カンヌ国際映画祭のマーケット「マルシェ・ドゥ・フィルム」内のプログラム「Spotlight Asia」において、濱口竜介監督の新作『急に具合が悪くなる』を題材にしたケーススタディ「When Auteur Prestige Becomes a Financing Strategy(作家性のプレステージがファイナンス戦略となるとき)」が開催された。コンペティション部門でのワールドプレミア前夜、本作のプロデューサー陣が、日仏独ベルギーの4カ国共同製作に至る道のりと、そのファイナンス構造の実像を語った。
登壇したのは、日本側プロデューサーであるオフィス・シロウズ代表の押田興将氏、ドイツ側マイノリティ共同製作者であるHeimatfilm代表のBettina Brokemper氏。モデレーターはIci et Là Productions代表で、欧亜共同製作ワークショップ「Ties That Bind」のヘッドも務めるChristophe Bruncher氏が務めた。
本作はフランスの製作会社Cinéfrance Studiosをリードプロデューサーとし、フランス、日本、ドイツ、ベルギーの4カ国による共同製作。Arte France CinémaやEurimagesといった欧州の公的資金を取り込みつつ、濱口監督の作家性を軸にした「ディレクター・ドリヴン」のファイナンス・モデルを構築したそのプロセスについて語られた。
「映画化困難な原作」をフランス共同製作で突破する
押田氏はまず、本作の出発点について語った。きっかけは、オフィス・シロウズのプロデューサー松田広子氏が、宮野真生子・磯野真穂による書簡集『急に具合が悪くなる』を原作として見出したことに始まる。
ただし原作は、極めてプライベートな二人の往復書簡であり、そのまま映画化するにはプライバシー上のハードルを含め、多くの困難が伴うものだった。濱口監督とともに映画化の道を模索する中で浮上したのが、書簡の片方の相手をフランス人に置き換えるというアイデアだった。





