日本のドラマは放送広告依存から抜け出せるか。総務省支援の国際ピッチが韓国BCWWで実現【現地取材】

韓国・ソウルで開催された国際放送映像マーケット「BCWW 2026」で、日本のドラマ企画を売り込むピッチ「Japan Drama First Look: Co-Pro Pitch」が初めて開かれた。国内の広告収入に頼る制作モデルからの転換を目指す総務省の狙いと、ソウルの舞台に立ったプロデューサーたちの危機感や手応えを取材した。

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日本のドラマは放送広告依存から抜け出せるか。総務省支援の国際ピッチが韓国BCWWで実現【現地取材】
日本のドラマは放送広告依存から抜け出せるか。総務省支援の国際ピッチが韓国BCWWで実現【現地取材】
  • 日本のドラマは放送広告依存から抜け出せるか。総務省支援の国際ピッチが韓国BCWWで実現【現地取材】
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  • 総務省 放送コンテンツ海外流通推進室 室長 岡亮宏氏
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  • 日本のドラマは放送広告依存から抜け出せるか。総務省支援の国際ピッチが韓国BCWWで実現【現地取材】

2026年9月14日から16日の3日間、韓国・ソウルで、アジア最大級の放送・映像コンテンツマーケット「BCWW(BroadCast WorldWide)2026」が開かれた。今年、この会場で初めて日本のシリーズドラマ企画をプレゼンするピッチプログラム「Japan Drama First Look: Co-Pro Pitch」が実施され、日本から10組、韓国から5組が登壇した。

このプログラムは、総務省の令和8年度事業「実写コンテンツの資金調達多様化に関する調査」の一環で、特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)が運営している。企画段階から海外展開を見据え、海外の放送・配信事業者との国際共同制作や外部資金の調達をめざすドラマ企画を後押しするのが目的だ。

日本のテレビドラマは、国内の放送広告収入に頼る制作モデルから抜け出せるのか。ソウルの会場で、ピッチの様子と参加したプロデューサーたちの声を取材した。

「BCWW」&「Japan Drama First Look: Co-Pro Pitch」とは

BCWWは、韓国文化体育観光部と韓国コンテンツ振興院(KOCCA)が主催する国際放送映像マーケットだ。2001年に始まり、今年で26回目となる。地上波放送局やケーブル局、OTTプラットフォーム、制作会社、配給会社などが集まり、番組の売買やフォーマット取引、共同制作の商談が行われる。フランスのMIPCOMのようなマーケットに近く、放送・配信コンテンツに特化している点に特徴がある。

日本貿易振興機構(JETRO)によれば、今年は韓国、日本、中国、米国など18カ国から417社が参加し、来場者は1万2,484人に上った。ブース出展、カンファレンス、ワークショップ、ショーケースなどが行われ、会期中のコンテンツ流通、共同制作、IPビジネスなどの商談は合計2,540件に達したという。日本からはNHKエンタープライズやフジテレビなど20社・団体がジャパンパビリオンを構えていた。

なぜ、このマーケットに日本ドラマのピッチプログラムが生まれたのか。

総務省は近年、ドラマやバラエティ番組など実写コンテンツの海外展開に力を入れている。その一環として「Japan Drama First Look: Co-Pro Pitch」が始動。アジアとヨーロッパを代表する3つの国際コンテンツマーケット、韓国のBCWW、台湾のTCCF(Taiwan Creative Content Fest)、フランスのシリーズマニアで、日本のシリーズドラマ企画をピッチする機会を提供するというプログラムで、BCWWはその第1弾にあたる。

BCWWのピッチプログラムには、国内の番組制作会社や放送局などに勤め、日韓共同制作をめざす開発中のシリーズドラマ企画を持つプロデューサーやディレクターらが参加した。

集められた企画はどれも、国内放送向けに作ってから海外に売るというタイプではなく、企画段階から海外展開を見据え、韓国との共同制作を前提に組み立てられていた。

当日は日本から10組、韓国から5組がドラマ企画をピッチした。日本の企画はどれも、国内のテレビドラマでは見かけないタイプの作品が多く、一話1億円超えでの制作を目指すスケールの大きい意欲的な企画や、すでに海外プロダクションとデベロップメントを始めている国際的な企画、コミックやアニメ、ゲームなどにも展開する構想を持ったIP企画なども含まれていた。

韓国側から登壇5社には、世界的ヒット作を手掛けた会社も参加した。『ムービング』『照明店の客人たち』を手がけたミスターロマンスや、Netflixの『キングダム』や『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で知られるASTORY、『愛の不時着』などを手がけたチェ・ジニ代表が率いるイマジナスなどだ。いずれもグローバル配信でヒット作を出してきた有力スタジオで、日本人キャラクターや日本を舞台に組み込んだ企画を持ち込んでいた。

採択された日本のチームは本番前に、ピッチの手法を学び、デック(企画書)をグローバル基準に磨き上げるための、全4回のトレーニングを受けたという。本番は日韓同時通訳付きで、日本語でピッチを実施。企画の魅力とビジネス展開の構想、韓国との協業に対する意欲をアピールした。

さらに、会期中はネットワーキングイベントや個別商談のセッティングといった現地でのマッチング支援もあり、一回きりのピッチで終わらせず、具体的なビジネスにつなげる仕組みを設計していた。期間中に設けられた商談ブースでは、どのチームもほぼ予定が埋まる盛況ぶりだったという。

総務省の狙い「海外番販は事後作業」からの転換

総務省はなぜ、このプログラムを立ち上げたのか。同省の岡亮宏氏(情報流通行政局 情報通信作品振興課 放送コンテンツ海外流通推進室 室長)は、取材にこう答えた。

総務省 放送コンテンツ海外流通推進室 室長 岡亮宏氏

「今や、コンテンツ産業は基幹産業であり、日本成長戦略における17の戦略分野の一つとして、日本発コンテンツの海外市場規模を2033年に20兆円に拡大する政府目標に向け、政府を挙げて取り組んでいます」

実写コンテンツには大きな伸びしろがあると見ている。日本のドラマの海外輸出額は2023年度から2024年度にかけて約2.5倍に拡大。配信プラットフォームでもアジアの実写コンテンツの人気が高まっており、総務省は「将来的な成長の余地が大きい」と考えている。

総務省は、コンテンツ製作を「企画・開発」「製作」「権利処理」「流通」の4分野に分け、それぞれの課題に取り組むことで、企画開発から流通までの好循環をつくろうとしている。今回の「実写コンテンツの資金調達多様化に関する調査」は、このうち「企画・開発」を担う施策だ。

一方で、構造的な課題も挙げる。岡氏は、実写コンテンツの収益構造が「依然として国内放送市場への依存度が高く、海外番販は事後作業となる傾向が強い」と語る。海外を主な収益源とするモデルへの転換が、十分に進んでいないという認識だ。

資金面の課題も大きい。放送事業者の制作費の大半は放送広告収入に頼っており、世界に通用する作品づくりに必要な配信事業者からの収入や外部資金の調達環境は、諸外国と比べてまだ不十分だ。

岡氏はそのうえで、海外の放送・配信事業者との国際共同制作や、金融事業者などからの出資など資金調達を多様化する必要があると語る。このプログラムを通じて、海外展開や配信を最初からめざすドラマ制作が広がることを期待しているという。

事業の成果は、ピッチ参加者やセミナー聴講者へのヒアリングなどをもとに、制作費の海外資金調達をめぐる課題と改善策という観点で検証する予定だ。

国内ドラマプロデューサーたちの危機意識

現場のプロデューサーたちはどんな思いでソウルの舞台に立ったのか。

《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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