【独占インタビュー】グッズショップにコラボカフェから大規模イベントまで。『すずめの戸締まり』『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』中国配給会社のIP活用戦略

2024年もRoad Pictures蔡代表に独占インタビューを実施。昨年は新会社GuGuGuGuの設立の発表があったが、その後1年でどれくらいの変化があったのか。また、「オフライン体験」を重視し、映画配給だけでなく商品化やイベントなど、IPを育てる施策に注力する同社の取り組みやその意図を詳しく聞いた。

グローバル アジア
蔡公明(ツァイ・ゴンミン)氏
編集部撮影 蔡公明(ツァイ・ゴンミン)氏

『すずめの戸締まり』や『THE FIRST SLAM DUNK』など、日本の長編アニメ映画が中国で大ヒットした。それら日本アニメの中国における宣伝配給を手掛けたのが、Road Picturesだ。

同社は昨年、配給業務とは別に二次元作品のIPを運用するための新会社GuGuGuGuを設立。商品化やイベント事業などへと進出することを発表していた。それから1年、同社はGuGu Homeという二次元作品のグッズを扱うショップや、映画館に展開するグッズ売り場GuGu Hotspotを展開、さらにアニメ作品の展示会を企画したり、コラボカフェを出展したりと精力的に事業領域を拡大している。

そんな同社の代表、蔡公明(ツァイ・ゴンミン)氏が映像マーケットTIFFCOMのため、来日。独占インタビューを敢行し、同社の今後の展望、中国市場のこれからについて話を聞いた。

中国の映画館で初めてグッズ売り場を展開

――昨年のTIFFCOMでも取材させていただき、新会社GuGuGuGuの設立についてお聞きしましたが、この1年、新会社の手ごたえはいかがですか。

▼昨年のインタビュー


この1年で様々なことができました。ショッピングモールに6店舗、30の映画館に店舗を構えて、オンラインECサイトでも積極的に展開し、販売チャンネルを大きく展開することができたと思います。商品数も、67のIPで1,600点近くを開発・販売してきました。『劇場版SPY×FAMILY CODE:White』や『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』のプレミアイベントなども盛況で、今まで中国ではなかなかできなかった、イベントと商品販売を連動させていくやり方に手ごたえを感じることができました。弊社の大切な理念は、ファンと一緒に作り上げるというもの。GuGuGuGuの会員は約10万人、コミュニティメンバーは100万人にもなりました。この1年でブランドとしての知名度を獲得できたと思っています。

――1年でそれだけの展開ができるのは、日本の感覚では相当に早いと感じます。いかにして流通網を整備したのですか。

弊社が商業施設側からも歓迎してもらえたのは、商品だけでなくコンテンツとイベントも一緒に持ち込んだからです。『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』では、声優さんたちにポップアップショップのあるモールに来ていただいたり、新海監督も映画上映時や展示会に来ていただいたりなど、そういう結果だと思います。それと店舗のデザインにも力を入れています。「GuGuGuGu」の店舗は日本デザインセンターという、蔦屋書店のデザインなども手掛ける会社にデザインをお願いしました。映画館に展開している店舗については、弊社が元々配給会社として劇場と付き合いがあったことが大きいですね。

――店舗は御社の直営店なのですか。

今の段階では、独立店舗のGuGu Homeも映画館に展開しているGuGu Hotspotも直営店です。今後、数を増やすための加盟店方式も導入しようと考えています。

――中国の映画館には、日本のようなグッズを売るスペースはこれまでなかったわけですよね。それを御社が初めて導入したという認識でよいのでしょうか。

そうですね。映画館にはポップコーンやドリンクを販売する場所はありましたが、グッズは売っていませんでした。映画館でグッズを売るというのは、中国では画期的な試みなんです

――御社の配給作品が上映していない時、この売り場はどうなっているのですか。

GuGu Hotspotは2年の長期契約で常設です。一番力を入れているのは、アニメグッズの販売ですが、自社商品以外にも、弊社が配給していない作品のグッズも販売しています。また、他社のアニメーション作品やハリウッド作品のグッズも売っていますし、実写映画のグッズもあります。アニメのグッズも揃えつつ、映画館を訪れた人が手に取りたくなるものを並べる工夫をしています。

オフライン体験の重要性の高まり

――TIFFCOMのセミナーでは、中国のアニメファンはオフライン体験を重視するようになってきているとお話していました。その体験を御社は広げようと、店舗などを展開しているわけですね。


おっしゃる通りで、映画館はファンにとって体験のための場所になっています。映画を観に行くことで、特典ももらえるし、グッズも買える、ファンが自主的に上映イベントを開くこともあります。

――実際に、どんなグッズが売れていますか。


《杉本穂高》

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杉本穂高

映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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