【イベントレポート】カンヌ「カントリー・オブ・オナー」は日本映画をどう変えるのか?

今年のカンヌ国際映画祭の併設マーケットで、日本が名誉国「カントリー・オブ・オナー」に選ばれた。映画会社のトップからプロデューサー、スタジオ、行政までが一体となって乗り込んだ今回のカンヌは、日本映画界にとってどんな意味を持ったのか。2026年7月15日にTCICで開かれたシンポジウム「Into Global Road from Cannes」で語られた、現地での手応えと課題を追う。

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  • 椎名保氏
  • 左:中澤義晴氏、右:椎名保氏
  • 中澤義晴氏
  • 和田亮一氏
  • 上浦侑奈氏
  • 橋本匠子氏
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今年のカンヌ国際映画祭では、併設マーケット「マルシェ・ドゥ・フィルム」で日本が名誉国「カントリー・オブ・オナー」に選ばれた。映画会社のトップ、プロデューサー、スタジオ、行政機関が一体となって乗り込んだ今回のカンヌは、今後の日本映画界にとってどんな意味があったのだろうか。

それを議論すべく2026年7月15日、東京都のコンテンツ産業海外展開支援プログラム「Into global~東京都コンテンツ産業海外展開課題解決プログラム~」の一環として、「Into Global シンポジウム Road from Cannes」が東京コンテンツインキュベーションセンター(TCIC)で開かれた。

第1部に登壇したのは、ユニジャパン特別顧問でカントリー・オブ・オナー実行委員会副委員長・プロジェクトリーダーを務めた椎名保氏と、日本貿易振興機構(ジェトロ)の中澤義晴氏。第2部には、実際にカンヌマーケットへ足を運んだTOKYO EPICの和田亮一氏、K2 Picturesの上浦侑奈氏、東京テアトルの橋本匠子氏が参加した。モデレーターはエンタメ社会学者の中山淳雄氏が務め、現地でつかんだ手応えと課題が語られた。

日本が「カントリー・オブ・オナー」に選ばれた意味

マルシェ・ドゥ・フィルムは、カンヌ国際映画祭に併設される世界最大級の映画見本市だ。スターが並ぶ華やかな映画祭の「裏面」という側面を持つと言えるが、実際には映画祭の「心臓部」はマーケットの方とも言える。ここには資金調達を求めるプロデューサーや権利を売買した配給・セールス会社、共同製作パートナーを求めるものや投資家などが集まり、実際に映画産業を動かしている。

中澤氏によれば、日本からの参加者数は参加国中5番目で、前年から50%増えた。会場のあちこちに日本を象徴するビジュアルが掲げられ、オープニングナイト、Producers Network、IP関連カンファレンス、ロケ誘致セッション、日仏共同製作プログラム、Goes to Cannes、Screening Day、アニメーションやIP関連施策と、数多くの公式プログラムで日本が取り上げられた。

Producers Networkには日本から10名のプロデューサーが加わり、一人あたり平均30件以上の商談・ネットワーキングをこなしたという。世界的に注目されるアニメーション関連でもアニメ関連会社20社、43名が参加し、商談・ネットワーキングは平均10.25件に達している。日本映画・アニメ・IPへの世界的な関心の高さが、あらためて浮き彫りになった格好だ。

映画会社トップがカンヌに来たことの重み

プロジェクトリーダーを務めた椎名氏がとりわけ強調したのは、「今回はセールス担当者だけが行ったのではない」という点だ。

かつての日本映画は、劇場、ビデオ、テレビという収益構造に支えられていた。映画興行収入は2000億~2500億円規模、ビデオ市場も3500億円規模があり、国内だけで事業が回る時代だった。ところがビデオ市場が縮み収益を支えきれなくなってきた。ここで、映画を起点に商品化やシリーズ化、IP展開へと広げる「横展開」が重視されるようになった。

椎名保氏

市場が変われば、カンヌに集う顔ぶれも変わる。完成作品を売買するセールス担当者だけでなく、プロデューサーや制作側の人材が自ら現地へ出向くようになった。

今回は東宝、東映、松竹、KADOKAWAといった大手映画会社のトップが揃ってカンヌに参加した。椎名氏はこれを「今まで一度もなかったこと」と振り返る。

「日本の映画会社は国内しか見ていなかった。それが全員行った。これはすごく大きなことです」

インディペンデントのプロデューサーやスタジオ関係者も加わった。日本へのロケ誘致を進めるうえでも、制度やフィルムコミッションだけでなく、実際の受け皿となるスタジオが存在感を示した意味は大きい。企業トップ、プロデューサー、セールス、スタジオ、行政が同じ場に集まったこと自体が、今回の最大の成果のひとつだという。

「日本映画の海外セールスを誰が担うのか」という課題

しかし、成果もあれば課題も残る。椎名氏が問題視したのは、カンヌで評価される日本関連作品の海外セールスを、フランス企業が担うケースが多いという現実だ。

《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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