映画上映を行う人々が集まり、情報共有やディスカッションを行う「全国コミュニティシネマ会議」が川崎で開催された。
ミニシアターの苦境が叫ばれるなか、政府による映画産業振興策が立ち上がりクリエイター支援が重視される中で、クリエイターが成長する場としての映画館の重要性が議論された。
全国コミュニティシネマ会議は、一般社団法人コミュニティシネマセンターによって毎年開催されている上映関係者のためのカンファレンスだ。全国で上映活動を行う人々、映画館主や公共ホール運営者やシネクラブや自主上映団体などが集まり、研究報告と最新の情報を共有し、課題を議論しあう場として1996年から続いている。
今年は、「"学びの場"としての映画館」というテーマで、川崎市アートセンターの映画教育プログラムの紹介や、「フランスの映画教育プログラムと若年層観客の育成・開拓」をテーマに、映像教育プログラムをコーディネートする機関「アルシペル・デ・ルシオール」のナデージュ・ルレ氏が、同国における民間映画館と教育機関の連携による映画教育の実践について講演してくれた。
そして、「映画館が「クリエイター」を育成する」と称して、興行関係者、映画監督、配信会社、文化庁と経済産業省の代表者が、映画館の重要性と劇場支援のあり方について議論をした。
興行関係者、クリエイター、省庁関係者が映画館支援について議論
9月19日の午後、第二部として開催されたディスカッション「映画館が『クリエイター』を育成する」では、映画館やコミュニティシネマが多彩な作品の鑑賞機会を提供することによって、クリエイターの育成の場として機能しており、さらには鑑賞者や上映者をも育成する場となっていくことを確認する機会となった。
登壇者は、以下の通り。
佐々木伸一（全国興行生活衛生同業組合連合会（全興連）会長、佐々木興業株式会社会長）
志尾睦子（一般社団法人コミュニティシネマセンター代表理事、NPO法人たかさきコミュニティシネマ代表）
岨手由貴子（映画監督、action4cinema）
林健太郎（株式会社U-NEXT映画部）
青木俊介（経済産業省文化創造産業課総括係長）
田村順也（文化庁参事官（芸術文化担当）付芸術文化調査官）
司会のとちぎあきら氏から、地域に根差したミニシアターやコミュニティシネマは、これまで数多くの多様な映画を上映してきたが、継続性に課題があると指摘。公的な支援の必要性が叫ばれているという。
9月に第1回の会合が開かれた「映画戦略企画委員会」は、これまで各省庁でバラバラだった映画支援の統合を目指し、司令塔機能を強化していく目的で設置された。この第1回会議で委員会のメンバーである是枝裕和監督が、映像教育の場としてミニシアターの活用を提案、図書館のように各自治体にミニシアターができ、映像学芸員を配置するアイデアを披露した。
全興連の佐々木会長は、今年クラウドファンディングのMotionGalleryと協力して「♯ミニシアターへ行こう」キャンペーンを開始。佐々木興行でも、4スクリーンのサツゲキを札幌で運営しており、シネコンとは異なるミニシアターの営業の大変さも実感している人だ。
動画配信サービスを運営するU-NEXTは、映画館と共存する配信サービスを目指して運営している。毎月付与されるポイントを映画館のチケットに交換できるサービスを展開しており、かつての名作映画を豊富に取り揃えて映画ファンの拡大を目指している。U-NEXTの目標は「レンタルビデオの最終進化系」だそうだが、課金制のTVODと見放題のSVODを両方揃えており、ウィンドウを設けているのも特徴だ。
Netflixなどのグローバル・プラットフォームはいきなり見放題のSVODで独占配信するため、「映画は無料で見られるもの」と人々が思ってしまう、そうならないようにU-NEXTは一定期間のTVODで配信する期間を設けるようにしているのだという。近年は、良質な作品を揃えるために、映画製作への出資も活発に行っている。
岨手由貴子監督は、action4cinemaの活動で求めてきた日本版CNCの共助の仕組みを説明。興行収入や配信収入からトップオフで徴収し、支援基金を作り、未来の観客の育成や劇場支援に宛てるというものだが、財源の問題で前に進めていない現状だという。また、自身が金沢在住であるため、地元の子ども映画教室なども利用していることで、映画が子育てのツールとしても役立つと実感しているとのこと。
コミュニティシネマセンター代表理事の志尾睦子氏は、群馬県高崎氏の映画館シネマテークたかさきも運営している。志尾氏はここは一貫して作家を育成する場になってきたと自負しているという。
