「フリーランスサミット2024」SAG-AFTRA理事がハリウッドストライキを振り返り“国際的な連帯”の重要性を訴える【レポ】

11月30日、都内で「フリーランスサミット2024」が開催された。昨年ハリウッドでストライキを主導した全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)の全米理事、ダンカン・クラブツリー=アイルランド氏が登壇し、ストライキをいかに戦ったのかを振り返る。

働き方 業界団体・行政
「フリーランスサミット2024」
筆者撮影 「フリーランスサミット2024」
  • 「フリーランスサミット2024」
  • 「フリーランスサミット2024」
  • 「フリーランスサミット2024」
  • 「フリーランスサミット2024」
  • 「フリーランスサミット2024」

11月30日、都内で「フリーランスサミット2024」が開催され、昨年ハリウッドでストライキを主導した全米映画俳優組合「SAG-AFTRA」の全米理事、ダンカン・クラブツリー=アイルランド氏が登壇した。

同サミットは働き方が多様化する中で、フリーランスが抱えている課題や実態を捉えて、様々な知見を紹介し課題解決に繋げる目的で開催されている。今年の11月からはフリーランス新法も施行され、フリーランスの働き方改革や改善の待遇がなされるかに対して注目が集まっている。そんな中、多くの来場者が会場を詰めかけた。

映像産業はフリーランスが多い業界だ。組織に属さないが故にフリーランスは団結する力が弱くなりがちで、労働環境改善や賃金上昇といった権利を勝ち取る力が乏しい。米国の映画産業もフリーランスが多いのは日本と同様だが、昨年、大規模なストライキによって出演料アップを勝ち取ることができたという。フリーランスの集まりであるSAG-AFTRAは、昨年のストライキをいかに戦ったのか、ダンカン氏が語った。また、同セッションには、ダンカン氏とも知己である、日本俳優連合(日俳連)の専務理事・池水通洋氏も登壇した。

40年ぶりのストライキで賃金アップを勝ち取ったSAG-AFTRA

ダンカン氏が登壇したのは、「偽装雇用問題にNO!つながりたいフリーランス応援!」という名のセッション。ダンカン氏は、フリーランスの保護は世界的に重要なことで、このサミットに呼ばれたことは光栄なことだと挨拶。

SAG-AFTRAは約16万人もの俳優が所属する大きな団体だ。昨年のストライキはその16万人ほぼ全員に大きな影響が出ることとなった。ダンカン氏は、ストライキでの交渉について重視したことは何だったのかと問われ、「映画産業に関わる人間が、労働者であると認めてもらうこと」だったという。会社に属していない個人で活動する人間も、同じ労働者で対等であると認めてもらうことを重視したという。SAG-AFTRAには様々な立場の俳優が所属しており、個人でブランドなどと契約し、インフルエンサーのような立場となっている人の立場も守る必要があったことから、様々な譲歩も必要で臨機応変な対応が必要だったという。

ストライキは2023年7月から実施、先行して行われていた全米脚本家組合(WGA)に続いての実施となった。SAG-AFTRAとしてのストライキは40年ぶりだったが、脚本家と俳優のダブルストライキは63年ぶりだった。このストライキによって、生成AIに対する役者の保護施策、7%の賃金アップを獲得できたとダンカン氏は語る。このストライキが実施された背景には、近年のインフレに見合った賃金上昇がなされていなかったこと、そして、業界全体が構造的な変化をしている中で報酬体系がそれに見合っていなかったことがあったという。

構造変化は、主に配信市場の台頭と生成AIの登場だ。結果的には7%の賃金上昇を勝ち取り、生成AIに対する保護ルール、俳優をモデルにしたAIの利用にはきちんと対価を支払うことなどが初めて策定されることになった。

俳優の国際的連帯が日本の声優の契約も守った

弁護士の菅俊治氏は、ストライキによって映画産業の中で、労働者としてフリーランスの働き方や権利について問い直す具体的な動きは起きたのかと質問。ダンカン氏は、今年になってインティマシー・コーディネーターの組合が新たに発足するなどの動きがあったと紹介し、様々な職種で団結していくことの重要性が改めて認識されているようだ。


《杉本穂高》

関連タグ

杉本穂高

映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

編集部おすすめの記事