「グローバルヒット」を目標にWEBTOONから映像化まで一気通貫。BABEL LABEL×CyberZが切り拓くコンテンツ制作の未来

BABEL LABELの代表取締役・山田久人氏、CyberZ/BABEL LABELビジネスプロデューサーの佐藤菜穂美氏、StudioZOONの村松充裕氏による鼎談を実施。WEBTOONの制作から映像化まで一貫した企画開発を進めているBABEL LABEL×CyberZの取り組みについて詳しく話を訊いた。

映像コンテンツ 制作
「グローバルヒット」を目標にWEBTOONから映像化まで一気通貫。BABEL LABEL×CyberZが切り拓くコンテンツ制作の未来
Photo by:Maho Korogi 「グローバルヒット」を目標にWEBTOONから映像化まで一気通貫。BABEL LABEL×CyberZが切り拓くコンテンツ制作の未来
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写真左から、山田氏・佐藤氏・村松氏。/Photo by:Maho Korogi

『余命10年』の藤井道人監督を中心に、多くのクリエイターが所属する「BABEL LABEL」。

同社は2022年1月にサイバーエージェントグループへの参画を発表し、2023年1月にNetflixと戦略的パートナーシップを締結。プロデューサーや脚本家を拡充し、日本を代表するコンテンツスタジオへと歩みを進めている。

その新たな試みが、WEBTOON(韓国で盛んなWEBマンガ。縦読み・オールカラーが特徴)の開発。広告代理店事業、eスポーツ事業、ライブ配信メディア事業、グッズ販売事業などIPを扱ったエンターテインメント領域において事業展開をおこなってきたサイバーエージェント子会社、CyberZ が設立したコンテンツ制作スタジオ「StudioZOON」と組み、縦スクロールマンガ=WEBTOONから映像化がシームレスに連結した企画開発を行っている

Brancでは、BABEL LABELの代表取締役・山田久人氏、CyberZ/BABEL LABELビジネスプロデューサーの佐藤菜穂美氏、StudioZOONの村松充裕氏による鼎談を実施。三者の連携や、「グローバルヒット」の方法論について、現在地を語っていただいた。

「すでに動き出している」StudioZOON×BABEL LABELのプロジェクト

――まずは簡単に自己紹介をお願いします。

山田BABEL LABEL代表の山田です。映画やドラマを中心に、自社でオリジナルのコンテンツを作っていくことに集中して活動しています。

佐藤CyberZの佐藤です。1月末までNetflixに5年間勤めていて、3月からCyberZに参加しています。Netflix時代から行っていたBABEL LABELとの連携をビジネス面でもサポートしたいと思ってCyberZに参加しました。

村松CyberZの村松です。講談社で少年誌や青年誌の編集者を行っていましたが、今年からWEBTOON事業を行うため、StudioZOONに参加しました。CyberZは基本的に他社のIPコンテンツを扱った事業展開を行うことが多く、その基となる原作づくりから始めよう、と生まれたのがStudioZOONです。WEBTOON市場が伸びているなか、自社でWEBTOONを制作し、アニメ化・実写化・商品化を狙うというのが初期のコンセプトと伺っています。

山田BABEL LABELがサイバーエージェントグループに参画したタイミングでは、StudioZOONと連携する、というのは特に決まってはいませんでした。どちらかというと僕らの方からグイグイ乗っかっていきました。これからのドラマ制作は脚本だけで進めていくわけじゃなく、海外を見習ってマンガにしたり試行錯誤して、みんながわかりやすいように進めていく必要があると思っていたので、WEBTOONの開発はBABEL LABELともきっと相性がいいはず。そこで「ぜひ一緒にやっていきたい」と話させていただきました。

――そうしたStudioZOON×BABEL LABELのプロジェクトは、もう実際に動いているのでしょうか。

山田はい。佐藤さんもプロデューサーとして入ってもらい、進めています。僕は、映像制作の予算は作品ごとに違うべきだと思っています。予算組みを行ううえで、様々なメンバーと共有する材料が脚本という文字だけじゃなくてWEBTOONという画になっていると、ビジョンを統一しやすいしクオリティも上げやすい。お金を出してくれる人たちの共感も得やすいんですよね。韓国ではもうWEBTOON市場がありますから、どれくらいファンがつくかのモデルロールもありますし。様々な意味で効率的だと感じています。

――村松さんが講談社からCyberZ/StudioZOONに移られた決め手はどのようなものでしたか?

