東宝・東映・松竹の2024年度第1四半期決算読み比べ、コナン大ヒットで東宝の強さ際立つ【決算から映像業界を読み解く】#63

東宝、東映、松竹3社の2024年度第1四半期の決算が出そろった。

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【決算から映像業界を読み解く】#63
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東宝、東映、松竹3社の2024年度第1四半期の決算が出そろった。

好調ぶりが際立つのが東宝だ。『名探偵コナン 100万ドルの 五稜星(みちしるべ)』は興行収入151.9億円の大ヒットを記録した。ホラー映画として異例の人気を集めている『変な家』も大健闘。興行収入は50億円を突破している。

東映はわずかな減収となったものの、『THE FIRST SLAM DUNK』の配信権販売が好調で大幅な営業増益となっている。松竹は『恋わずらいのエリー』が大苦戦。減収営業減益で冴えないスタートとなった。

松竹は通期業績予想への進捗率が25%に届かず

東宝と松竹は2月決算、東映は3月決算だ。従って、第1四半期は東宝と松竹が2024年3月1日から5月31日まで。東映が2024年4月1日から6月30日までとなる。

東宝の第1四半期の売上高に当たる営業収益は、前年同期間比15.9%増の859億円、営業利益は同34.1%増の245億円。東映の売上高が同1.6%減の423億円、営業利益が同43.4%増の80億円。松竹の売上高が同16.0%減の194億円、営業利益が同85.6%減の3億円だった。

通期業績予想への第1四半期の売上高の進捗率は東宝が30.7%、東映が27.1%、松竹が21.2%。営業利益は東宝が44.5%、東映が32.8%、松竹が23.1%。東宝の強さが際立つ。

※決算短信より筆者作成

東宝は前期(2024年2月期第1四半期)の通期業績予想への進捗率は、売上高が28.5%、営業利益率は40.7%だった。今期は前期よりも早いペースで進捗している。なお、東宝は2024年2月期通期の売上高が2,833億円で期首予想比9.0%、営業利益が592億円で同31.6%の増加だった。今期も期首予想を上振れて着地する可能性は多いにある。

東映の通期業績予想への進捗率はまずまずといったところだ。前期(2024年3月期第1四半期)は売上高への進捗率が29.6%、営業利益が25.7%だった。今期は通期売上予想を前期よりも9.0%低く見積もっている。2期連続の減収となる見込みだ。『ONE PIECE FILM RED』と『THE FIRST SLAM DUNK』の反動が大きい。その一方、今期は『THE FIRST SLAM DUNK』『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』等の配信権販売による利益貢献が大きく、営業利益の進捗率は30%を超えている。

力ないのが松竹だ。売上、営業利益ともに進捗率は25%を下回った。松竹は2023年3月に公開した『なのに、千輝くんが甘すぎる。』が興行収入10億円を超えるヒット作となった。2024年3月公開の『恋わずらいのエリー』にも期待が集まったが、公開3日間で興行収入は1.2億円ほど。人気少女マンガ原作の実写化で、フレッシュな若手俳優を起用するという定番映画に影を落とした。

『劇場版「鬼平犯科帳 血闘」』も興行収入は今一つ

各社の明暗は第1四半期の推移を見ると鮮明だ。

東宝は第1四半期において、3期連続で増収営業増益を達成した。営業利益率は23.3%、25.7%、33.3%と高まっている。松竹は前期(2024年2月期第1四半期)の営業利益が24億円となり、営業利益率が10.4%となった。赤字からの大幅な黒字転換を果たしたが、今期の営業利益率は1.5%まで低下している。赤字ギリギリの水準だ。

※各社決算短信より筆者作成

松竹は2024年5月に松本幸四郎と市川染五郎の親子共演による『劇場版「鬼平犯科帳 血闘」』を公開した。映画『鬼平犯科帳』から29年を経て大物歌舞伎俳優を起用した作品だったが、興行収入は振るわなかった。6月公開の人気エッセイの映画化『九十歳。何がめでたい』は10億円を突破して健闘中。今期はそれ以外に『映画「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章」』、『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第一章 黒の侵略』などの公開を控えている。

「ラブライブ!」シリーズは1作目の『ラブライブ!The School Idol Movie』が興行収入28億円を超える大ヒットとなったが、2作目の『ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow』は13億円だった。人気には陰りも見える。

松竹は2025年2月期の売上高を前期比7.3%増の917億円、営業利益を同63.7%減の13億円と予想している。営業利益率は4.1%から1.4%まで下がる見込みだ。松竹の決算のポイントは、売上高が予想に到達するかどうかだ。今期は公開した映画の興行収入を見ても、やや苦戦する未来が見える。

決算短信より筆者作成

実写版の『【推しの子】』は期待値を上回ることができるか


《不破聡》

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