株式会社K2 Picturesは2026年5月17日、フランス・カンヌのJWマリオット・カンヌで「K2 Pictures ラインナップ発表 2026 in Cannes」を開催した。会場には15の国と地域から記者や映画関係者ら約80名が集まり、同社が進める映画製作ファンド「K2P Film FundⅠ」の成果や新作ラインナップ、今後の展開が発表された。
K2 Picturesは、2024年にカンヌで映画製作ファンドの組成を発表して以来、日本映画における新しい資金調達モデルづくりに取り組んできた。今回の会見では、2026年2月に総額約50億円規模でクローズした同ファンドの進捗が報告され、市川團十郎と三池崇史監督によるドキュメンタリー映画『襲名』の特報映像も世界初公開された。
K2P Film FundⅠ、総額約50億円規模でクローズ
K2 Picturesが推進する「K2P Film FundⅠ」は、2026年2月に総額約50億円規模でクローズした。主な投資企業として、三菱UFJ銀行、日本政策投資銀行をはじめとする金融機関や事業会社が参画しており、日本映画の新たな映画製作ファイナンスのモデルケースとして注目を集めている。
同社によれば、ファンドを活用した作品のうち、すでに3作品が完成。そのうち1作品は2026年2月に劇場公開されている。現在は3作品がポストプロダクション中で、2026年6月から12月にかけて5作品の公開を予定している。年内には5作品のクランクインも控えており、継続的に製作・公開できる体制が整いつつある。

会見前日の5月16日には、カンヌ国際映画祭の併設マーケット「Marché du Film」の公式カンファレンスで、日本映画におけるファイナンスの現在地と未来をテーマにしたセミナーも開かれた。K2 Pictures代表取締役CEOの紀伊宗之氏、本裕一郎氏(三菱UFJ銀行 常務執行役員)、本柳祐介氏(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー)が登壇し、映画産業における資金調達のあり方をテーマにしたセミナーが行われた。

K2 Picturesは今回、コーポレートコピーとして「ATTACK.」を発表した。「遠回りでも、困難でも、まだ誰も踏み込んでいない道を選ぶ」というコンセプトを掲げ、既存の価値観や産業構造に挑みながら、世界市場に向けて新たな映画体験を届けていく姿勢を示した。
市川團十郎×三池崇史『襲名』、2026年9月公開
会見で大きく取り上げられたのが、ドキュメンタリー映画『襲名』だ。本作は、歌舞伎俳優・市川團十郎を主演に迎え、三池崇史監督が自身初のドキュメンタリー映画として手がける作品。2026年9月の公開が決まっており、今回のカンヌ会見で特報映像が世界初解禁された。
『襲名』は、歌舞伎界の名門・市川家にとって大きな節目となる「襲名」を記録したドキュメンタリーである。十三代目市川團十郎白猿の襲名披露公演の舞台裏と歴史的瞬間を追い、日本の伝統芸能である歌舞伎における「継承」と、ひとりの人間としての葛藤を描く。

三池監督は本作について、「十三代目市川團十郎白猿とは何者なのか?」と問い直し、團十郎白猿が放つ圧倒的な「美」の謎に迫る作品だとコメントしている。歌舞伎を磨き続ける厳しさ、次なる團十郎を育てる責任、舞台に立ち続ける男の葛藤や孤独を記録した映画でもあるという。
市川團十郎は、代々受け継がれてきた團十郎の名が映像作品として後世に残ることについて「誠にありがたく、光栄に存じます」とコメントした。本作が海外から発信されることにも触れ、日本の伝統文化である歌舞伎が海外で知られ、エンターテインメントとして親しまれていることへの喜びを語った。
『GIGANT』『藻屑蟹』『人間昆虫記』など新企画を発表。国際共同製作も視野に
K2 Picturesは、今後開発・製作を進める複数の企画も発表した。ラインナップには、アニメーション、社会派ノワール、ホラー、アクション大作、国際共同製作、ダークミュージカルなど、幅広いジャンルの作品が並んだ。
劇場用アニメーション映画『GIGANT』は、『GANTZ』の原作者・奥浩哉による人気コミックを原作とする企画。巨大化することになったセクシー女優パピコが、愛する人を守るため未来人と戦うSFセクシーヒロインアクションで、K2 Picturesにとって初のアニメーション映画企画となる。
永田琴監督による『藻屑蟹(仮)』は、東日本大震災後の福島を背景にした社会派ノワールだ。原発事故による放射能汚染、補償金問題、除染ビジネス、被災者遺族をめぐる分断を描く。脚本は原作者の赤松利市と映画監督・脚本家の岩井俊二が担当し、岩井は企画プロデュースも務める。会見には永田監督が登壇し、原作に衝撃を受けたことや、社会問題の背後にある深い人間ドラマを描きたいという思いを語った。

加藤拓也監督の『NAP(仮)』は、日本、フランス、アイスランドによる国際共同製作作品として開発される。人前で食事ができない「会食恐怖症」の主人公が「睡眠アレルギー」にかかるという設定を通じて、他者と何かを共有すること、恋人らしさ、人が無意識に受け入れている価値観を問い直す実験的な映画である。
片山慎三監督によるメキシコ×Jホラー企画も明らかになった。アメリカのMiércoles Entertainment、メキシコのThe Liftとのパートナーシップのもとで開発が進められており、メキシコ×Jホラー企画として開発中である。
大友啓史監督の『コンデコマ(仮)』は、前田光世、通称コンデ・コマを題材にしたアクション大作。日本発祥の柔術を携えて世界へ渡り、後にグレイシー柔術、UFC、MMAへとつながる流れを生んだ人物を描く。日本、ブラジル、アメリカとの合作を予定している。
そのほか、ノ・ドク監督による『私の先生』、藤谷文子監督の長編初監督作『HOLD(仮)』、金子実怜奈監督の長編デビュー作『UFO Club』、二宮健監督による手塚治虫生誕100周年プロジェクト『人間昆虫記』もラインナップに含まれる。

発表済み作品としては、ゆりやんレトリィバァ監督『禍禍女』、是枝裕和監督『ルックバック』、孫明雅監督『トロフィー』、西川美和監督『わたしの知らない子どもたち』、広瀬奈々子監督『このごに及んで愛など』、井筒和幸監督『国境』などがある。
K2 Picturesは、映画製作ファンドによる資金調達と、国内外のクリエイターとの連携を軸に、日本映画の製作・流通・海外展開における新たなモデルを築こうとしている。日本の映像産業に新たな成長モデルを築けるか、今後の動きが注目される。








