【Next-Gen】若手業界人とおはなし#3:早稲田大学映画研究会 渡邉花奈さん

🗣️Branc編集長のmarindaが、早稲田大学映画研究会で幹事長を務め、韓国仁荷(インハ)大学の映画サークルとともに初の日韓共同制作を実現した渡邉花奈さんとおはなし。

映像コンテンツ 制作
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夢に描いた“東京”を豪華なロケ地で表現『YOU ARE MY DREAM』

『YOU ARE MY DREAM』予告編|日韓合同映像制作プロジェクト

――2作品目の『YOU ARE MY DREAM』はどんな作品でしょうか。

『YOU ARE MY DREAM』は、(Lighthouseのリーダーで)監督を務めたユビンがこのプロジェクトを立ち上げる時にやりたかった企画だったようです。だからユビンが企画を提案した意図が十分ストーリーに組み込まれているなと思いました。彼は高校の時から「日本で映画を撮りたい」と思っていて、受験戦争を乗り越えて大学に入学したけれど、コロナ禍で渡航制限がかかってしまって……。その日本に対する憧憬の念がストーリーラインにすごく組み込まれていたので「このプロジェクトの軸だな」と最初に話を聞いた時に思って、そこから展開させていこうと考えていました。

――『YOU ARE MY DREAM』では新宿中央公園での夜のシーンや東京スカイツリーでのシーンが本当に綺麗だと思いました。ロケーションについて、業界人の方からは「東京ではロケを中々許してもらえない」というお話を聞いていたので大変だったんじゃないかなと思いました。

交渉自体は全然大変じゃなかったんです。東京スカイツリーは、もともと撮影用に貸し出しをしていますし、申請も快諾をしてくれたのでスムーズでした。新宿中央公園に関しては、管轄は新宿区みどり公園課というところなのですが、その前にフィルムコミッションのような新宿観光振興協会という組織に連絡してみたら、新宿区の担当の方と取り持ってくれました。

――結構お金もかかるんじゃないですか?!

びっくりするくらいかかりますね(笑)クラウドファンディングも「100万やらないと無理だな」と思って始めました。『YOU ARE MY DREAM』については公園がメインになるお話だったので、そこを突破しないとどうにもならなかったんですが、各所金額面で調整してくださいました。東京スカイツリーさんも学生にすごく親切にしてくださって、それで実現したのがこの企画ですね。

――交渉力がないとできないことだと思うので、それだけ熱意が伝わったんだと思います。実際に制作してみて、一番驚きがあったのはそのような金額面でしょうか?

そうですね。一番高くつくのがロケ費用でした。学生映画ということもあって費用を抑えようと思えば抑えられるんですよね。でも、東京を象徴する場所で撮影することは私のこだわりでもあるし、このプロジェクトだったら何でもできるんじゃないかっていう根拠のない自信というか、思い込みもありました。とりあえず使わせてもらえる前提で動いてみたら、助けてくれる人が沢山いました。

――ロケ地にこだわった理由って、やっぱりユビンさんの夢を叶えてあげたいというところがあったんでしょうか?

ロケ地の選定は完全に日本側の裁量だったんですよね。ユビンが撮影日にしか日本に来られなかったし、全然お金をかけないっていうのが最初提案された計画だったんですけど、今回取り扱っているテーマが夢の中の話だし、概念としての“東京”っていうのが大きいのでこだわりました。私は栃木出身なのですが、「東京ってこういう街だな」っていう “東京像”があったので、それを映像にしたいなと思いました。とにかく夜景が綺麗で、キラキラしていて、トレンディードラマみたいな雰囲気をこのプロジェクトを通してやりたいなと思ったんです。演出側の視点でも「東京と言えば夜景」という形で選びましたね。

――ロケ地は他候補もあったんですか?

全て本命ですね。新宿中央公園に関しては、色々ロケハンした中の1つだったんですけど、今ポスターになっている画角を最初にロケハンで発見したときに感動したんです。「ここで絶対撮りたい!」と思って連絡しました。一目惚れですね。東京スカイツリーに関しては、「東京といえばスカイツリーでしょう」という感覚でした。

新宿中央公園で撮影された『YOU ARE MY DREAM』のポスター。

――なるほど!渡邉さんがプロデューサーを務めるのは今回の2作品が初めてですか?

プロデューサーに就いたことはあったんですけど、自分がやりたいものを打ち出しつつ、それが確実に進行できるように調整したり、全体のビジョンを打ち立ててやっていったりしたのはこれが初めてですね。

――実際にやってみて向いているなと感じましたか?

『YOU ARE MY DREAM』は監督が韓国人だったこともあって、演出の裁量が自分にもあったので、プロジェクト全体に関われたのがすごく楽しかったポイントでした。すごく贅沢なロケ地を使わせてもらっただけじゃなく、2作品は池袋HUMAXシネマズで試写上映できたんです。プロジェクト自体が力を持つようになっていって、スタッフもすごく楽しんでくれたし、いい作品ができたと感じているので、職務を全うできたんじゃないかなって思いますね。

――池袋HUMAXシネマズの試写会はどういう経緯でできるようになったんですか?

