松竹とTBSの資本業務提携、メリット・デメリットを解説【決算から映像業界を読み解く】#39

1月25日に松竹とTBSホールディングスが、資本業務提携に合意したと発表。その意図やリスクを解説していく。

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松竹とTBSの資本業務提携、メリット・デメリットを解説【決算から映像業界を読み解く】#39
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1月25日に松竹とTBSホールディングスが、資本業務提携に合意したと発表した。

テレビシリーズやアニメーションなどの共同制作、オリジナルIPの創出、アニメシアターなどを共同で設立するという。松竹とTBSがそれぞれ30億円分の株式を相互に買い取る、株式の持ち合い化である。

両社の発表を見る限り、特にアニメ部門の強化が主な目的のように見える。今回の資本提携はポジティブな面とネガティブな面の2つを持っていると言えるだろう。

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のヒットでアニメの重要性を再認識

まずはポジティブな面から見ていきたい。両社が映像コンテンツを共同制作することにより、ヒットシリーズを生み出す確率を上げられるのではないかというものだ。ちょうどこのタイミングで、その兆候を見出すことができた。

松竹が配給する『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が好調だ。公開から2週間で興行収入は26.8億円、観客動員数は163万人を突破している。2月9日から2月11日の週末興行ランキングで再び1位を獲得した。

「機動戦士ガンダムSEED」は、TBS系列で今から22年前にテレビ放送されたシリーズだ。2004年に映画『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』を公開しており、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』はその2年後を描いたものである。

かなり限定された固定ファン向けの映画だが、この勢いだと興行収入は50億円を超えるのではないかと言われている。山﨑賢人や山田杏奈などの人気俳優を起用した大作『ゴールデンカムイ』の興行収入は25日間で20.8億円。『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』はこれを大幅に超える公算が高まった。改めて、熱烈なファンに向けたコンテンツの強さを見せつけている。

コアファン向けのコンテンツが好まれる傾向は、世界的に加速している。『THE FIRST SLAM DUNK』は日本とアジア圏で大ヒットし、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』と『ゴジラ-1.0』は北米を中心に盛り上がりを見せた。IPに根強いファンがついていることが重要なのだ。

「機動戦士ガンダムSEED」がテレビ放送から時を経てもなお熱烈なファンから歓迎される姿は、「エヴァンゲリオン」を彷彿とさせる。コンテンツ産業はこうした息の長いシリーズの創出が欠かせない。

日本のコンテンツ産業は、良くも悪くもメディア、特にテレビ局が覇権を握っている。コンテンツを流通させる主力チャネルは今も昔もテレビだ。映画の製作委員会においても、テレビ局の力は大きい。TBSとの結びつきを強くすることで、資金集めはしやすくなるはずだ。松竹とTBSの資本業務提携は、IPの創出や人気作を生み出すことに弾みがつく可能性がある。

アニメーションのエコシステム拡大に向けた一歩

松竹とTBSは「アニメシアター及び専用イベントホール事業等の共同設立及び運営の検討」に言及している。コンテンツの共同制作だけでなく、アニメシアターの創設というアイデアは興味深い。両社でアニメーションを取り巻くエコシステムを形成しようとしているからだ。

エコシステムとは生態系のことで、ビジネスにおいては一つの産業やテーマに基づいた経済圏を意味している。業界全体で経済圏を広げなければ、ビジネスの拡大は限定的だ。

韓国はコンテンツビジネスで世界を席巻しているが、起点となったのは1999年の文化産業振興基本法だ。ここでコンテンツ産業に5,000億ウォンという巨額の資金が投じられることとなった。潤沢な資金を制作予算に投じられるようになった上、字幕制作などの周辺産業も栄えるようになった。やがて良質なコンテンツが大量生産されるようになると、「稼げる」という意識が高まって映画や音楽に参入する人が増加。更に優れた作品が生み出されるという好循環が生まれた。

これは政府主導でエコシステムを拡大した例だが、1社だけで経済圏を拡大するのは難しい。提携という形で資金を出し合い、リスク分散するべきだろう。

TBSは現在、コンテンツグループとしての成長を目指している。2021年にマンガボックスを連結子会社化、2022年には電子マンガ・プラットホームシェア韓国1位のNAVER WEBTOONなどとWEBTOONを制作する合弁会社Studio TooNを設立した。WEBTOONとは、ウェブとカートゥーンを組み合わせた造語で、韓国発のウェブコミックである。

TBSもコンテンツを取り巻くエコシステムの拡大を行っており、松竹との連携強化は大歓迎と言えるだろう。

海外投資家から批判が多い株式の持ち合い

ネガティブな面としては、


《不破聡》

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