Amazon オーディブル(以下Audible)は2026年5月28日、東京都内でプレス発表会を開催し、2026年の事業戦略および新作ラインナップを発表した。日本でのサービス開始から11年目を迎え、「聞く読書」をより多くのユーザーに届けるため、話題作・名作のオーディオブック化、オーディオファースト作品の強化、そして新ジャンル開拓による利用層拡大という3つの柱に注力する方針が示された。
発表会には、Audible カントリーマネージャーの逢阪志麻氏、ヘッド・オブ・コンテンツ・ジャパン キーリング・宮川ともみ氏が登壇。後半のトークセッションには、本日配信開始となる村上龍『5分後の世界』の朗読を担当した俳優の桐谷健太氏、文芸評論家の三宅香帆氏、小説家の染井為人氏がゲストとして参加し、「聞く読書」の魅力について語り合った。
再生時間は世界で年間約60億時間
冒頭に登壇したAudible カントリーマネージャーの逢阪志麻氏は、Audibleが1995年に米国で誕生したデジタルオーディオブックのパイオニアであり、2008年にAmazonグループに参画、2015年に日本でサービスを開始した歩みを紹介した。現在は90万作品以上を提供する世界最大級のオーディオエンターテインメントサービスへと成長しており、2025年に世界中のリスナーがAudibleを楽しんだ再生時間は約60億時間に達したという。

逢阪氏はファウンダーであるドン・カッツ氏の「目は忙しいけれど、心が空いている時間をAudibleは満たしたい」という言葉を引用し、さらに「Every book is an audiobook, in every language(全ての本を全ての言語でオーディオブック化する)」という大きなビジョンを掲げた。
Audibleが2026年3月に全国1万人を対象に実施した最新調査では、オーディオブック非利用者の55.6%が年間1冊以下の読書量であるのに対し、オーディオブック利用者の77.6%が年間6冊以上を読んでいると回答。さらにAudible利用者の84.5%が「Audibleを利用してから読書時間が増えた」と答えており、「聞く読書」が新たな読書体験の入口になっている実態が浮き彫りになった。
2026年の3つの柱:ラインナップ強化、新ジャンル開拓、リアル体験
逢阪氏は2026年の重点施策として、(1) 聞きたいに応えるラインナップ強化、(2) 新ジャンル開拓による利用層の拡大、(3) リアル体験を通じた認知拡大と利用促進、の3つを掲げた。
調査では、Audibleで聞きたい作品ジャンルとして「過去の名作・ベストセラー」が最多、続いて「人気作家の新作・話題作」「ビジネス・自己啓発書」が上位に挙がった。一方、週4~5回以上利用するヘビーユーザーでは「Audibleオリジナルのオーディオファースト作品」が3位にランクインし、書き下ろし作品への高い関心が示されたという。
リアル体験施策としては、5月25日から31日まで渋谷駅直結の地下広場で「Audibleカフェ」を期間限定オープン中であることが紹介された。逢阪氏は「使ってみて初めて分かる価値がある。日常の様々な場面で楽しめるAudibleの価値を、気軽に体験いただける機会を提供していきたい」と語った。
話題作・名作を続々オーディオブック化
続いて登壇したヘッド・オブ・コンテンツ・ジャパンの宮川ともみ氏は、2026年の具体的なコンテンツラインナップを発表した。

5月28日からは、村上龍の名作『5分後の世界』を桐谷健太の朗読で配信開始。さらに『国宝』の著者・吉田修一による『ミス・サンシャイン』、2024年ノーベル文学賞受賞者ハン・ガンのベストセラー『すべての、白いものたちの』も三浦透子の朗読で同日配信される。6月26日には池井戸潤の2年ぶりの最新作『ブティック』も配信予定。また、染井為人の最新作『硝子のマンション』は6月24日に書籍と同時配信される異例の取り組みも明かされた。

オーディオファースト作品、累計35タイトルへ
Audibleのために書き下ろされ、音声で最初に世に出る「オーディオファースト作品」も強化される。5月28日からは中山七里の新作『火と話す男』が、人気声優・榎木淳弥の朗読で配信開始。また、文芸評論家・三宅香帆の新作オーディオファースト作品『没頭する力』の予約受付も本日からスタートした。これにより、日本のオーディオファースト作品は累計35タイトルとなる。

宮川氏は「オーディオファーストという、未知のジャンルを一緒に開拓してくださった著者と出版社の皆様に感謝しつつ、今後も新しいストーリーテリングのあり方を模索し続けていきたい」と意欲を示した。
新ジャンル「韓国コンテンツ」に参入、第1弾は『天国の階段』
2026年の新たな試みとして発表されたのが、韓国コンテンツのオーディオドラマ化だ。第1弾は、2000年代にアジア中で大ブームを巻き起こした名作『天国の階段』。若手実力派俳優陣によるマルチキャストで新たに生まれ変わるという。

さらに本作の主題歌として知られる「会いたい」を、グローバルで活躍する5人組ボーイグループ・TOMORROW X TOGETHERのメンバー、TAEHYUN(テヒョン)が日本語でカバー。物語の重要なシーンで流れる予定だ。
宮川氏は「韓国コンテンツは日本国内に熱心なファン層を持ちながらも、これまで音声で物語を楽しむという体験との接点がほとんどなかった。Audibleならではのストーリーテリング、声の演技、音楽、効果音が織りなす没入体験を、この未開拓のジャンルに届けることで、新たなお客様との出会いを生み出していきたい」と語った。
桐谷健太「『5分後の世界』に誰よりもいた」
発表後のトークセッションでは、桐谷健太、三宅香帆、染井為人の3氏が登壇し、それぞれの立場から「聞く読書」の魅力を語った。
オーディオブック朗読に初挑戦した桐谷氏は、村上龍作品との出会いについて「初めて読んだ小説が村上龍さんの『コインロッカー・ベイビーズ』。今回のお話をいただいた時は本当に縁を感じた」と振り返り、収録について「朗読する時間以外も何度も読みました。朗読しながら想像しているだけじゃ遅いので、それは聞き手の方に任せて、自分なりのイマジネーションで情景を思い浮かべながらやれるように。誰よりも5分後の世界にいましたよ」と熱量を込めて語った。

文芸評論家の三宅氏は、自身の著作『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』への読者の反応に触れ、「紙だと読めなかったんですけど、Audibleだったら読めましたという声をたくさん聞いた」と紹介。さらに友人のエピソードとして「Audibleで夫婦仲が良くなった、という話を聞いた。家事をしながら、ドライブをしながら一緒に物語を楽しめる。人と共有する読書ってなかなか難しいが、Audibleなら可能なんだなと新鮮だった」と語った。

染井氏は、自身の作品が義兄に読まれたエピソードを披露。「大工をしている義兄が『お前の本読みたいんだけど、小説は読めねえな』と言っていたのが、Audibleで全部聞いてくれた。活字が苦手な人でも入っていける」と、新しい読者との出会いを実感したと話した。

聞く読書をどんな人に勧めたいかという問いに対し、桐谷氏は「本を読むのが苦手な方にもおすすめ。映像とはまた違った、自分の頭で、心で感じながら想像しながら聞いていく世界観もとても面白い」と答え、染井氏は「視力が落ちてきた方や、目の不自由な方にも、同じように物語を楽しんでいただける。それがAudibleの良さ」と、その可能性の広さを強調した。
最後に宮川氏は「お客様からのニーズがどんどん高まっている。素晴らしいクリエイター、パフォーマーの方たちと一緒に、どんどん作品を拡大していきたい」と締めくくり、発表会は幕を閉じた。










