松竹株式会社は2025年4月7日、2025年2月期の通期業績予想(連結・個別)を上方修正するとともに、BS放送事業撤退に伴う特別損失約16億円を計上する見通しを発表した。主力の映像関連事業において、自社配給作品が予想を上回る興行収入を記録したことが業績の押し上げ要因となった。
映画部門「忍たま」「366日」が予想超えのヒット 興行・物販収入が増加
修正後の2025年2月期通期連結業績予想では、売上高は前回予想の824億円から840億円に、営業利益はマイナス9.4億円から16億円の黒字に転換。経常利益もマイナス49.4億円から25.6億円の赤字へと赤字幅が縮小し、親会社株主に帰属する当期純利益はマイナス18.7億円からマイナス7億円と大幅に改善した。
この業績上方修正の背景には、同社が配給した『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』および『366日』の2作品がロングランヒットとなったことがある。両作品の興行収入は、それぞれ30億円、25億円といずれも当初の見通しを大きく上回っている。
このヒットにより、映画館事業における興行収入だけでなく、配給収入やプログラム、グッズなどの物販売上も増加し、営業・経常利益に好影響を与えた。
「366日」は海外リメイクも決定
また、『366日』は米大手映画スタジオであるソニー・ピクチャーズエンタテインメント傘下のコロンビア・ピクチャーズが、同作の英語版リメイク権を獲得した。米バラエティ紙の報道によれば、同社プロダクション・エグゼクティブ・バイス・プレジデントのピーター・カン氏が製作総指揮を務める予定とされる。
さらに、同作は4月2日から台湾での劇場公開が始まっており、今後もタイ、カンボジア、ラオスなどアジア諸国での配給が決定済み、海外展開の広がりも注目されてる。
個別業績も上方修正 営業利益・経常利益が大幅増
個別業績についても、売上高が前回予想の494億円から505億円に、経常利益は1億円から18.6億円に大幅に上方修正された。当期純利益は14億円の赤字から5.6億円の赤字へと改善している。
こちらも連結と同様に、映画配給収入と物販収入の増加が寄与した格好だ。
BS放送事業からの撤退で特別損失16億円を計上
一方で、同社はBS放送事業「BS松竹東急」からの撤退を決定。これに伴い、2025年2月期の連結および個別決算において、約16億円の事業撤退損失引当金を特別損失として計上する。これは松竹が負担する撤退費用等に対し、他株主と協議のうえ見積もられたもので、事業撤退損失引当金として扱われる。
同社は撤退理由について、「BS松竹東急は2022年3月の開局以降、認知率・視聴率の伸びは見られたものの、当初計画に比して広告収入の伸び悩みが著しく、事業継続は困難であると判断した」としている。
創立130周年、勝負の年
松竹は2025年に創業130周年を迎える。130周年記念作品として企画された山田洋次監督の『TOKYOタクシー』(11月21日公開)や住野よる原作『か「」く「」し「」ご「」と』、浅倉秋成原作『俺ではない炎上』の映画化、『ミッドナイトスワン』の内田英治監督の新作、合計15本の実写日本映画を配給する予定だ。さらに、洋画では、2026年春までに『ロングレッグス』、『The Marching Band(英題)』、『Upon Entry(原題)』、『Kill(原題)』、『Mutiny(原題)』の5作品を予定。これにアニメやODS上映が加わり、多彩なラインナップを企画している。この成績をどこまで伸ばせるか注目だ。