東宝の業績が絶好調だ。
2025年2月期上半期(2024年3月1日~2024年8月31日)の営業収益は前年同期間比17.2%増の1,636億円で、営業利益は同33.0%増の409億円だった。2桁の増収増益である。東宝は通期の業績予想を上方修正し、営業収益を従来予想の6.1%、営業利益を12.7%引き上げた。
好調の背景にあるのが『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』などのアニメ作品だ。東宝はバンダイナムコホールディングスと資本業務提携を行ったほか、サイエンスSARUやアメリカのGKIDSなどのアニメ関連会社を次々と買収している。アニメーション事業に活路を見出だしているのは明らかだ。日本の映画界が大きく変わろうとしている。
劇場アニメ2作品が興行収入100億円を突破
2024年4月12日公開の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は興行収入が157億円を超えた。8月2日公開の『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』は34.6億円を突破している。『キングダム 大将軍の帰還』はシリーズ最高成績の78.5億円、『ラストマイル』は48.8億円と豊作に恵まれた。東宝東和の『怪盗グルーのミニオン超変身』も44.8億円だった。
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※決算説明資料より
2025年2月期上半期における映画事業の営業収入は、前年同期間比20.0%増の1,138億円。そのうち、映画営業は同47.3%増の360億円、映像事業は同41.7%増の366億円だった。両事業ともに好調だ。
映像事業の増収に寄与しているのは、『ハイキュー!!』『呪術廻戦』『怪獣8号』『SPY×FAMILY』『葬送のフリーレン』などのTOHO animation作品の動画配信や商品化権だ。今期の上映作品においては、『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』と『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の2作品が興行収入100億円を超えている。映画営業においても、アニメーション作品の貢献度は高い。
TOHO animationの2025年2月期上半期の配信による売上収益は、前年の2.3倍となる109億円だった。『ハイキュー!!』の影響で物販は3.5倍の49億円に跳ね上がっている。今や東宝にとってアニメーションはドル箱と呼べるほどのものだ。
東宝は2022年10月に大規模な組織再編を実施し、映像事業部の中にあったアニメ事業とゲーム事業をアニメ本部として独立させた。この組織再編によって、事業部内の一部門だったアニメが本部へと昇格。映画、演劇、不動産と肩を並べることになった。そしてアニメ本部の中核にあるのがTOHO animationだ。
意志決定のスピードや予算配分に差が生じたと予想されるが、現在の好調ぶりはその成果が出たと考えていいのではないか。
かつての大ヒットシリーズ『踊る大捜査線』の人気に陰りも
東宝は通期業績の見通しを引き上げたが、下半期はやや保守的な予想を出している。
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※決算短信より筆者作成
2025年2月期通期の売上高は、予想通りの着地で前期比4.8%増の2,970億円、営業利益は同4.6%増の620億円だ。引き続き動画配信には期待できるものの、下半期に公開する映画にやや力強さが欠けているためだろう。
話題作の一つである『室井慎次 敗れざる者』を10月11日に公開しているが、公開4日間で興行収入は4.8億円。好スタートを切っているものの、人気シリーズの12年ぶりの新作にしては盛り上がりに欠ける。2003年公開の『踊る大捜査線 THE MOVIE』は100億円を超える大ヒットを飛ばしていた。東宝は映画業界のトップランナーとして収益の拡大を目指す限り、ヒット作に厚みを作らなければならない。