【IMARTレポ】なぜ日本発IPを「海外で」映像化するのか?ショートドラマとBL、2つの事例から見るグローバル戦略

なぜ今、日本の原作を「海外」で映像化するのか?ショートドラマ配信アプリ「BUMP」澤村氏とDMM石黒氏がIMARTで対談。現地制作のメリットや、実写化の壁を超える戦略、SNS活用術など、グローバル展開のリアルな知見をレポートする。

映像コンテンツ 制作
左から:石黒健太氏、澤村直道氏、平柳竜樹氏
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2025年11月、マンガIPの知見共有とコンテンツ産業の発展を目的にしたカンファレンス「IMART(国際MANGA会議 Reiwa Toshima)」にて、「なぜ我々は"海外で"映像化するのか? ― 台湾・韓国・米国での事例から日本発IPが世界で輝くヒントを探る」のトークセッションが開催された。

登壇者は、ショートドラマ配信アプリ「BUMP」を運営し、世界100カ国への展開を進めるemole株式会社CEOの澤村直道氏と、DMM.comでBL(ボーイズラブ)作品の日台共同制作を手掛けた石黒健太氏。モデレーターはCulture Weaver合同会社の平柳竜樹氏が務めた。

急速に拡大するショートドラマ市場と、熱狂的なファンを持つBL市場。異なるフィールドで「海外制作」に挑戦する両氏の視点から、日本のIPを従来とは異なる流れで海外で映像化していく戦略の知見が共有された。


emole:ショートドラマの「ローカライズ」と「カルチャライズ」戦略

セッション前半では、澤村氏がショートドラマ市場の急成長と、emoleが展開するグローバル戦略について語った。

emoleはショートドラマプラットフォーム「BUMP」を運営している。国内ショートドラマ市場の先駆者として知られる同サービスは、利益をクリエイターとレベニューシェアする仕組みを導入しているのが特徴だ。

調査によれば、ショートドラマの市場規模は2029年に世界で8.7兆円に達すると予測されている。BUMPもグローバル市場の開拓に乗り出しており、現在世界約100ヵ国でアプリを配信しているという。

澤村氏は、日本市場の収益性はそれなりに高いものの、ダウンロード数で見ると世界シェアのわずか数パーセントに過ぎない現状を指摘。中南米や東南アジアなどはダウンロードベースではかなりのユーザー数がいるとのことで、日本以上に人口を持つ市場に参入する必要があることを強調した。

emoleの海外展開は、大きく2つの軸で進められている。

  1. ローカライズ(字幕展開)
    日本で制作した作品に多言語字幕を付与する手法。低コストで展開可能であり、すでに『マリッジ・プラン』などの作品が米国や台湾でヒットを記録している。BUMPの特徴である「SNSでの切り抜き動画」による集客は、広告費をかけずにグローバルなニッチ層へリーチする手段として有効に機能しているという。切り抜き動画の中には、数千万再生に達しているものもあるという。

  2. カルチャライズ(現地制作)
    現地のキャスト、スタッフ、脚本家と共に、その国の文化に合わせて作品を制作する手法。米国と韓国ですでに着手しており、『私たちの財閥先生』『父の不倫が発覚しました』といった作品があるという。

澤村氏は、他国との共同製作で、作り方の違いを実感。韓国の制作現場では、セットチェンジの時間を極小化するために自然光をメインに活用したり、NGが出てもカメラを止めずに撮影を続ける「キープローリング」の手法が取られていたという。これにより撮影日数を短縮し、コストを抑えつつ高品質な作品を作り上げる体制が確立されている。

また、米国西海岸では中国系ショートドラマ企業の進出により、すでに制作エコシステムが成熟しており、スタッフの習熟度が高いという発見もあった。しかし、現地発の企画がまだ少ないためハリウッドメジャーがショートドラマを作れる環境を作っていきたいと将来の展望を語った。

DMM:実写化の「壁」を超えるための海外制作

DMM.comの石黒氏は、こめおかしぐのBLコミック『イッて終わりなわけがない』を原作にした『秘密關係 Secret Lover』の日台共同制作の事例を紹介した。

石黒氏が海外での映像化に踏み切った背景には、日本の漫画を実写化する際に生じがちな「原作ファンが抱くイメージとの乖離」という課題があった。

「国内で制作すると、どうしても『イメージと違う』という反応が起きやすい。しかし、海外で制作し、現地の俳優が演じることで、ある種の『ファンタジー』として受け入れられやすくなる」と考えたという。

制作パートナーとして台湾を選んだ理由は、BL市場の成熟度と、日本のコンテンツとの親和性の高さだ。

しかし、制作プロセスには日本とは異なる苦労もあったという。特に「契約文化」の違いは顕著で、日本では「暗黙の了解」で済む部分も、海外では初期段階から厳密な契約書を交わす必要がある。一方で、台湾の制作チームやキャストの一体感は強く、主演俳優たちが撮影外でもSNS等で「カップリング」としての世界観を大切にし続けるなど、ファンエンゲージメントを高めるための献身的な姿勢が、アジア圏全体でのヒットに繋がった。また、台湾ではTAICCAなどの公的な補助金を使うのは必須だと実感したという。

本作は、配信展開だけでなく、映画化も決定。多面的なIP展開に成功している。

共通項は「SNS」と「行動力」。これからの人材に求められるもの

異なるアプローチをとる両社だが、成功の鍵として共通して挙げられたのが「SNS活用」と「現地の感覚」の重要性だ。

左から:石黒健太氏、澤村直道氏

澤村氏は、ショートドラマでは「流入性能」が大事だと語る。主に切り抜き動画からアプリにユーザーが流入してくるため、切り抜けるポイントをどれだけ作れるかが大事だという。そのため、SNSで拡散されるための「ツッコミどころ」や「共感ポイント」を作る必要があるが、そうした感覚は国ごとにも異なるため、現地の脚本家やクリエイターの感性に委ねていると語る。石黒氏も、誰と作るのかを重視したといい、『秘密關係 Secret Lover』では現地のトップクリエイター(BLドラマの女王と呼ばれる脚本家など)を起用した。また、台湾ではハッピーエンドが好まれる傾向があり、成立する企画の方向性をきちんと検討することの大切さをほのめかした。

セッションの締めくくりとして、グローバルビジネスを行う上で必要な資質を問われた両氏は、口を揃えて「行動力」を挙げた。

「現地に行き、対話をすることでしか得られない繋がりや発見がある」と澤村氏は語る。石黒氏も今後もコミックなどのIPを積極的に広げていきたいと抱負を語り、セッションを終えた。

IMART2025(国際MANGA会議 Reiwa Toshima)のアーカイブチケットはこちら

https://imart2025archives.peatix.com/view

《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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