AIコミュニティ発の研究開発型企業であるAiHUB株式会社は2025年11月21日、独自にフルスクラッチ開発した実写系画像生成AIの事前学習モデル「oboro:base」に関連する日本語および英語での技術報告書を公開した。
本モデルは、経済産業省およびNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が主導する国内生成AI開発力強化プロジェクト「GENIAC」の一環として開発されたもの。著作権に配慮したデータセットを用いた「純国産」モデルであり、人手不足が叫ばれる日本のアニメ産業において、安心して商用利用できる制作支援ツールの基盤となることを目指して公開された。
経産省・NEDO「GENIAC」採択、フルスクラッチによる国産基盤モデル
今回公開された「oboro:base」は、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に採択されたプロジェクト、「日本のアニメ産業活性化の為のアニメ分野特化型基盤モデル開発」の成果物だ。
最大の特徴は、海外製の既存モデルを調整したものではなく、独自改良のアーキテクチャに基づきゼロから設計・開発された「フルスクラッチモデル」である点だ。
日本のアニメ産業は市場拡大を続ける一方で、制作現場におけるクリエイター不足という構造的な課題に直面している。AiHUBはこの課題に対し、「人とAIの協働」による制作環境の構築を掲げ、産業界全体で利用可能な信頼性の高い基盤モデルの整備を急いでいた。
著作権クリアなデータセットと高効率な追加学習
映像制作会社やIPホルダーが生成AIを導入する際、「学習データの権利問題」が障壁となる。「oboro:base」は、学習に著作権に配慮したクリーンなデータを活用しており、権利侵害のリスクを最小限に抑えている。
また、コストパフォーマンスも高いと同社はしている。公開された事前学習モデルをベースに追加学習(ファインチューニング)を行うことで、既存の主要な実用モデルと同等水準の品質を、より低コストで実現できる設計とのこと。
技術報告書の公開とアニメ業界への実装展開
AiHUBは今回、モデルの公開だけでなく、開発における検討内容や設計思想をまとめた技術報告書(日本語版・英語版)を発表した。特に日本語によるゼロからの設計・開発文書の公開は、国内のAI技術力の底上げとエコシステムの活性化に寄与する重要なアクションと言える。
今後の展開として、同社は本モデルをベースに各アニメ事業者と連携し、汎用的なAIではなく、各スタジオの「色」を反映した実践的な専用モデルとなる制作支援ツールの開発・実用化を目指すとしている。
関連リンク・資料
事前学習モデル(Hugging Face): https://huggingface.co/aihub-geniac/oboro
技術報告書(日本語PDF): https://storage.aihub.co.jp/AiHUB_GENIAC_oboro_technical_report_202509.pdf
技術報告書(arXiv版): https://arxiv.org/abs/2511.08168
AiHUB株式会社: https://aihub.co.jp/