今回、制作の資金調達のためにMOTION GALLERYでクラウドファンディングを行ったんですが、試写会をやりたいと色々調べていた時に、MOTION GALLERYで掲載したプロジェクトをHUMAX CINEMAで上映できる「MOTION GALLERY」連携プラン というものを見つけて、劇場に連絡したんです。そうしたら「もう終了してしまったプランだけどいいですよ」と承諾いただきました。また、上映会をやる時に駐日韓国大使館の広報の方なども協力してくれてびっくりしました。

――上映に向けて多方面から応援してもらえたんですね。

そこからとんとん拍子で話が進んでいきました。

日韓どちらのサークルにとっても新たな兆しに

――早稲田の映画研究会自体に長い歴史があると思うのですが、このプロジェクトが新たに始まって、これまでやってきたことが活かされたと感じた部分があれば教えてください。

先輩の代でクラウドファンディングを利用したり、芸能活動をされているプロの女優さんを起用したり、自治体とコラボレーションして大きいスケールで撮るような企画があったりしたんです。私も1年生の時に参加させてもらって、そこで得た知見は活きていると感じます。

――新しいチャレンジをしてみて、知見が広がったことはありましたか?

国際制作ということが映画研究会としても初ですし、学生映画で前例があるというのも聞いたことがないので、本当に新しい試みだったと思います。もっと言うと、研究会の規模が急拡大したあとに、映画研究会全体として取り組んだ特殊な作り方だったので、そこで得た学びは沢山ありました。

――ちなみに、Lighthouseの皆さんは完成した作品を見て、どういう反応でしたか?

韓国で6月に試写会をしたのですが、「評判が良かった」と言っていました。ユビンもLighthouseの組織改革に尽力した人で、先輩から煙たがられるようなこともあったようですが、その先輩さえも「お前、すごいの作ったな」って褒めてくれたそうです。『YOU ARE MY DREAM』は日本のすごいいいロケーションを使っていたから、「こんなに綺麗な場所があるなら、日本行くわ」と友達が言っていたと聞きました。日本側でも作品を観た人に規模感としても話としても面白いって言ってもらえましたね。『それでも』は邦画的な作りをしていたので、韓国側から観ても刺さった部分があったみたいです。

――これから2作品はどういう展開をしていく予定ですか?

映画祭に出品をして、もっと上映の機会をつくれたらと思いますし、プロジェクトの第2回も決まっているので今後の繋がりも意識しつつ、展開していきたいですね。

映画サークルでのハラスメントも根絶したい

――今後、渡邉さん自身がチャレンジしたいことはありますか?

私の中で3つトピックがあります。まずはテクノロジーに興味があるので、CGもですが、インタラクティブな映像作品や、生成AIを使った映画制作などにも取り組んでみたいです。もう1つが、この日韓企画の第2弾です。第2回は長編で日本と韓国両方をメインロケ地にする計画なので、プロジェクトとしても規模を大きくしていきたいなと。最後は、映画サークルにおけるハラスメントなどの問題の対策を強化していきたいです。映画研究会の組織改革を進めて、新たな領域を開拓していけたらいいなと思っています。

――ハラスメントは“映画業界と言えば”というトピックになってしまっていますが、学生でもあることに驚きました。

ありますね。映画研究会は、会としてプロジェクトをやってないので作品づくりに会費を割きません。ほとんどの企画は、監督をやる人が制作費も全部自腹でやるというのが主流です。学生映画ってお金にならないので……。学生映画はお金(対価)が発生しない上に、出資している監督が現場での権力が強いので、キャストやクルーに対するパワハラ・セクハラみたいなことが横行していることもあります。こうした問題には本当にアプローチしていかないといけないですね。

――そこは学生・社会人に関わらず地続きである問題なんですね。

そうですね。あと5年もしたら大学側からの取り締まりがもっと厳しくなるなって思っているんですが、映画を作るという性質上、急には変われないと思っているので、今の段階でこの取り組みを始めようと思っています。早稲田では、兼サー(サークルを兼任)している部員もすごく多いので、早稲田の映画サークル全体の取り組みとしてハラスメントは一切許さないという姿勢を貫いていきたいです

――日韓のプロジェクトもこれからもっと大きなものになっていくといいですね。

そうですね。日韓の企画第2弾については、第1回の企画の時に助監督をやっていた今の2年生の子に日本側の総括プロデューサーをお願いして、私もプロデューサーではあるんですがサポート側に回って引き継ぎながらやっています。代々続く企画になれば嬉しいですね。

――将来は映像業界で働きたいですか?

映画かテレビか、映像メディアの業界には身を置きたいですね。

――映像業界に対して、学生の視点から言っておきたいことがあれば教えてください……!

周りで映画監督になりたいといった夢を持っている人はいるんですけど、日本の助監督制度が良くないみたいな話はすごく聞くので、そこがネックになっているのかなと思います。そういったところの組織作りができていれば、働きやすさもそうだし、もっと夢を持ちながら業界に飛び込んでいける環境になるのかなと思いますね。現場にお金が回ってないっていうのも大学での授業や映画制作の現場でよく聞くので、是枝裕和監督がやっている日本版CNC設立を求める会のような取り組みも強まって欲しいです。ハラスメントの話でも、映適(日本映画制作適正化機構)のガイドラインがあるし、すごく勉強になります。業界全体としてお金の回り方や現場の労働環境、そこにいる人たちに目を向けているということが学生にも伝わるといいなと思いますし、私のように学生でそういった業界の動きを見ている人も多くいると思います。

📨渡邉さんより

📢第二回「日韓合同映像制作プロジェクト」が開催決定!

早稲田大学映画研究会×仁荷大学「Lighthouse」の第二回「日韓合同映像制作プロジェクト」の開催が決定しました。2024年2月から日本と韓国両方での撮影を予定しています。今回は、70分程度の長編映画に挑戦し、ミニシアターとの連携にも注力していきます。制作に向けてクラウドファンディングも実施予定なので、続報にご期待いただけると幸いです。

《Branc編集部》

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