【カンヌ現地レポート】日本映画のファイナンスはなぜ世界から見えにくいのか。K2 Pictures、MUFG、弁護士が語る「製作委員会」の仕組みと映画ファンドの可能性

カンヌ国際映画祭のマーケット「マルシェ・ドゥ・フィルム」で、日本映画の資金調達をテーマにしたパネル「Film Financing in Japan: Where We Are, and What Comes Next」が開催された。製作委員会方式はなぜ日本で定着したのか。そして、映画ファンドや金融機関の参画は、日本映画の作り方をどう変えうるのか。法律、金融、制作の視点から議論が交わされた。

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【カンヌ現地レポート】日本映画のファイナンスはなぜ世界から見えにくいのか。K2 Pictures、MUFG、弁護士が語る「製作委員会」の仕組みと映画ファンドの可能性
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  • 紀伊宗之氏
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  • Yohann Comte氏
  • 本裕一郎氏
  • 本柳祐介氏
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カンヌ国際映画祭のマーケット「マルシェ・ドゥ・フィルム」で、「Film Financing in Japan: Where We Are, and What Comes Next」と題したパネルが行われた。登壇者はK2 Pictures CEO/プロデューサーの紀伊宗之氏、三菱UFJ銀行 常務執行役員 営業本部長の本裕一郎氏、西村あさひ法律事務所の本柳祐介氏。モデレーターは、パリを拠点とする国際セールス会社Charadesの共同創業者Yohann Comte氏が務めた。

セッションのテーマは、日本映画のファイナンスだ。海外の映画関係者から見ると、日本映画は作品として高く評価されている一方、その資金調達の仕組みがわかりにくい。とりわけ「製作委員会」とは何なのか、なぜファンドや銀行融資が一般的ではないのか、外部投資家はどこに入れるのか。こうした疑問に対し、制作現場、金融機関、法律実務の三者がそれぞれの立場から答える内容となった。


製作委員会は「ファイナンス」ではなく「共同事業」

冒頭、紀伊氏は海外に出るたびに、日本映画のファイナンス構造について質問を受けてきたと語った。海外から見た日本映画の現場には、いわゆる金融投資家がほとんど存在しない。長い間、映画ファンドもなく、金融機関からのデット調達も一般的ではなかった。

では、投資家もファンドもデットもない状況で、日本映画はどう作られてきたのかというと、日本で独自に発展した製作委員会方式だ。

まず、弁護士の本柳氏が、製作委員会方式の基本構造を説明した。

製作委員会は、一般的な意味でのファイナンス・ストラクチャーというより、映画に関係する事業者による共同事業に近い。参加できるのは、制作会社、配給会社、放送局、配信事業者、宣伝会社など、映画に関連する役割を担う会社に限られ、出資だけでなく、何らかの業務を担うことが前提となる。「お金も出すけれど、自分でも働くという仕組み」が基本だと本柳氏は説明する

この仕組みが成立してきた背景には、金融商品取引法上の位置づけもある。製作委員会は一定の要件のもとで金融規制の例外として扱われるが、そのためには参加者が共同事業者として実際に業務を担う必要があるという。

このスキームに特徴的なのが「窓口権」だ。委員会参加社は出資によるリターンだけでなく、自社が担う業務に対する報酬も得る。たとえば制作、配給、宣伝、商品化など、それぞれの役割に応じたフィーが発生する。

本柳祐介氏

本柳氏はこの構造を、純粋な投資とは異なるものだと説明する。

「映画に純投資しているというより、働いた分のフィーも含めて投資しているのが製作委員会の特徴」

このため製作委員会は、外部投資家を入れずにリスクを軽減しながら映画を作る仕組みとして、非常によく機能してきた。

紀伊氏は、「90年代の終わりぐらいから製作委員会がスタンダードになっていった。現状、日本映画の99.9%は製作委員会方式で作られていると思います」と語り、自身がK2 Picturesで進める映画ファンドによる制作を「すごい異端」だと表現した。

外国法人も、映画業界以外の企業も入りにくい

製作委員会方式は、国内の映画業界内でリスクを分散するには合理的だった。しかし、グローバル展開や大規模化を考えたとき、その閉鎖性が課題になる。

本柳氏によれば、製作委員会は法律的には参加事業者による組合であり、みんなで事業を行い、みんなで権利を持つ構造だ。契約で細かく定められる部分はあるものの、契約にない事項が発生すれば、原則として参加者全員で協議して決める必要がある。

この「みんなで決める」構造は、権利処理や意思決定を複雑にする。たとえば20年前の映画が再び注目され、二次利用や海外展開を行おうとした場合、当時の参加社を探し、担当者が変わった中で改めて意思決定を行わなければならない場合がある。

さらに、各社が持つ窓口権や業務報酬も異なるため、構成員の利害は必ずしも一致しない。外部、とりわけ海外から見れば、そのプロジェクトの経済性は非常に見えにくくなる。

CharadesのComte氏も、自身が日本の製作委員会に参加しようとした経験を紹介した。外国企業が製作委員会に入るには日本法人の設立が必要になる可能性があり、税務、会計、契約書、言語の壁がある。契約書類は日本語で、コミュニケーションも基本的に日本語。プロジェクト単位で共同製作をしたい海外企業にとって、日本に継続的な拠点を持つことは簡単ではない。

Yohann Comte氏

本柳氏はその理由を、恒久的施設(Permanent Establishment)の問題から補足した。製作委員会が共同事業である以上、外国法人が参加すると日本に恒久的施設を持つと見なされ、日本で確定申告を行う必要が出る可能性がある。そのため、実務上は日本法人を作って参加することが推奨されるという。


《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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