『ゴールド・ボーイ』中国人気小説を日本で実写映画化!日中を繋ぐチームジョイの挑戦

3月8日(金)より全国公開される映画『ゴールド・ボーイ』。本作は、“中国の東野圭吾”と呼ばれる人気作家・紫金陳の原作小説を日本映画として映像化した作品だ。なぜ本作を日本で映画化したのか?そのチャレンジについて、制作総指揮を務めるチームジョイの白金(バイ・ジン)氏に話を聞いた。

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『ゴールド・ボーイ』中国人気小説を日本で実写映画化!日中を繋ぐチームジョイの挑戦
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中国ドラマ「バッド・キッズ 隠秘之罪」が2020年6月に中国で配信された時の盛況は、未だに鮮明に覚えている。

中国全土で社会現象を呼んだ本作は、“中国の東野圭吾”と呼ばれる紫金陳(ズー・ジンチェン)の原作小説を映像化したドラマ作品だ。そして、同小説を金子修介監督がメガホンをとり、港岳彦が脚本を手がけ、『ゴールド・ボーイ』というタイトルで日本映画が製作された。

今回Brancでは、本作の制作総指揮を務める白金(バイ・ジン)氏に独占インタビューを実施。3月8日(金)より全国公開される『ゴールド・ボーイ』の制作裏話をはじめ、『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』などをヒットさせてきた白金氏とチームジョイの話をたっぷり聞いた。

チームジョイ 代表取締役CEO 白金(バイ・ジン)氏。

『唐人街探偵 東京MISSION』の日本制作を支援、白金氏とチームジョイの歩み

──まずは、白金さんの自己紹介からお願いします。

私は元々中国の中国中央テレビ(CCTV)の日本支局で、ジャーナリストとして日本経済などの取材活動をしていました。そこからエンターテインメントに興味を持ち始め、少しずつエンタメ業界に入っていったんです。2018~2019年に日中文化産業交流協会を立ち上げ、日本から東宝、東映、松竹、角川などの大手映画会社、中国からアリババピクチャーズ、ワンダーピクチャーズなどが参加し、日中映画業界でうまくビジネスを展開できればという目的でスタートしました。

その後、チームジョイという会社を立ち上げました。チームジョイの初期には、『唐人街探偵 東京MISSION』の日本制作チームとして協力しました。また、同時期に日本国内で中国のアニメーション映画などの配給・宣伝事業もはじめ、今に至ります。

──『唐人街探偵 東京MISSION』は日中映画史においても、重要な作品だと思います。本作はプロデューサーの白さんにとって、どのような作品でしょうか?

多くの人は『唐人街探偵 東京MISSION』を、日中合作だと勘違いしていますが、実際は合作ではなく中国映画です。私の経験から見ると、いわゆる“合作”はなかなか成功しづらいと思います。どちらかが主導権を握って作った方が、成功するケースが多いです。『唐人街探偵 東京MISSION』はじめ、チェン・カイコー監督の『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』もそうですね。逆に、日本映画の『キングダム』は中国で大規模なロケ撮影が行われましたが、あれも合作ではなく、“純”日本映画ですよね。

『羅小黒戦記』の大ヒット、ユーザーファーストの視点

──そして、ほぼ同時期に、チームジョイ配給の『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』も日本で大きな話題を呼び大ヒットしましたね。

本作の成功はチームジョイによるものではなくファンのおかげだと思うんです。近年、日本における中国映画の状況は決して良いとは言えません。でも、我々はファン視点で物事を考えていて、ファンが好きそうなことは何でもやります。もちろん中国映画もやるし、香港映画も、ほかの国の作品もやります。(チームジョイの中で)日中というテーマはもちろんありますが、もっと純粋に作品視点でファンと共にコンテンツを楽しみ、コンテンツを宣伝し、コンテンツを育てるということを理念として大切にしています。

ファンがいま何を考え、悩んでいるか。私は常にSNSをチェックしています。『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』の初期段階では日本映画市場のルールをあまりわかっていなかったこともあり、劇場パンフレットを作っていなかったんです。その後、ファンからの熱い要望をうけ、10日間で急いでパンフレットを作りました。急いで作ったので出来が良いとは言えませんでしたが、たくさんのファンが買ってくれました。

