フジ・メディア・ホールディングス(FMH)は、放送収入の落ち込みや資本収益性向上への課題、一連の人権・コンプライアンス事案への反省を踏まえ、抜本的な事業構造改革に向けた「グループビジョン」と、フジテレビジョンの新たな「企業理念」を発表した。
今回の発表で明確になったのは、従来の「放送局」中心の発想から脱却し、IP・コンテンツを起点に収益を多層化する「コンテンツカンパニー」への転換である。
そのため、都市開発・観光事業への外部資本導入およびオフバランス化を検討、メディア・コンテンツ事業への経営資源集中、そして5年間で総額1,500億円規模を投じるIPバリューチェーン強化策である。
「楽しくなければテレビじゃない」からの再出発
フジテレビジョンは、新たな企業理念の策定にあたり、昨年の人権・コンプライアンス事案について改めて謝罪した。そのうえで、かつて掲げた「楽しくなければテレビじゃない」という言葉に込めた「皆さまの楽しいを追求する」という意味を、いつしか履き違えていたのではないかと総括している。
今回の理念刷新で重要なのは、「楽しい」という言葉を捨てるのではなく、ゼロベースで問い直した点だ。同社は「多くの人の心を前向きにするエネルギーとしての楽しさ」を新たな軸に据え、自分たちのためではなく、社会のための「楽しさ」を追求するとしている。
新しい企業理念は、以下の3層で構成される。
指針 | 位置づけ | 主な内容 |
Corporate Question | 自らを戒める問い | 「その楽しさは、何のためにある?」を起点に、社会に届ける価値を問い続ける |
Corporate Policy | 行動規範 | 「楽しさを、はき違えるな」「楽しさで、誰かを傷つけるな」など |
Corporate Story | 目指す未来 | 「ひとりの好きからはじまる熱を、世界中へあふれさせていく」 |
中心に置かれた「その楽しさは、何のためにある?」という問いは、同社のコンテンツやサービスが社会にとって本当に価値あるものかを確認し続けるためのものだ。
「楽しさを、はき違えるな」「楽しさを、隠れ蓑にするな」「楽しさで、誰かを傷つけるな」という言葉には、楽しさを免罪符にしないという意思が込められている。配信、SNS、イベント、グッズ、ファンダムへと接点が広がるなか、フジテレビは「楽しさ」を社会的責任を伴う価値として再定義しようとしている。

