売上予想を下回って着地した松竹、演劇事業が業績回復のカギ?【決算から映像業界を読み解く】#49

松竹が2024年2月期に35億8,400万円の営業利益を出した。ようやく3期連続の営業赤字という暗黒期を抜けた。

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売上予想を下回って着地した松竹、演劇事業が業績回復のカギ?【決算から映像業界を読み解く】#49
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松竹が2024年2月期に35億8,400万円の営業利益を出した。ようやく3期連続の営業赤字という暗黒期を抜けた。

配給作品の『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』と『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が興行収入40億円を超える大ヒットを記録。『なのに、千輝くんが甘すぎる。』と『こんにちは、母さん』も10億円のヒット作となった。

しかし、松竹は期首に売上高を924億6,000万円と予想していた。2024年2月期の売上高は854億2,800万円で予想比で7.7%少なかった。東宝、東映が好調な中で不調が目立つ。2025年2月期は売上高を929億円と予想しているが、公開を予定している作品は勢いに欠けている印象を受け、演劇事業の回復に期待しているようにも見える。

今期は1割程度の増収を見込むも3割以上の営業減益を予想

松竹は2023年2月期に収益認識の変更を行っている。その影響で、売上高は従来よりも5%程度低くなった。仮に2024年2月期も同程度の影響だったと仮定しても、売上高は900億円に届いていない計算になる。2020年2月期の売上高は974億7,900万円。コロナ禍を迎える前の水準まで戻っていないのだ。

決算短信より筆者作成

2025年2月期は売上高を929億円と予想しているが、この数字を達成してようやく2020年2月期と並ぶことになる。

今回の松竹の決算で印象的だったのは、営業利益を前期比35.8%減の23億円と予想していることだ。大幅な営業減益を見込んでいるのである。営業利益率は2.5%。前期と比較して1.7ポイント、2020年2月期と比較して2.2ポイント下がることになる。

松竹は経営計画や事業方針の開示をほとんど行っていない。そのため、今期の業績をどのようにして達成するのかが分かりづらい会社だが、事業の詳細や営業減益を見込んでいること、今期の劇場公開作品などを考慮すると、映像関連事業よりも演劇事業の回復に期待をかけているのではないだろうか。

まずは映像関連事業の詳細から見ていこう。

『大名倒産』は客層を見誤ったか?

松竹は売上高の半分ほどを映像関連事業、3割を演劇事業、残り2割を不動産などのその他事業が占めている。

2024年2月期の映像関連事業の売上高は前期比11.0%増の458億1,000万円、25億6,100万円の営業利益(前年同期は13億7,100万円の営業損失)を出した。2桁増収で堅調だったが、売上は下方修正していたことからも経営陣の予想には届かない不本意な内容だ。

不調だった作品に痛快時代劇『大名倒産』があるだろう。浅田次郎原作、神木隆之介主演というヒットの可能性が高い作品だったが、興行収入は10億円に届いていない。同様の作品では阿部サダヲ主演の『殿、利息でござる!』が13.7億円、星野源主演の『引っ越し大名!』が興行収入11.1億円、堤真一主演の『決算!忠臣蔵』が11億円だった。


《不破聡》

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