また、ファンからグッズが欲しいという声があがったら、我々は輸入したり、オリジナルグッズを制作したりしました。つまり、私は基本的にお客様の視点で物事を考えています。お客さんに何かを教えるとか、説教するとかは、絶対にしません。常にファンと同じ世界で、ファンと一緒に作品の魅力を最大限に引き出したいと考えています。だって、ユーザーはみんな宣伝マンになりうるのですから。

「バッド・キッズ 隠秘之罪」の面白さに感動!『ゴールド・ボーイ』ができるまで

──ここで、新作の『ゴールド・ボーイ』の話に入りたいと思います。当時中国で実写化されたドラマは信じられないほど人気でしたよね。日本ではあまりその凄さが伝わっていないかもしれませんが。

原作は“中国の東野圭吾”と呼ばれる紫金陳先生の作品で、中国では非常に有名です。私はドラマ版の「バッド・キッズ 隠秘之罪」を観て、非常に驚きました。中国のドラマがここまでたどり着いたとは!その後、原作も読みましたが、原作はドラマと違うところが多いと気付きました。そうしたら、“日本を舞台に移して、もう1回作るのもいいかもしれない”と思い始めました

日中の映画交流において、中国原作の日本映画はなかなかないと思います。逆のパターンはたまにありますが。いま、中国の小説はどんどん世界に展開していて、SF小説の『三体』シリーズはNetflixでハリウッド実写化も決まりました。グローバル化が進み、世界中の若者の好みはどんどん近づいていると感じています。だから、中国であそこまで大ヒットした作品ならば、日本でもきっと話題になると信じています。「バッド・キッズ 隠秘之罪」が中国で放送された時、日本でいう「鬼滅の刃」級のレベルで、中国全土が熱狂していましたから。

──本作の舞台に沖縄を選んだのはどのような理由があったのでしょうか。

日本版の舞台に沖縄を選んだのは私ではなく、金子修介監督と脚本家の港岳彦さんです。ストーリー自体は中国ならどこでも問題なさそうですが、日本では本州ではなく、沖縄のほうが合っているんじゃないかという話になりました。また、せっかくなので、沖縄の面白さや良さをもっと世界に紹介したいとも思っています。いま中華系の人にはニセコ(北海道)などは人気があり日本旅行で北に行く人は多いのですが、南に行く人は少ないです。だから、微力ですが沖縄ブームを作りたいという意味も込めて撮影を頑張りました。

──映画化にあたり、原作者とはどのようなコミュニケーションをとりましたか。

原作者の紫金陳先生とはiQIYI(※) を通してコミュニケーションをとりました。知人に紹介してもらい、条件諸々で交渉していきました。

※中国発、アジア最大級の動画配信プラットフォーム。

──今回、主演の岡田将生さんをはじめ役者陣も豪華ですね。

キャスティングは本当にラッキーでした。出演者の皆さんはストーリーに魅力を感じてくれて、本がいいと評価してくれました。スケジュールの面でも縁があり、もはやこのキャストが揃ったのは奇跡でした。実は最初は子役のキャスティングが心配で、400名以上オーディションも実施しましたが、優秀な子が本当にたくさんいて、その中から選ばれた羽村仁成さん、星乃あんなさん、前出燿志さんは本当に最高の演技をみせてくれました。

──撮影現場はいかがでしたか?

とてもいい現場でした。撮影は想像以上に順調で、金子監督は躊躇なく、かなり早いペースで進めていましたね。また、照明チームも、撮影チームも、皆本当に優秀で、非常に効率よく撮影が進みました。

『ゴールド・ボーイ』タイトルに込めた想い

──そして、今回の邦題はとても興味深いです。なぜ『ゴールド・ボーイ』というタイトルにしたのでしょうか。

『ゴールド・ボーイ』というタイトルには、皮肉の意味を込めています。 “ゴールド・ボーイ”というと、ピカピカで完ぺきな人間をイメージするじゃないですか。スティーブン・キングさんの小説に「ゴールデンボーイ」という名作もありますよね。

“ゴールド・ボーイ”って、英語の文法は間違っているでしょう。今回はあえて間違えているんです。なぜかというと、まず、一つはスティーブン・キングさんへのリスペクトです。もう一つは、いいものはゴールドみたいにいいもの。悪いものもゴールドみたいに悪いと考えています。だから「as good as gold, as bad as gold」という意味でこの作品名にしました。

──作品を拝見して、とても驚きました。原作の再解釈と言ってもいい部分もありますし、日本映画的な部分も感じました。白金さんは完成した作品を観て、どのように感じましたか?

