニティシネマセンターが『映画上映活動年鑑2025』を発行した。同書によれば、2025年の日本の映画興行は歴代最高の興行収入を記録した。

コロナ禍からの回復が遅れる国が目立つ中でこの状況は快挙と言える。ただし、その一方でスクリーンの都市集中は進み、映画館へのアクセスに地域差が広がっている実態も同時に見える。

本稿では、この年鑑のデータを手がかりに、2025年の映画館の状況、スクリーン数と上映本数の推移、そして映画館を持たない自治体が全国のどれほどを占めるのかを見ていきたい。


興行収入2700億円超で歴代最高、圧倒的な「邦画一強」と洋画復調の兆し

2025年の国内映画興行は、数字の上でははっきりと回復局面に入った。日本映画製作者連盟の「映画産業統計」によると、観客数は1億8875万6000人で前年比130.7%、興行収入は2744億5200万円で前年比132.6%となっている。

興行収入は2000年以降の統計で歴代最高となり、コロナ禍前の最高である2019年の2611億8000万円を越えた。

市場を牽引したのは、圧倒的なヒット作の存在だ。アニメーションでは『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が391.4億円を叩き出し、実写では『国宝』が195.5億円を記録。その他、『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』は147.4億円、『劇場版「チェンソーマン レゼ篇」』は104.3億円。100億円超えの邦画が複数生まれた年だった。

市場構造の面では、「邦画一強」の傾向が一段と鮮明になっている。2025年の興行収入の内訳は日本映画2075億6900万円、外国映画668億8300万円で、シェアはそれぞれ75.6%と24.4%だ。

外国映画の興行収入はコロナ前の2019年と比べると56%程度にとどまる。ただし前年比では130.7%と、日本映画と変わらない伸びを示しており、復調の兆しも見られる。

2025年に興行収入10億円以上を稼いだ作品は日本映画38本、外国映画12本の計50本。全公開本数1305本に対して3.8%にすぎないが、興収では2022.7億円を占め、全体の73.7%に相当する。ヒット作への集中が、2025年の興行収入を押し上げた構図が浮かび上がる。

スクリーン数は微増、シネコンが約9割を占める構造に

映画館とスクリーンの数も、緩やかに増えている。2025年の全国スクリーン数は3739で、前年から30スクリーンの増。映画館数は597館で3館増となった。2016年から2025年までの10年間で、映画館は9館、スクリーンは234スクリーン増えている。ただ、その中心にあるのはシネマコンプレックスだ。

年鑑の集計では、2025年のシネコンは367館・3328スクリーン。全スクリーンの実に89%をシネコンが占めている。映画館数で見ても597館中367館、61%がシネコンだ。日本の映画館インフラは、スクリーン数ベースではほぼシネコン中心の構造になっている。

それに対して、シネコン以外の映画館は230館・411スクリーンにとどまる。10年間でシネコンが24館・265スクリーン増えた一方、シネコン以外は15館・31スクリーン減った。

一方で、シネコン以外の中でもミニシアター・名画座は増加している。2025年時点で147館・252スクリーン、2016年からは32館・64スクリーンに増加。東京・大阪・名古屋といった大都市に限らず、那珂市の「あまや座」、青梅市の「シネマネコ」、益田市の「小野沢シネマ」、下関市の「シネマポスト」、沖縄市の「シアタードーナツ」など、中小都市での開館や再生も続いている。

とはいえ、小規模映画館の課題は少なくない。特に重いのが、デジタルシネマ機の更新問題だ。2010年代前半に入れた機材が導入から10年以上経ち、更新時期を迎えつつある。1台1000万円近い設備投資が要るケースもあり、ミニシアターや既存の興行館にとっては大きな経営負担となる。

2025年の映画業界全体は歴代最高興収を記録した。ただ、その恩恵がすべての映画館に等しく行き渡っているわけではない。特定の作品に観客が集中する傾向は強まっており、小規模館にはコロナ禍からの回復が十分でないところも少なくない。


《杉本穂高》

関連タグ

杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

編集部おすすめの記事