Netflixで、スタジオジブリの名作アニメーション映画『火垂るの墓』を題材にした子ども向けワークショップ「映画をもっと楽しもう!『火垂るの墓』子ども向け感想文ワークショップ」が開催された。
映画を「観て終わり」にするのではなく、感じたこと、考えたこと、疑問に思ったことを、自分の言葉で表現することに子どもたちがチャレンジした。
参加した小学生たちは、映画『火垂るの墓』を鑑賞したあと、マインドマップやグループワークを通して自分の気持ちを整理し、最後には、まだ作品を観ていない友だちに向けて紹介する「レビューカード」を作成した。
『火垂るの墓』を、子どもたちはどう受け止めたのか。
“悲しい映画”の中にある、幸せな瞬間を見つめる
上映前には、新潮社とNetflixの担当者が参加者に向けて挨拶を行った。
『火垂るの墓』は、野坂昭如さんの同名小説を原作に、高畑勲監督が手がけたスタジオジブリ作品。戦時下の日本で、14歳の清太と4歳の節子の兄妹が生きようとする姿を描いた作品として、長く語り継がれてきた。
新潮社の矢代新一郎さんは、上映を前に、子どもたちへこう語りかけた。
「名作と言われていますが、一方で、悲しい、つらいなんて評判もあります。だから見たくないっていう人もいます。でも悲しいところだけじゃなく、楽しいところもあります」

4歳の節子がどこで笑っていたのか。どこで幸せそうな顔をしたのか。何を食べて喜び、どんな時に嬉しそうにしていたのか。そうした場面にも目を向けてほしい、と話す。
Netflixの秋月希保さんは、今回のワークショップについて、作品を観るだけでなく「感じ取って、考えて、それを表現する」一連の流れを体験してほしいと話した。
「一人一人感じ方が違っても全然問題なくて、悲しいだけではなく、楽しめるところもあったりすると思うので、ぜひ皆さんの目線で、どんなふうに感じたかを素直に表現していただければと思います」
心の中に残ったものを、マインドマップで言葉にする
上映後、会場の空気は少し静かだった。子どもたちは、それぞれに映画の余韻を抱えたまま、後半のワークショップへと移った。
ワークショップで行うことは、大きく2つ。ひとつは、自分の気持ちや頭の中と向き合い、言葉にしていく個人作業。もうひとつは、その考えや言葉を周りの人と分かち合うグループワークだ。
最終的なゴールは、映画をまだ観ていない友だちに向けて、『火垂るの墓』を紹介するレビューカードを書くこと。
その準備として、子どもたちの前には「マインドマップ」のシートが配られた。マインドは「心」、マップは「地図」。つまり、自分の心の中にある言葉や考えを、地図のように広げていくためのシートだ。

子どもたちは、それぞれ気になった項目を選び、付箋に思いついた言葉を書いていく。テーブルごとに置かれた付箋やペンを使いながら、子どもたちは少しずつ手を動かしていく。すぐに書き出す子もいれば、しばらく考え込む子もいる。スタッフやチームリーダーは、子どもたちの様子を見ながら、無理に答えを引き出すのではなく、言葉になるのを待つように寄り添っていた。
“正解”ではなく、自分の感じ方を探す時間
『火垂るの墓』は、子どもにとって決して軽い作品ではない。戦争、空襲、飢え、死、家族との別れ。すぐには言葉にならない感情も多い。
それでも、マインドマップを前にすると、子どもたちは少しずつ自分の感じたことを見つけていった。
「なんで清太はああしたのか」「節子がかわいそうだった」「兄妹が一生懸命生きていた」「戦争がこわいと思った」「家族って大事だと思った」などなど。
しかし、誰かに見せる文章にしようとすると、急に難しく感じる子もいる。実際に、ある参加者は「どっかから持ってきたような言葉になっちゃう」と悩んでいた。するとスタッフは、「思ったことをそのまま書けばいい」と声をかけていた。
友だちにすすめるなら、どう伝えるか
最後には、書き上げたレビューカードを発表する時間が設けられた。
ある子は、こう紹介した。
「この作品は、全て込みでいい作品です。悲しいのもあるし、昔の関西の言葉も出てます。友情とか絆がたっぷり堪能できます。おすすめします」
別の子どもは「とても悲しいけれど、人生のどこかで観るべき映画だ」と感じたという。
また、清太と節子の姿に注目した子は、こう発表した。
「『火垂るの墓』は、兄妹が生きるために努力する、辛いだけじゃない映画だと思います。心に残ったところは、兄妹が一生懸命生きたところです。ぜひ清太の努力を見てほしいと思います」

別の子は、戦争を自分ごととして受け止めていた。
「この映画は、14歳の清太と4歳の節子が、突然来る戦争に立ち向かう物語で、昔はこういう戦争が本当にあったんだと知れたり、実際の戦争にあった子どもの気持ちを知れるから、見たほうがいいと思います」
一方で、「血の表現があるので、苦手な人には少し難しいかもしれない」と、自分なりに観る人への注意も添えていた。
さらに、この作品を「死ぬまでに1回は見ておきたい映画」と表現した子もいた。
「戦時中で大変な中で、兄妹二人で生き抜く中の日常の小さな喜びや、寂しく辛い気持ちを描いています。この映画を見ると、戦争の起きない現代の日本にいられる幸せを感じられて、自分も頑張ろうという生きがいをもらえます」
子どもたちの言葉には、悲しさだけでなく、家族、日常、努力、幸せ、平和といった多様な視点が含まれていた。
ワークショップ後のインタビューでは、参加した子どもたちが感想を聞いた。
ある子は、映画を観たあとにみんなで話し合い、自分の意見を出す流れについて、「学校でやっているようなものだから、割とできるなという感じ」と話した。マインドマップで一度考えを整理してから書くことで、感想を書きやすくなったという。
別の子は、もともと『火垂るの墓』を何度か観たことがあったといい、こう振り返った。
「前から大事な映画だと思っていて、自分で言葉にして感想を書けて楽しかったし、ほかのいろんな視点を見つけられたから、それも良かったなと思っています」

若い世代にも『火垂るの墓』を届けたい
ワークショップ後、矢代さんと秋月さんは、今回の取り組みの意図についても語った。
矢代さんは、今回小学校高学年くらいの子どもたちに『火垂るの墓』を観てもらったことで、若い世代に作品を届けることの意義を感じたという。「主人公は4歳と14歳。子どもたちは、自分たちと同世代の人たちに興味を持つ」ことを実感したと述べた。

秋月さんは、映画を観た後に、感じて、考えて、表現するところまでを大切にしたかったと語った。
「見て終わるだけじゃなくて、語り合えるというところにポイントがあると思っています。各々の考え方がこうやって表現できることは、子どもたちの想像力や表現力にもつながると思います」
『火垂るの墓』は、戦争を直接経験していない世代にとって、決して簡単な作品ではない。けれど、子どもたちは清太と節子の姿から、家族の大切さ、日常の幸せ、戦争の怖さ、そして「一生懸命生きること」を受け取っていた。
Netflixの秋月さんは、「今回の皆さんの反響を見ながら、やる意義があれば、ほかの作品でも別の形や作品でも実施できれば」とし、今後も作品をめぐる対話の機会を模索していく考えを示した。







