1月29日、日本映画製作者連盟(以下、映連)が、2024年の日本映画産業統計を発表。年間の総興行収入は、前年比93.5%で144億円減の2,069億8,300万円となった。邦画は2016年を超えて過去最高を記録する一方で、洋画のシェアは全体の24.7%まで落ち込む結果となった。
今回の概況を振り返り、現在の映画市場のトレンドと今後の見通しを考えてみたい。
ハリウッド映画のシェア低下は日本だけの現象か?
前述した通り、興行全体は93.5%と前年割れだが、邦画だけなら前年比105.1%と伸張している。一方、洋画は前年比69.8%と大きく減少。洋画興収のトップはディズニー配給の『インサイド・ヘッド2』で2位は東宝東和の『怪盗グルーのミニオン超変身』、3位も『ウィッシュ』とアニメーション作品が上位を占める。洋画の実写映画で20億円を超えたのは 『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』と『デッドプール&ウルヴァリン』の2本のみ。洋画の実写にヒット作が少なく低調気味だったことが減少の要因と言えるだろう。
映連ではこの要因を、2023年に発生したハリウッドのダブルストライキの長期化による制作作品の減少を挙げているが、果たしてそれだけが原因と言えるだろうか。コロナ禍以降、映画市場の大きな変化が語られることは多いが、洋画の低迷は2000年代から続く長期的な傾向であり、コロナはそれに拍車をかけることになったと考えるべきであり、長期的な視点に立って洋画の魅力を再発見していく姿勢が求められるのではないか。
たとえ、2025年に『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』のような作品が単発でヒットしたとしても、それが洋画全体を活性化できるとは想像しにくい。ハリウッドの作品供給力という点では、今年ロサンゼルスで起きた山火事の影響やトランプ政権との向き合い方などで、引き続き難しいかじ取りを迫られていく可能性があり、ハリウッドの求心力が完全には回復しきらないことを考慮しなくてはならない時代に来ている。
そもそも、ハリウッド映画の求心力低下は日本だけで起きている現象ではない。世界最大市場の中国において、2023年のハリウッド映画のシェアは12%にまで低下、2024年も国産映画が78.68%で前年と同水準だ。
また、東南アジアで人口が急速に増加し、経済成長が続くインドネシアではローカル映画の存在感が増しており、かつては20~30%程度だったシェアが、65%にまで増加しているという。急成長しているベトナム映画市場でもローカル作品の存在感が増しており、2023年に年間ベスト10に入ったハリウッド映画は『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』と『マイ・エレメンタル』の2本のみで、ベトナム映画は6本ランクインしたという。アジア市場では急激にローカル作品の需要が高まっているのだ。
日本は先行してこうした傾向にあったわけだが、国内映画の本数をこれ以上増やすというのは現実的とは言えない。アニメは旺盛なグローバル需要が続き、制作キャパシティを超えつつある状態で、実写映画も制作現場の待遇改善のため一作あたりの製作費が増加しており、すぐに本数を増加させることは難しい。
そうなると、ハリウッド映画の存在感はもう元には戻らないという前提で、別の国の娯楽作品を柱として育てていく意識も必要になってきているのではないだろうか。