2026年10月7日に開催された「VR FORUM 2026」で、セッション「放送局のグローバル展開、現場でぶつかったリアルと手探りの挑戦」が行われた。登壇したのは、総務省 情報流通行政局 情報通信作品振興課長の吉田弘毅氏と、TBSホールディングス グローバルビジネス局長の渡辺信也氏、さらに、ビデオリサーチの松岡逸美氏がデータの視点から議論に加わった。モデレーターは、ビデオリサーチのコンテンツビジネス領域専門コンサルタントである竹内伸幸氏が務めた。
国を挙げて日本のコンテンツを海外へ届けようという機運が、かつてなく高まっている中、アニメに続く成長のカギとされるのが「実写」だ。政策をつくる側と現場で汗をかく側、両者の話から見えてきたのは、大きな追い風と、個社で戦うことの難しさだった。
海外売上6.1兆円、実写はわずか2%──政府が描く「20兆円」への道
吉田氏はまず、日本のコンテンツ産業の現在地を数字で示した。コンテンツの海外売上は6.1兆円で、鉄鋼産業の4.8兆円を上回る「海外から稼ぐ産業」になっている。ただし内訳はゲームが約60%、アニメが約30%で、ドラマやバラエティ、映画といった実写コンテンツは全体のわずか2%にすぎない。
国内市場ではコンテンツの約30%を放送コンテンツが占めている。それでも、日本で制作された放送番組のうち海外に出ているのは0.5%だという。隣の韓国は26.5%だ。吉田氏は、国内市場でコンテンツを磨いてきた歴史が背景にあるとしつつ、「そういう面では、まだまだポテンシャルはある」と語った。
追い風もある。配信プラットフォームは年7.4%で伸びており、市場全体の伸び率2%を大きく上回る。吉田氏は、原作を生み出す力やアニメIPの強さ、アジア発コンテンツの世界的な人気、配信による届けやすさの3点を挙げ、実写には大きなチャンスがあるとの見方を示した。

政府は日本成長戦略で、現在6.1兆円のコンテンツ海外売上を2033年に20兆円へ引き上げる目標を掲げている。コンテンツは、半導体やAI、防衛産業と並ぶ戦略重要分野の一つに位置づけられた。総務省はこれを受けて実写コンテンツのアクションプランを策定し、日本のドラマ・バラエティ産業を、最初から国内外での展開を目指すモデルへ「ピボット」させる支援を進めている。令和9年度の概算要求として、149.7億円を要求している。

「グローバルビジネス元年」からの布石
渡辺氏は、TBSのグローバル戦略を紹介した。TBSは中期経営計画2026でグローバルを最重要分野の一つに据え、2024年を「グローバルビジネス元年」と宣言している。「日本のメディアグループから、世界へ最高の時を届けるグローバルコンテンツカンパニーへ生まれ変わる」という意思の表れだという。
組織面では、2023年にグローバルビジネス局を新設し、ロサンゼルスとソウルに拠点を開いた。2022年には、最初からグローバルOTTでの配信を前提に作品をつくるスタジオ「THE SEVEN」を立ち上げている。
今年1月には、『DUNE/デューン 砂の惑星』や『GODZILLA ゴジラ』で知られる米レジェンダリー・エンターテインメントへの約240億円の出資を発表した。マンガやゲームなど日本のIPを原作にした作品を、50対50の関係で共同制作していくことを目指すパートナーシップだ。渡辺氏によると、ハリウッド側には、日本の出版社や原作者との関係づくりに商習慣や文化の違いから苦労してきた経緯がある。そこでレジェンダリーが求めたのが両者の間に立つ"文化の翻訳者"だった。4月には、CJ ENM、U-NEXTと合弁会社「StudioMonowa」も設立している。

バラエティでは『SASUKE』が再び勢いづいている。米NBCの『アメリカン・ニンジャ・ウォリアー』はシーズン18を迎えた。『SASUKE』をもとにした種目は近代五種にも採り入れられ、オーストラリアやベトナムでは現地版の制作が再開。スケートボード版『SASUKE』ともいえる新フォーマット『KASSO』は、SNSフォロワーの9割以上が海外のファンだという。TBSは今年3月、カリフォルニアで主催イベント「KASSO FEST」も開いた。
「日本のドラマって何?」現場が感じる競争力の乏しさ
渡辺氏は自社の取り組みを紹介したうえで、「耳障りのいい話ばかりを並べたが、現場ではたくさんの壁にぶつかっている」と率直に語った。現場の肌感覚としては、日本の実写コンテンツの競争力は「まだ乏しい」という。









