「アニメ産業レポート2024」発表:海外の成長が市場全体を牽引、国内ではテレビアニメ23時台枠が定着するなど新たな動きも

2024年12月20日、日本動画協会は2023年のアニメ産業動向をまとめた「アニメ産業レポート2024」刊行記念セミナーを開催した。今回の調査では産業全体が3兆円を突破し、海外市場がアニメ市場の成長を牽引していることなどが分かった。

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「アニメ産業レポート2024」刊行記念セミナー
筆者撮影 「アニメ産業レポート2024」刊行記念セミナー

2024年12月20日、一般社団法人・日本動画協会は「アニメ産業レポート2024」刊行記念セミナーを開催した。同レポートは日本アニメ産業の市場規模を多岐にわたる分野にまたがって調査しており、2009年から毎年統計を発表している。

今回発表されたのは2023年の統計結果は、過去最高を記録した2022年を大きく超え、3兆2,465億円(前年比114.3%)を記録。2年連続で過去最高を更新した。アニメ産業が1兆円を超えたのは2002年、2兆円突破はその15年後の2017年だった。今回初めての3兆円突破となり、成長が加速していることをうかがわせる結果となった。

海外市場が2度目の国内逆転

アニメ市場の成長を牽引しているのは、海外市場だ。2023年の海外市場からの売り上げは1兆7,222億円、国内の1兆6,243億円を超えた。世界的なアニメブームが引き続き市場の成長を引っ張っている。

また、2023年はテレビ、国内配信、商品化、ライブ市場もそれぞれ伸長している。狭義のアニメ市場であるアニメスタジオの売り上げも4,272億円(前年比125.4%)に達し、産業全体の市場規模と同じくこちらも過去最高を記録した。

需要が大きくなる中、物価高や労働環境整備の必要性が認識され、制作コストが上昇しているという。しかし、現場では需要が大きいゆえに人材不足の状態が続いているとのこと。デジタル化による効率化と人材育成には前向きに取り組んでいるが、需要の増加に追い付いていないという。

23時台がテレビアニメの新たな主戦場に

同セミナーでは、産業の構成区分ごとに、概況を発表。テレビ、映画、ビデオ、配信、音楽、商品化、ライブ、海外とそれぞれのセクションごとに傾向をまとめている。

テレビ市場は回復傾向にあり、3年連続で前年を超えた。アニメ番組放送枠が増加し、テレビ局が放送収入の減少を埋めるために、放送外収入を見込めるアニメの投資を拡大していることが主な成長要因だ。とある局のプロデューサーの「番組枠が足りない」というコメントも紹介された。

各局が23時台に続々とアニメ枠を新設しており、この時間帯に向けて新たな戦略が求められるとした。

映画館は全体的に高水準をキープしたものの、公開タイトル数がここから大きく増える状況にはないとのこと。ここ数年は500億円以上の高い水準で安定しており、これは制作キャパシティの上限に達していることを示しているのではとの見解だ。

『名探偵コナン』や『ドラえもん』などの定番シリーズが安定してヒットする一方で『「鬼滅の刃」ワールドツアー』のような新フォーマットの上映や、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』のヒットなどが特筆すべきものとして挙げられた。また、『君たちはどう生きるか』の世界的ヒットにアカデミー賞受賞など、国際的に存在感が高まった1年となった。

2024年は、大型オリジナル企画が不在となり、オリジナル作品の興行が伸び悩んだ一方、58分の『ルックバック』がヒットしODS上映の新たな道を開いたと評価した。また、テレビアニメ同様、劇場作品も制作費が高騰しており、10億円の国内興収でもリクープしない作品も出てきているという。そんな中、劇場作品は配信プラットフォームと独占配信契約をすることがリクープの有力手段になってきている。

パッケージ市場は例年通り減少傾向だが、減少率は落ち着きを見せたようだ。視聴のためのメディアの役割は終え、コレクターアイテム化が進んでいるという。そのため、『アイドリッシュセブン』のようなライブ系は比較的高い売上を記録している。

世界配信市場は成熟期に

国内配信は、そろそろ市場の成長は止まるのではという昨年までの予想を裏切り、伸長する結果となった。


《杉本穂高》

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映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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