村松 僕はWEBTOONをやりたかったんです。出版社でマンガの仕事をやっていると当然、マンガの仕事を突き詰めるため、職人化していきます。ただ自分としてはもう少し色々な分野に目を向けて活動していきたいと思っていました。

そんななか、サイバーエージェントはこれまでに行ってきた事業も多岐に渡りますし、何よりコンテンツを“やり切る覚悟”を感じました。短い期間で儲けられるものだけをやるのではなく、覚悟を持って様々なチャレンジを実現している。僕自身、傍から見ていて信頼感を持っていましたし、いざCyberZ/StudioZOONに飛び込んでみたら「Netflixのドラマを一緒に企画しましょう」みたいにいきなり映像に関わることもできて「めっちゃ面白いじゃん!」と感じました。

――20年勤められた講談社を離れる決断には、相当の覚悟が必要だったのではないでしょうか。

村松「辞める」と決めた後1週間ぐらい、朝起きると手足が冷たかったですね(笑)。「自分があのまま講談社にいたらどうなっていただろう」と想像すると、ひとつは編集長という道があったかと思います。ただ、雑誌の編集長の道に進むと「部数を守る番人」としての役割を背負うことになり、きっと今より僕個人のフットワークは重くなっていく。

今現在、マンガも含めたコンテンツやAIなどテクノロジーの動きは流動的で日々加速化しています。そんななかで、自分はその最先端をずっと捕まえていたい。となると僕自身が自由に動けないといけない。そう考えたとき、自分の決断は間違っていなかったと思います。

映像化にも繋がる“WEBTOON”の魅力

――その“最先端”がWEBTOONだったわけですね。先ほどの山田さんのお話にも通じますが、業界でのWEBTOONの注目度は、今現在どのくらい高まっているのでしょう?

佐藤自分がCyberZに参加させていただくことになり、最初はBABEL LABELの話だけでしたが「実はWEBTOONもやっていて」とお聞きして「めちゃくちゃ興味あります」とお伝えしました。というのも、日本でヒットしている韓国のドラマはWEBTOON原作で話が面白いものが多いです。同じように感じている業界の人間は多いのではないかと思います。実際、自分がNetflixや外部のプロデューサーと連携してWEBTOONの作品を作るという話をしたら、ポジティブな反応がたくさんありましたから。先ほど山田さんが話されていたように、韓国で既に成功例があることも大きいかとは思います。

村松僕は当初、日本でWEBTOONを活性化させるためにはクリエイター獲得が一番難しいと思っていたんです。ですが蓋を開けてみたら「チャレンジしたい」と言ってくださる作家さんがとても多く、逆に編集者が足りていない状況になっています(笑)。興味がある方は、ぜひ手を挙げてほしいですね。日本のマンガは視線誘導が逆Z型といいますか、特殊な構造なので相当高度な技術が必要です。作家さんも編集者も会得までにかなり時間がかかるのに対して、縦型のWEBTOONは視線誘導は1本線のため、作家も編集者もチャレンジしやすいし読者も読みやすいかと思います。

山田実際に取り組み始めて、ポジティブな要素がたくさん出てきたのは嬉しいですよね。BABEL LABELがサイバーエージェントグループに入るときに、ひとつのベンチマークにしていたのが韓国のスタジオドラゴンでした。『愛の不時着』や『二十五、二十一』など、日本で評価されている韓国ドラマはほとんどスタジオドラゴンの作品といっても過言ではないくらいで、どういったスキームで作品作りをしているのかずっと気になっていたんです。

そうしたら、基本的にWEBTOONを作って、それをドラマでどれくらい面白くできるかを継続的に取り組んでいることが分かった。つい先日韓国に行き、現地のプロデューサーと打ち合わせたのですが「日本も早くWEBTOONを取り入れたほうがいい。やらない理由がむしろわからない」と言われました。いま僕たちは韓国との合作も進めていますが、そうした他国との作品作りにおいてもWEBTOONは言葉の壁を越えて共通言語になるコンテンツだと思っています。

