Netflix、テスト上映の規模を世界中の数万人のユーザーへ拡大 フィードバックが良作につながるケースも多数

Netflixは、テスト上映参加者を現在の2,000人ベースから、来年早々には世界中の数万人のユーザーを対象に拡大する予定とのことだ。

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The Wall Street JournalはNetflixが、テスト上映参加者を現在の2,000人ベースから、来年早々には世界中の数万人のユーザーを対象に拡大する予定と報じた。

Netflixは、コンテンツ支出をより厳しく監視し、収益性をより重視するようになったことを受けて、全世界の2億2300万人に対し高い関心とエンゲージメントを得られるよう取り組んでいる。

Netflixオリジナル映画『ドント・ルック・アップ』公開前に複数グループの契約者たちが同作品を試写した際、「この映画は真面目すぎる」と伝えたと関係者は述べた。この関係者によると、映画の制作者はこの意見を参考に、映画のコメディ要素を増やし、より幅広い観客にアピールできるようにしたとのこと。結果的にこの映画は批評家の間では低評価を受けたが、アカデミー賞4部門にノミネートされ、Netflixの映画の週間視聴時間の記録を更新し、現在もその記録を保持している。

「Netflix Preview Club」と呼ばれるこのプログラムは1年以上前に始まり、ハリウッドの長年の伝統である公開前の視聴者のフィードバックを求めるという手法を参考にしている。視聴者は、公開される前にいくつかの番組や映画を鑑賞し、コンテンツに関するアンケートに回答して、気に入った点や気に入らなかった点を共有する。今後の対象ユーザーの拡大は、来年初頭に行われると報じられている。

さらにNetflixの社員も対象に、コンテンツをリリースする前にテストを行っている。全従業員が公開前のNetflixの番組や映画にアクセスし、その視聴行動を統計として集める。最近はそこから、多くの従業員がファンタジーシリーズ「サンドマン」を完走していることに気づき、番組の制作者に変更を促したとのこと。この番組は変更後に完走率が向上し、8月から9月にかけて7週連続でNetflixの英語版テレビ番組のトップ10に入った。

一方で、クリエイターに芸術的な選択をする自由を提供することを長い間誇りにしてきたNetflixは、フィードバックを共有しながらも変更を強制しないようにしているとのことで、クリエイターはどのような変更を加えるか決定することができるようにしている。

他のストリーミングサービスも、同様のプログラムを通じて視聴者のフィードバックを求めている。Amazonは「Amazon Preview」プログラムを通じて、一部の顧客にアイデアや映画、テレビ番組のパイロット版のレビューとフィードバックを求めている。Huluは「Hulu Brain Trust」と呼ばれるプログラムを通じて、何年も前から一部の消費者を招待し、コンテンツ開始後のフィードバックやアンケートへの回答を求めてきた。

そして大手スタジオはサイレント期からコンテンツのテストを行っており、キャラクターやストーリーラインがどう評価されるかを事前に理解するために、エンターテインメント業界以外の視聴者からの意見を求めていきた。パラマウント・ピクチャーズの元CEO シェリー・ランシング氏は、「1987年の映画『危険な情事』では、出演者の間で賛否両論があったものの、テスト観客の評価が低かったためエンディングを撮り直した」と、自身の伝記作家に語っている。この映画は、その後6つのアカデミー賞にノミネートされるなど、良い方向へ作品を導くことができた。

Sources:The Wall Street JournalIndieWire
《伊藤万弥乃》

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伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。