日本初のタクシー映画祭「TAXIATER」始動。ENGINEと花王が挑む、移動空間を活用した新たな映画体験

日本初のタクシー映画祭TAXIATERの公開記念イベントが開催。東京23区100台のタクシーで短編3作を上映、都内の劇場3館でも展開される。花王3ブランドがブランドプレイスメントで協働。

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日本初のタクシー映画祭「TAXIATER」始動。ENGINEと花王が挑む、移動空間を活用した新たな映画体験
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日本初のタクシー映画祭「TAXIATER(タクシアター)」の公開記念イベントが開催された。映画館でも配信プラットフォームでもない、タクシー車内を上映空間とする本企画では、東京23区内を走行する100台のタクシーを「走る映画館」として活用。8月5日の「タクシーの日」を記念し、2026年8月3日(月)から1週間、後部座席のサイネージで撮り下ろし短編映画3作品を上映する。

TAXIATERは、「Life is a movement. 人生は移動の連続である」をコンセプトに掲げるプロジェクトだ。対象車両はタクシーアプリ「S.RIDE」で指定配車が可能で、車内ではニューステクノロジーが展開するタクシーサイネージメディア「GROWTH」を通じて作品を上映する。乗客には、降車後も作品を視聴できるQRコード付きの乗車証明書も配布される。さらに8月15日(土)から29日(土)までは、池袋、渋谷、下北沢の都内3館で劇場上映も予定されている。

タクシーを「新たな映画接点」に

企画・プロデュースを手がけた株式会社ENGINE代表取締役の久保田徹朗氏は、今回の特徴として「劇場上映に先駆けたタクシー上映」と「企業タイアップの新たな形」の2点を挙げた。

久保田氏は、映像配信プラットフォームの多様化や視聴体験の細分化により、映像作品を生活者に届けることが難しくなっていると指摘。そのうえで、タクシーメディアについて「年齢・性別・趣味嗜好を問わず、同一のコンテンツをじっくり見てもらえる稀有なスクリーン」と位置づけた。移動中の限られた時間を、作品と生活者が出会う新たな接点に変える試みだ。

もう一つの柱が、同映画祭が掲げる「ブランドプレイスメント」である。久保田氏は、従来のプロダクトプレイスメントを、作品の文脈にかかわらず商品を登場させる手法と定義。その一歩先として、映画作品の思想やコンセプトと、企業・製品のブランドパーパスを共存させたうえで、物語の中にブランドを描く手法を「ブランドプレイスメント」と説明した。

花王3ブランドがメインスポンサーに

第1回となるTAXIATERでは、花王株式会社がメインスポンサーとして参加。「アタック」「ハミング」「キュキュット」の3ブランドが、上映3作品とタイアップしている。

花王 作成センター 第1ブランドクリエイティブ部長の簑部敏彦氏は、今回の取り組みについて「ブランドがただ映画に出てくるわけではない」と説明した。制作陣には、各ブランドが大切にしている思いや価値観を事前に共有。そのうえで、ストーリーや登場人物の関係性の中でブランドを描いてもらったという。

簑部氏が語るブランドパーパスとは、単に製品の機能や特徴を示すものではなく、「なぜそのブランドが世の中に存在するのか」「生活者のどのような気持ちや行動を支えたいのか」という、ブランドの根底にある考え方を指す。たとえば「アタック」には、洗濯を通じて、すべての人の明日に向かう一歩を支えたいという思いがある。新しい衣類に袖を通したときに前向きな気持ちになり、また次へ向かう気持ちを後押ししたいというブランドだ。

また「ハミング」については、ブランド名の通り、思わずハミングが出てしまうような、ご機嫌な暮らしを支えたいという願いがあると語った。日々の洗濯や、衣類に包まれる時間の中で、生活者が少しでも心地よさを感じられるようにすることが、ブランドの背景にある考え方だという。

簑部氏は、こうしたブランドパーパスは通常の広告コミュニケーションだけではストレートに伝わりにくいとしたうえで、今回は映画という表現を通じて、ブランドの思いを受け取ってもらうことに期待を示した。製品を物語の中に単に配置するのではなく、制作陣がブランドの考え方を受け止め、それを映画として表現する。花王にとっても、ブランドの思いを物語に乗せて届ける新たなコミュニケーションの試みとなる。

上映作品は、中川龍太郎監督・脚本、久保史緒里主演の『世界は美しいと誰かが言った』、小宮山菜子監督・脚本、大沢一菜主演、照井野々花出演の『まるくてしかく』、長島翔監督、向井康介脚本、林裕太・岸本加世子主演の『Parallel Parking』の3本。簑部氏は、それぞれの映画の中でブランドがどのような姿で描かれているのかにも注目してほしいと述べ、「映画を通してブランドの思いも少しずつ伝わっていけば」と語った。

コンテンツ流通の選択肢が増える一方、生活者との接点設計が課題となるなか、TAXIATERは都市の移動空間を映画体験へと転換する実験的な取り組みとなる。映画プロモーション、モビリティメディア、ブランドコミュニケーションを横断する本企画は、今後の映像ビジネスにおける新たなケーススタディとなりそうだ。

《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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