激動の2022年、「古き良き」からの脱却の時がきた ハリウッド業界の台所事情を総決算。

ワーナー・ブラザースに始まり、ディズニーに至るまで大手映画スタジオの「お家騒動」的ニュースが目立った2022年のハリウッド映画業界。2022年も終わりに近づく中、今年ハリウッドを揺るがせたニュースを振り返ってみる。

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激動の2022年、「古き良き」からの脱却の時がきた ハリウッド業界の台所事情を総決算。
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ワーナー・ブラザースに始まり、ディズニーに至るまで大手映画スタジオの「お家騒動」的ニュースが目立った2022年のハリウッド映画業界。2022年も終わりに近づく中、今年ハリウッドを揺るがせたニュースを振り返ってみる。

ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)お家騒動、新CEOはワーナーを救えるか?

今年下半期に入ってからのワーナーに関連するニュースは、ビジネス面のみならずゴシップ面をも賑わせた。カオスな状況はとりあえず制御されているが、作ったものが次々とお蔵入りになってしまう殺生を目の当たりにしている社員たちや製作周りに従事している人たちにとっては、戦場にいる気分かもしれない。

この状況は、デヴィッド・ザスラフ氏がワーナー・ブラザース・ディスカバリーの新CEOとして就任したことに発端を期する。以前筆者のコラムでもご紹介した『バットガール』お蔵入り事件は、ワーナーのみならず映画業界を騒然とさせた。この後もザスラフ氏が価値を見出せない作品は、ことごとく切り捨てられ、他社に売り飛ばされるか、お蔵入りとし、そこから生じた「ビジネスの損失」は税控除として大いに活用するという、非情なまでに合理的で大胆な企業内「大掃除」を行っている。


DCスタジオ新CEOに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』監督のジェームズ・ガン就任

スーパーマン、ワンダーウーマンなどでお馴染みのDCエクステンデッド・ユニバース(以下、DCEU)。そこそこの業績を上げてはいるが、マーベルに比べると圧倒的に引けを取っているフランチャイズだ。DCEUを頂点に押し上げるべく、ザスラフ氏はDC版の「ケヴィン・ファイギ」を探し求めていた。そんなポジションに就任したのは、驚くなかれマーベルの監督としてお馴染みだったジェームズ・ガンと、そのパートナーのピーター・サフランというコンビだった。

しかしこれまで決してスムーズとは言えなかったDCEUを引っ張っていくのは容易な仕事ではない。

そして、まもなく発表されたニュースは、DCファンにとって嬉しい報道ではなかった。パティ・ジェンキンス監督を中心に進んでいた『ワンダーウーマン3(仮題)』の企画を中止すると言うのである。確かに、前作の『ワンダーウーマン1984』は、コロナ禍の影響を直に受け、興行収入を伸ばし切れなかった。だが、新リーダーコンビとジェンキンス監督の間に流れたとされる険悪な雰囲気を伝える報道内容は、企画中止の決定がスムーズな合意とは思えないものがあった。Twitterを頻繁に使うガン氏は、数日後にそんな報道内容を否定するコメントを発表したが、TwitterでのDCファンの憤りは収まったようには見えなかった。

そして12月、追い打ちをかけるようにこちらも唐突に、ヘンリー・カヴィルのスーパーマン役卒業のニュースが発表される。それも、カヴィル自らが、スーパーマン復帰を喜んでいると報道されたまさに翌日のことである。 

ガン&サフラン組はこのあと、カヴィルには別のDCキャラとして起用する思惑があると発表したものの、カヴィルのスーパーマンに思いを馳せていたファンとっては、まさに冷水を浴びせられたような気分だったに違いない。ガン氏曰く、カヴィルは喜んで新たな挑戦を引き受けてくれた…といったコメントwをしているが、カヴィルのスーパーマン卒業発表タイミングは、ファンにとってガン&サフラン組への不信感を高める材料となってしまった。

ザスラフ氏の指揮下で下された、向こう10年を見越してのDCEU改革をうたう様々な決定に対して、ガン&サフラン組だけを責めるのは不公平だが、DCEUの表に立っているのはこのコンビだ。ファンが彼らのリーダーシップに不信感を抱くのも仕方がない。ガン&サフラン組がとる采配の是非は、来年以降DCEUがもたらす興行収入結果を見ないとわからない。DCEUの動向は大いに注目される。

クリスマスの奇跡!?ボブ・アイガーCEO再就任、ディズニー驚きのCEO交代劇


《神津トスト明美/Akemi K. Tosto》

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神津トスト明美/Akemi K. Tosto

映画プロデューサー・監督|MPA(全米映画協会)公認映画ライター 神津トスト明美/Akemi K. Tosto

東京出身・ロサンゼルス在住・AKTピクチャーズ代表取締役。12歳で映画に魅せられハリウッド映画業界入りを独断で決定。日米欧のTV・映画製作に携わり、スピルバーグ、タランティーノといったハリウッド大物監督作品製作にも参加。自作のショート作品2本が全世界配給および全米TV放映を達成。現在は製作会社を立ち上げ、映画企画・製作に携わりつつ、暇をみては映画ライター業も継続中。

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