ショートドラマとマンガ・ウェブトゥーン、メディアミックスの新事例と成長ポテンシャル【IMART2024】

マンガ・アニメの未来をテーマにした業界カンファレンス「IMART2024」にて、ショートドラマをテーマとするセッションが開催。ショートドラマとマンガ・ウェブトゥーン連携が切り開く可能性について議論された。

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マンガ・アニメの未来をテーマにした業界カンファレンス「IMART2024(国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima)」が、2024年11月12日から16日の5日間にかけて開催された。

マンガ・アニメ業界の先端で活躍するイノベーターや実務家を一同に集めた講演が多数行われる同カンファレンス。3日目の11月14日には「漫画/webtoonの二次展開先としてのショートドラマの可能性」のセッションが開催された。中国から盛り上がりを見せる縦型ショートドラマ市場は、昨年頃から日本でも大きく注目を集めている。日本ではマンガやウェブトゥーンを原作にしたショートドラマが多く、アニメやテレビドラマに続く新たなメディアミックスのあり方が生まれつつある。

本セッションでは、国産ショートドラマのプラットフォームの草分け的存在「BUMP」を運営するemole代表取締役の澤村直道氏、ショートドラマ制作スタジオとウェブトゥーン制作スタジオを運営するMinto取締役の中川元太氏、マンガ原作をショートドラマに提供したCELLENNの取締役・石黒健太氏が登壇。ショートドラマとマンガ・ウェブトゥーン連携が切り開く可能性について議論した。

写真左から石黒氏、澤村氏、中川氏

急成長するショートドラマ市場

まずは澤村氏がショートドラマとは何かを解説。ショートドラマは1話3分程度の短尺のドラマだ。市場の中でも、大きく分けると、

  1. TikTokのような汎用プラットフォームで短話完結、もしくは2-3話で完結する形で配信され、タイアップ広告でマイタイズするもの

  2. 専用アプリで数十話連続で視聴する従量課金型のもの

    のふたつがあるそうで、今回は主に後者の市場について話してくれた。

ショートドラマ市場は中国で2020年ごろから勃興した。中国では数多くの専用アプリが登場しており、国外市場にも進出している。中国国内の市場規模は1兆円とされ、2029年にはグローバルで8.7兆円にまで成長する見込みだという。日本では今年から市場が大きく盛り上がり、続々と企業が参入、2年後には国内でも1,500億円程度の規模になるのではと言われている。

澤村氏は、3年前にショートドラマ事業をスタート。YouTube動画の再生単価では収益が上げにくいので、マンガアプリのマネタイズモデルを模索したところ、ショートドラマに行き着いたとのこと。BUMPは現在までに165万ダウンロードを記録しているが、ほとんど広告を出していないそうだ。BUMPが運用するSNSアカウントでの切り抜きからユーザー獲得の導線を作っているそうだ。

ここのところ、ウェブトゥーンや、ボーンデジタルの横読みマンガの実写化企画が増えており、原作の認知度向上に大きく貢献しているという。

気になるのは課金率だ。1作品のユニークユーザーの24%が課金する作品もあるという。中には制作費の7倍稼いだタイトルもあるそうだ。

ウェブトゥーンに似ているショートドラマ

Mintoの中川氏は同社でウェブトゥーンスタジオの運営からショートドラマへと事業を拡張。その理由について、IP化を促進出来るポテンシャルがあると考えたからだという。吉本興業グループのFANYとNTTドコモ・スタジオ&ライブと一緒にショートドラマプラットフォーム「FANY :D(ファニーディー)」を立ち上げ、2024年12月からサービスを開始している。

石黒氏は、ショートドラマはウェブトゥーンの発展と似ているという。マネタイズのモデルも数話を無料で見てもらい、課金してもらうというのはウェブトゥーンと同じだ。内容的にも似たようなものを求められる。今のショートドラマ界は電子コミックの黎明期と似ているとも指摘する。


《杉本穂高》

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杉本穂高

映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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