東宝・東映・松竹の決算読み比べ、松竹から東宝に配給が変わったガンダム大ヒット【決算から映像業界を読み解く】#90

東宝、東映、松竹の2024年度における第3四半期の決算が出そろった。

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東宝・東映・松竹の決算読み比べ、松竹から東宝に配給が変わったガンダム大ヒット【決算から映像業界を読み解く】#90
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東宝、東映、松竹の2024年度における第3四半期の決算が出そろった。

東宝、東映は2桁の増収営業増益、松竹は減収、9割以上もの大幅な営業減益となった。東宝は映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』や『キングダム 大将軍の帰還』、TOHO Animationの作品が事業をけん引し、東映は映画『帰ってきたあぶない刑事』『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!』や、『ドラゴンボール』『ONE PIECE』などのアニメ版権が貢献した。松竹は主力の映像関連事業、演劇事業ともに赤字となっている。

東映は『ゲゲゲの鬼太郎』のIPを拡大できるか?

東宝と松竹は2月、東映は3月決算だ。従って、比較する第3四半期累計期間は東宝・松竹が2024年3月1日~2024年11月30日。東映が2024年4月1日~2024年12月31日となる。

東宝の売上高は前期比15.3%増の2,341億円と絶好調。東宝は今期の売上高を前期比4.8%増の2,970億円と予想しているが、進捗率は8割近い。2025年公開の『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning』や映画『グランメゾン・パリ』、『ファーストキス 1ST KISS』などがヒットしていることからも、今期は上振れて着地する可能性が高そうだ。東宝は前期も2桁増収だったが、今期もそれに続くことができるか注目だ。

驚くべきは、松竹の十八番だったガンダムシリーズを東宝が配給し、大ヒットへと導いていることだ。松竹は減収で弱含んでいるが、今回の出来事で一段とその弱さを露呈する結果になったように見える。

※各社決算資料より筆者作成

東映の売上高は前期比1.6%増の1,304億円と微増に留まった。

『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険!』の興行収入が12億円を突破し、シリーズ歴代2位を記録するなど好調。『帰ってきた あぶない刑事』も16億円を超えてヒットした。しかし収益貢献は限定的。足元の業績を支えているのは『ONE PIECE』と『ドラゴンボール』シリーズのアニメ版権や、劇場用映画『THE FIRST SLAM DUNK』『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の国内外配信権だ。

ただし、東映がヒットIPに『ゲゲゲの鬼太郎』を加えた意味は大きい。本作に限らず、次の作品で影響力を拡大できるかどうかが勝負となるだろう。

松竹はターゲットをシニア層に絞り込んだ『九十歳。何がめでたい』、フレッシュな俳優群で固めた『あのコはだぁれ?』、得意とするステージ作品の映画化である『Mrs. GREEN APPLE // The White Lounge in CINEMA』の3作が10億円を超えるヒット。2024年1月公開の『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が特別上映を開始し、累計の興行収入が50億円を超える大ヒットとなった。しかし、売上高は前期比4.9%減の594億円と振るわなかった。

松竹は通期売上高を1.5%の増収と予想していたが、今回の決算を受けて3.5%の減収へと一転させた。配給作品で確実なヒット作を出しているものの、前期は興行におけるヒット作が続出したため、今期はその反動を受けている。映像関連事業は8.1%もの減収だった。


アニメの配信権で大幅な増益を達成した東宝


《不破聡》

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