【カンヌ現地レポート】AI時代のIP価値は「作品単体」から「データと来歴のネットワーク」へ。「AI時代」の知的財産と収益化

カンヌ「マルシェ・ドゥ・フィルム」内のCannes Nextで開催されたセッション「The Future of IP in the Age of Machines」。投資家、プロデューサー、テクノロジー企業、米国弁護士が登壇し、AIが映像産業のIPバリューチェーンをどのように変えつつあるのかを議論した。

グローバル マーケット&映画祭
Carlo Rizzo氏
Carlo Rizzo氏
  • Carlo Rizzo氏
  • 【カンヌ現地レポート】AI時代のIP価値は「作品単体」から「データと来歴のネットワーク」へ。「AI時代」の知的財産と収益化
  • 【カンヌ現地レポート】AI時代のIP価値は「作品単体」から「データと来歴のネットワーク」へ。「AI時代」の知的財産と収益化
  • Elisa Alvares氏
  • Yannick Bossenmeyer氏
  • Erik Svilich氏
  • Angela Dunning氏
  • 【カンヌ現地レポート】AI時代のIP価値は「作品単体」から「データと来歴のネットワーク」へ。「AI時代」の知的財産と収益化

2026年5月18日、カンヌ国際映画祭のマーケット部門「マルシェ・ドゥ・フィルム」内で行われるビジネスカンファレンス「Cannes Next」で、Fondazione CinemaO主催のセッション「Cannes Next | The Future of IP in the Age of Machines | Presented by CinemaO」が開かれた。

登壇したのは、CinemaO共同創設者のCarlo Rizzo氏、Tower Peak Partners LLPでグローバルIP投資を担当するElisa Alvares氏、Logical Pictures Group共同創業者でCascade8 CEOのYannick Bossenmeyer氏、来歴証明技術を手がけるEncypher創業者CEOのErik Svilich氏、米国カリフォルニア拠点のCleary Gottlieb Steen & Hamilton LLPでパートナー弁護士を務めるAngela Dunning氏の5名。

セッションでは、CinemaOがTower Peak PartnersおよびEncypherと共同でまとめた調査レポートの発表とあわせて、AI時代のIPをめぐるリスクと機会が話し合われた。論点を貫いたキーワードは、「来歴証明(provenance)」「データ」「人間の著作者性」「IPユニバース」「欧州のデジタル主権」である。


聞き取りから見えた「IPの新しいリスク」

モデレーターを務めたRizzo氏によれば、本プロジェクトはおよそ半年前にスタートした。機械がコンテンツを生み出す時代にIPの価値はどう変質するのか——その問いを出発点に、投資家、法律家、テクノロジー企業、プロデューサー、業界専門家ら28人への聞き取りを短期間で行った。「いま分かったことは、半年後には古びているかもしれない」とRizzo氏は語り、調査スピードそのものがテーマの性質を映していると指摘した。

Carlo Rizzo氏

調査で真っ先に浮かび上がったのは、「帰属」の不確実性というリスクだ。AIを使った制作が当たり前になりつつある一方で、法制度はまだ追いついておらず、業界は自主規制でしのいでいる。AIに対応した新しい保険商品も出始めているが、保険料は高く、導入のハードルは依然として高い。

ウォーターマーキング、フィンガープリンティング、独立した登録技術といった、透明性を支えるインフラはすでに揃っている。問題は、それを業界全体でどう採用していくかだ。

ただし透明性にはジレンマもつきまとう。「AIをどう使ったか記録せよ」というアドバイスは広く聞かれるようになったが、創作過程をすべて記録するということは、創作過程を常に監視されることと表裏一体でもある。透明性と過度な精査のあいだに、新しい緊張が生まれている。


《杉本穂高》

関連タグ

杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

編集部おすすめの記事