第37回東京国際映画祭の一環として、第14回MPAセミナーが行われた。
MPAセミナーは、モーション・ピクチャー・アソシエーションが東京国際映画祭内で主催している講演会だ。その中の一つとして、ドラマ「TOKYO VICE」プロデューサーのアレックス・ボーデン氏による「TOKYO VICE 日本での撮影:技術的で創造的な問題解決」と題した講演が行われた。
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「TOKYO VICE」での体験談
「TOKYO VICE」は米国のテレビシリーズでは初めて全編オール日本ロケで制作されたドラマ。当初から日本を舞台にしているからには日本で撮影をしようと考えていたが、そもそも日本で撮影した経験がある人が少なく、コストやクルー配置の調整など、難しさは目に見えていたという。さらにはコロナの流行によって制約も多く、主要クルーが日本に入国できないなど予想外のことも続いた。
また、プロダクション間で共有する資料や脚本の翻訳は「毎日発生する出来事」となっていたそうだ。Google翻訳とDeepL翻訳が不可欠であったが、本作は1990年代を舞台にしており、90年代の刑事やヤクザの言い回しなど専門知識や時代考証が必要で、細かいニュアンスの調整を求められる場面が多く、それらの作業も一筋縄ではいかなかったという。
それでも、ハリウッドのテレビシリーズのやり方を早い段階で共有したり、撮影サイクルを日曜から木曜に変更して撮影許可がおりやすいようにしたり、ルールを遵守し、日本のやり方を尊重しながら戦略的に行ったことが成功につながったとボーデン氏は振り返る。
ボーデン氏はアイスランドからインド、韓国まで、世界中で撮影したNetflixのオリジナルシリーズ「センス8」も手掛けた経験がある。しかし、「さまざまな国での撮影経験があっても、日本の制作で扱う問題の多くは非常にユニークです」と、他国と比べてもその撮影ハードルが大きく異なったことを明かした。
そしてシーズン2では、シーズン1の経験を学びに変え、ロケハンを早く開始。ボーデン氏は「これ(ロケハンを早めに取り組むこと)は強くおすすめします」と強調した。東京以外のロケ地も用意し、新しいクレーンやLEDボリュームステージも使用、今まで撮影許可がおりたことがなかった赤坂周辺での許可をもらうこともできた。各所に確実に情報提供をし、「法律を守って、何の罪も犯さないという責任感を示す」ことで信頼感を得られ、よりスムーズで壮大な映像制作につながり、多くの業界団体や政府機関のサポートも得ることができたとのことだ。
日本が海外制作者を誘致することへの課題
ボーデン氏はこれらの経験を踏まえ、将来的に日本で撮影する上での改善点も共有した。
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