映像産業を支援するVIPO(特定非営利活動法人映像産業振興機構)とNetflixが協力して、映像業界で働くスタッフ向けに全7回「リスペクト・トレーニング」の無料開催を行った。
リスペクト・トレーニングは、Netlfixが開発したワークショップ型のトレーニングで、制作現場でスタッフやキャストが互いに安心して働ける環境を作るために実施されている。スタッフ同士が互いにリスペクトするために考える力を養うことで、心理的安全性が高まり、より能力を発揮しやすい環境作りに貢献している。日本では2018年から実施されており、Netflix作品の制作時にキャスト・スタッフ全員が参加しているという。
今回BrancではNetflixとVIPOが共催したリスペクト・トレーニングの会場を取材。さらに、本トレーニングを日本に導入した、Netflixプロダクション部門の日本統括ディレクター小沢禎二氏に話を聞いた。
ハラスメントの線引きはしない、考える力をつける場
リスペクト・トレーニングの講師を務めるのは、Netflixのオフィシャルパートナーでもあるピースマインドの組織支援コンサルティング部スーパーバイザー 、田中秀憲氏。最初に本トレーニングの趣旨が説明された。これは、ハラスメント講習にありがちな「~してはいけない」ことを教えるものではなく、互いにリスペクトのフィルターを通して考える力を養うものだという。撮影現場では、日々様々なことが起き、その場面ごとに状況は異なる。紋切型にやってはいけないことを教えても、対応しきれるものではない。そのためにNetflixでは、自ら考える力を養うトレーニングを重視しているという。

トレーニングは、参加者同士のディスカッション形式で進行する。講師の田中氏から様々な問いかけがなされ、チームでディスカッションし、発表していく。例えば、ある場面のセリフと情景を例に、その場面にリスペクトはあるかどうかを議論してもらう。
チームごとに議論内容を発表していくが、田中氏はどの意見に対しても「駄目だ」とは決して言わない。ここはハラスメントの線引きをするのでもなければ、結論を出す場でもない、あくまで考える力を養う場であるということが徹底されており、唯一の結論を導くようなことはしていなかった。

Netflixの小沢氏は、トレーニングの冒頭に「これを受けて、明日から急に現場が良くなるというものではない」と説明していた。日々考えて、何が相手にとってリスペクトになるのか、状況ごとに考えることを重視することが、各スタッフの心理的安全につながるということのようだ。

トレーニング終了後には、参加者に「Respect Trainingバッジ」を配布していた。これは、Netflixが実際の撮影現場で行うリスペクト・トレーニングでも配布しており、 このバッジを他の現場でつけている人を見ると、仲間意識が芽生えるという。また、Netflix作品以外の現場でも同じバッジをつけている人に出会うことで互いをリスペクトし合う考えが他の現場にも広がっていると感じるという。
リスペクト・トレーニングで起きた現場の変化とは?
トレーニングでは初めて出会う参加者同士が、現場での経験を話し合い、活発な議論が繰り広げられていた。このトレーニングを通じて、現場にどんな変化が起きるのか?受講後、本トレーニングを日本に導入した、Netflixプロダクション部門の日本統括ディレクター小沢禎二氏に話を聞いた。
