東京国際映画祭と併催されたコンテンツマーケット「TIFFCOM 2025」で、ここ数年で急速に盛り上がる東南アジア市場を概観する特別セッション「国際共同製作セミナー~ケーススタディ&パネルディスカッション・東南アジア編~」が開催された。

急成長する東南アジア諸国との国際共同製作の最新状況を共有する目的で実施された本セッションは二部構成で、前半は国際共同製作で作られたタイ映画『死のキッチン』のケーススタディ、後半は東南アジアのアニメーションに関するパネルディスカッションが行われた。
第1部:ケーススタディ『死のキッチン』
【登壇者】
モデレーター:ローナ・ティー
監督:ペンエーグ・ラッタナルアーン
プロデューサー:ソーロス・スクム
共同プロデューサー:ステファノ・チェンティーニ
第1部では、東京国際映画祭のコンペティション部門にも出品された『死のキッチン』(原題:Morte Cucina)を題材に、5カ国(タイ、シンガポール、台湾、ルクセンブルク、USA)が関わった国際共同製作のスキームと課題について議論された。プロデューサーのソーロス・スクム氏はシンガポール、ステファノ・チェンティーニ氏は台湾から本作に参加している。

美食と死をめぐるブラック・コメディの源泉
ペンエーグ監督は、本作の着想は「メイドが、ネズミ捕りの毒を男の食事に少しずつ盛り続け、殺害した」という新聞記事に基づいていると語った。監督は「もし毒を使わずに、体に悪い“美味しい料理”だけで殺害したらどうなるか」というアイデアから、美食と死を巡るブラックコメディを発展させたそうだ。
また、本作は『インビジブル・ウェーブ』以来約20年ぶりに、撮影監督のクリストファー・ドイル氏、俳優の浅野忠信氏と再タッグを組んだ作品となった。ペンエーグ監督は、かつて組ん時には撮影中に飲酒していたドイル氏が、現在はノンアルコールビールを飲み、より穏やかになったと撮影現場の変化を語った。その結果、本作は「小津安二郎の映画のよう」な、静的な映像美になったと明かした。










