セッション「Hybrid Futures: Merging Traditional Craft with Artist-Driven, Generative Workflows in Animation」は、2026年5月17日、マルシェ・ドゥ・フィルム内のVillage Innovationで開催された。Google DeepMindとPrimordial Soupによる本セッションでは、短編『Good Night, Lamby』と『Dear Upstairs Neighbors』の制作陣が、生成AIを使ったアーティスト主導の制作について議論を交わした。
登壇したのは、彫刻・絵画・アニメーション・文化施設運営を横断する『Good Night, Lamby』監督のDustin Yellin氏、同作のアニメーションを担当したRicardo Villavicencio氏。そして『Dear Upstairs Neighbors』監督のConnie He氏、同作のリサーチとサウンドデザインを担ったGoogle DeepMindのAndy Coenen氏。モデレーターは、Google DeepMindでメディア&エンタメ領域のクリエイティブプロダクションを率いるMárcia Mayer氏(『Dear Upstairs Neighbors』プロデューサーも兼任)が務めた。

冒頭、両作品のトレーラーが上映された。Yellin氏の彫刻を起点に、コラージュとオブジェクトの質感が濃密に立ち上がる『Good Night, Lamby』。手描き絵画の筆致を3D/2Dアニメーションへ溶かし込んだ『Dear Upstairs Neighbors』。同じく「AIアニメーション」と呼ばれうる作品でありながら、画面から受ける印象はまるで違っていた。
彫刻を「生きた映画」へ——『Good Night, Lamby』の出発点
同作は、Yellin氏の彫刻「The Politics of Eternity」から始まる。彼は自分の彫刻を「frozen cinema(凍った映画)」と呼ぶ。物理的には静止しているのに、頭の中ではずっと動いていたという。
「見るたびに作品は動いている。ただし、それは私の頭の中でだけだった」
彫刻に閉じ込められた世界をアニメーションとして"開く"構想は、以前から温められていた。小さな子どもが作品の中へ入りたがる姿を見たことが、「ポータルを開き、その心を解き放つ」映画を作ろうという強い動機につながった。
参加したVillavicencio氏は、この企画を「彼の世界、彼の宇宙を再設計するようなもの」と振り返る。手仕事を重視するアニメーターである彼にとって、Yellin作品のテクスチャーや物質性は決定的な意味を持っていた。普通はキャラクターに世界を与えていくが、Yellin氏の場合はすでに宇宙のほうが存在している。その中でキャラクターをどう生きさせるか——そこに挑戦があった。
「私たちはプロンプトで絵を作っているのではない」
Villavicencio氏は制作プロセスを、古典的なパペットアニメーションやテリー・ギリアム風のコラージュアニメーションに近いと説明した。現実のアートピースを切り出して動かしていくやり方だ。
肝心なのは、画面内の要素がAIによってゼロから生成されたものではない、ということだ。
Yellin氏の彫刻やコラージュ素材から個々の要素を生成・ロトスコープし、デジタル上で再構成していく。あるシーンでは蛇、機関車、枝などが個別に生成・合成され、主人公だけは伝統的な手法でアニメートされている。「そのシーンは90%がAIだが、デザインは100%全体を支配している」とVillavicencio氏は語った。

ここでのAIの使い方は、「文章を入れれば映像が出てくる」という一般的なイメージとはかけ離れている。手仕事の素材、視覚言語、ストーリーボード、編集、音響設計が先にあり、AIはそれらを動かすレイヤーとして機能する。
「プロンプトでイメージを作っているのではありません。コラージュ、絵画、イラストレーションから、自分たちで作るんです」
AIを使っていても、出発点は手で作られたものにある。同作の画面に触覚性が残っているのは、この姿勢ゆえだろう。