正直、チームジョイで初めての日本映画なので、反省点はたくさんあります。ただ、映画祭や試写会での観客の反応を見て、とても嬉しく思っています。今回はあくまでも出発点で、我々はすでに「ゴールド・ボーイ2」、「ゴールド・ボーイ3」も構想しています。本作の本来の意味や目的は、5年後10年後に発揮できるかもしれません

私が尊敬している『唐人街探偵 東京MISSION』のチェン・スーチェン監督が、お客さんを楽しませることと、作品を世界に広げることの重要性を教えてくれました。この2点は映画産業の中でも、最も重要な部分だと思います。つまり、簡単に言ってしまえば、シリーズもの、ユニバースものを作ることです。「唐人街探偵」シリーズは、東京MISSIONがあり、ニューヨークMISSION、タイMISSIONもありますよね。

私も『ゴールド・ボーイ』のヒットを信じ、2作目、3作目など、シリーズ化したいと考えています。海外出身だからこそ、一般的に日本の皆さんが企画できないような新しい企画に挑戦していきたいと常に思っているんです。

──外国人として日本映画界に参加することは、日本映画界にとってもとても重要なことだと感じています。改めて、いまの日本映画界で感じた疑問点や課題を教えていただけますか?

データをみると、2023年の日本の年間興行収入は、2,221億8,200万円。興収トップ5のうち、4作がアニメーション映画です。課題は明らかでしょう?実写映画は、なぜアニメのようなヒット作が作れないのか。問題は多く存在していると思います。もちろん、日本の実写映画は決して、面白い作品が作れないわけではありません。それこそ、是枝監督の『怪物』や、森達也監督の『福田村事件』など、優秀な作品は毎年あります。しかし、政府の支援は全然足りないし、オリジナル作品に対して常に慎重な態度だし、チャレンジのチャンスがあまりなく、制作体制は常に厳しい……正直あまり希望が見えないですね。このままだと、映画業界に入る人材も更に少なくなってしまうと思います。

日本映画は豊かな歴史があり、映画史に残る名作をたくさん作ってきましたが、その価値を下げないように国の支援も含め、業界全体で努力しないと更に深刻になるに違いない。日本には優秀な人材が多くいますし、素敵な観客もいるので可能性は常に存在していると信じています。もちろん私、そしてチームジョイも、引き続き観客を喜ばせる作品を作り続けたいと思っています。

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『ゴールド・ボーイ』

それは完全犯罪のはずだった。
まさか少年たちに目撃されていたとは…。
総再生数20億回!※
アジア最高峰のドラマ原作を日本映画化!
殺人犯と少年たちの頭脳戦が幕を開ける。
※iQIYI JAPAN調べ


公式サイト:https://gold-boy.com

公式X(旧Twitter):https://twitter.com/goldboy_movie

公式Instagram:https://www.instagram.com/goldboy_movie/

公式TikTok:https://www.tiktok.com/@goldboy_movie

〈提供:ブシロードムーブ〉

《徐昊辰》

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徐昊辰

上海国際映画祭プログラマー、映画ジャーナリスト 徐昊辰

2008年から中国の映画専門誌「看電影」「電影世界」、ポータルサイトSINA、SOHUなどで、日本映画の批評と産業分析を続々発表。2016年から、北京電影学院に論文「ゼロ年代の日本映画~平穏な変革」などを不定期発表。中国最大のSNS、微博(ウェイボー)のフォロワー数は約270万人。WEB番組「活弁シネマ倶楽部」の企画・プロデューサー。映画.comコラム「どうなってるの?中国映画市場」連載中。2020年から上海国際映画祭・プログラマーに就任、日本映画の選考を担当。