佐藤そのなかで、私はCyberZではビジネスプロデューサー、BABEL LABELではプロデューサーという立場で関わっています。BABEL LABELには作品を作ることに集中してもらい、彼らが作った作品の露出を増やしていく役割を担っています。たとえばNetflixもそうですし、テレビ局も含めたプラットフォームを拡大していく業務ですね。今はとにかくBABEL LABELでグローバルヒットを出すことが第一目標です。

山田佐藤さんが露出を拡大してくれても、クリエイティブが世界レベルに追い付いていないと意味がないので、僕たちは「これなら世界で戦える」という作品作りにまずは集中したいと思っています。スタジオドラゴンやA24(アメリカの映画会社。『ムーンライト』『ミッドサマー』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』等で知られる)といった成功例を参考にさせて頂き、BABEL LABELなら何ができるだろう?を現在進行形で模索しています。

目指すのは「グローバルヒット」

――StudioZOONとBABEL LABELは普段、どのように連携を取られているのでしょう。

山田日々、情報共有や意見交換は行いつつ、大体週1ペースで打ち合わせを行っているのですが、目標値が同じなので非常にスムーズな印象です。BABEL LABELがStudioZOONに求められているのはグローバルヒットの可能性がある映像コンテンツを作ること。逆に僕たちもStudioZOONにグローバルヒットを見込めるWEBTOONづくりを求めているので、みんなで一緒に「グローバルヒット」という目標に向かって動いている以上、同じ意識を共有できています

WEBTOON→実写化という一辺倒な流れじゃなくて、僕たちは実写化したら面白くなるような企画を考えますし、WEBTOONにする際に難しいことがあればそれも伺っています。

――グローバルヒットを目指した企画開発は、ジャッジも厳しそうですね。

山田そうですね。相当厳選して、自信がなかったら出さないと決めていますが、一番いいのは「ハイレベルなものを量産すること」だと思うので、その意識ではいます。

―― BABEL LABELのブランドイメージについてはどう考えていますか?今後、WEBTOONとの掛け合わせによってどのように変化させていくのか。

佐藤私の考えとしては「クリエイティブなことだけを考えている。その結果出てきたアウトプットがBABEL LABELになる」かと思っています。いまはハードな作品の印象があるかもしれませんが、可愛い恋愛ものをやっても全然問題ないし、「これもBABEL LABELなんだね。でもBABEL LABELらしいね」となるのが理想です。

山田BABEL LABELという名前の元々の由来は、「言語」を意識しています(※旧約聖書において、天にも届く巨大な塔を建造した人々が神の怒りを買った結果塔が壊され、さらに単一言語ではなくなったという故事。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の映画『バベル』はこの物語が元となっている)。

いまの時代に、観てもらった人の心の響くシナリオ作りを大事にしようという志を掲げてこの名前を冠しました。そういった意味では、僕たちが重視するのはシナリオ。『ヤクザと家族 The Family』といったような作品からすごくキュートなものまで作ってもいいと思っているので、期待していてください。それこそ、こうやって村松さんたちと組むことでまた新しいジャンルに挑戦できると思っています。村松さんが手掛けた『1日外出録ハンチョウ』も『食糧人類』も目が離せないマンガでしたし、WEBTOONに挑戦することでこれまでにない作品が生まれてくるワクワク感があります

――WEBTOON開発とコンテンツ制作について、今後の意気込みを教えてください。

村松マンガって、ものすごい天才たちが集まってオリジナリティを競い合う場であると同時に、ハイレベルな勝負になりすぎているように感じていて。実際、作家さんから面白い提案を受けてもマンガだと「これ売れないな」とか「オリジナリティが足りないな」と思って先に進めないこともあるんです。マンガという異能勝負の競争では勝てないから。でもWEBTOONだと、単純に面白いことに挑戦しやすいと感じていて、それはすごく楽しいです。これからどんどん、このチームで新たなチャレンジを行っていきたいと思います。

山田WEBTOONの制作スタジオと映像のコンテンツスタジオで、ここまで具体的な作品作りに進んでいるのは、そう多くないのかなと思います。グループ社内で連携出来るという、利点が効いていますね。Netflixとも実写化を見越したWEBTOON制作を前向きに進めていて、年間10本ほどをターゲットに創っていきたいです。

《取材:森元行、文:SYO》

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1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、小説・漫画・音楽・ゲームなどエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。並行して個人の創作活動も行う。

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