実写版『白雪姫』の興行収入が振るわなかった。
ディズニーはこの映画に2億7,000万ドル(約386億円)を投じているが、北米週末興行収入はわずか4,300万ドル(約61億円)だった。日本もオープニング4日間の興行収入が3.2億円と振るわない。ディズニーの看板作品で世界的にも圧倒的な知名度を誇る作品の実写版が、大コケで終わりかねない。
ディズニーは動画配信事業を黒字化し、経営は安定路線に乗っていた。足元をすくわれかねない事態だ。
往年の名作の改変が観客の期待に沿わず
2023年に公開した『リトル・マーメイド』の北米の興行収入は公開から3日で9,557万ドルを突破しており、実写版『アラジン』を上回るヒットとなった。主人公にアフリカ系のR&Bシンガー、ハリー・ベイリーを起用して物議を醸した本作だったが、映画におけるパフォーマンスの高さが際だっていた。監督は名作ミュージカル映画『シカゴ』を手がけたロブ・マーシャルで、本作のヴィランであるヴァネッサの妖艶な魅力も引き出して主人公頼みにしないバランスもとれていた。
実写版『白雪姫』の風当たりが強いのは、観客が期待していた名作の枠組みを塗り変えてしまったためだろう。
今回の主人公は父親がポーランド系、母親がコロンビア系のレイチェル・ゼグラーだ。白雪姫の「肌は雪のように白い」は「猛吹雪を生き抜いた」という設定に変更されている。これは白人の美的感覚を過剰に志向した過去の価値観を塗り替え、さらに女性の自立した姿を同時に浮かび上がらせようとしているのは明らかだ。
そのほかにもオリジナル版の名曲である「いつか王子様が」がカットされている。そもそも王子様が登場しないのだ。女性が王子様が現れるのを待つ古いイメージを打ち破り、自ら道を切り開くというメッセージが込められている。
白雪姫はグリム童話の中でもとりわけ認知度が高く、ディズニーアニメの名作としても名高い。観客の期待値とのずれが大きかったために、これほど批判にさらされる結果となったのは間違いなさそうだ。