東映が2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)の通期予想を上方修正した。
売上高は従来予想よりも1割、営業利益は3割それぞれ増加。減収、営業減益予想から一転して増収増益となる見込みだ。2025年3月期上半期も増収増益で折り返しており、その結果を受けた修正のようだ。
ワンピースやドラゴンボール、スラムダンクなど主力IPのアニメ配信が好調。成長をけん引している。
営業利益の9割が連結子会社・東映アニメーションによるもの
東映の2025年3月期第2四半期累計(2024年4月1日~2024年9月30日)の売上高は前年同期間比1.3%増の877億6,400万円、営業利益は同30.9%増の194億2,100万円だった。
同期間における映像関連事業の映画セグメントの売上高は、前年同期間比でおよそ6割の減収。ドラマも1割近い減収だった。しかし、コンテンツは1割増となり、他のセグメントの減収分を補った。コンテンツはアニメのIPを主とした配信権、放送権、商品化権の販売などによるものだ。映像関連事業全体の売上高は644億円で、前年と変わらない水準である。
東映は2022年8月公開の『ONE PIECE FILM RED』(興行収入203.3億円)と、同年12月公開の『THE FIRST SLAM DUNK』(興行収入162億円)の2作によって2023年3月期の売上高が前期の1.5倍に膨らんだ。今期が計画通りに着地をすると、そこから大きな反動に見舞われることなく、3期連続で横ばいで推移することになる。
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※決算短信より筆者作成
業績を支えているのは、売上高全体の半分以上を占める連結子会社・東映アニメーションだ。
東映アニメーションは2025年3月期第2四半期累計の売上高が前年同期間比6.0%増の489億6,400万円、営業利益は同49.5%増の169億9,300万円だった。東映よりも売上成長率は高く、営業利益の実に9割近くは東映アニメーションによるものだ。ドラゴンボール、ワンピースの海外配信権、スラムダンク、ゲゲゲの鬼太郎の国内配信権が増収をけん引。人気IPは版権収入においても業績貢献が大きかった。
営業利益が1.5倍に増加している背景の一つに、2023年4月に公開した『聖闘士星矢 The Beginning』の評価損の計上がある。この作品は80億円もの製作費を投じたと言われ、ハリウッドのスタッフやキャストを集めた東映の創立70周年を記念するヒット期待の高いものだった。しかし、興行収入は全世界で10億円に届かなかったと言われている。
東映アニメーションは2024年3月期に棚卸資産評価損を35億9,300億円計上した。多くは『聖闘士星矢 The Beginning』によるものだろう。
その影響もあって2024年3月期は営業利益が2割もの営業減益となった。前期は動画配信が好調だったこともあって減益幅は限定的。今期は評価損を計上したことで、利益が出やすくなっている。東映アニメーションの今期上半期の営業利益率は34.7%。前期と比較して10.1ポイントも上昇した。上半期の東映の営業利益は前期の1.3倍に拡大したが、これは主に東映アニメーションの大幅な営業増益が貢献している。