『帰ってきた あぶない刑事』監督&カメラマンが映像業界を目指す学生の質問に回答

『帰ってきた あぶない刑事』監督の原廣利氏、カメラマンの佐藤匡氏が出身校である日本大学芸術学部でティーチインを実施。歴史ある「あぶない刑事」シリーズをフレッシュな制作陣で製作した本作について、学生から多くの質問が飛び交った。

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『帰ってきた あぶない刑事』監督&カメラマンが映像業界を目指す学生の質問に回答
『帰ってきた あぶない刑事』監督&カメラマンが映像業界を目指す学生の質問に回答
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  • 原廣利(監督)、佐藤匡(カメラマン)
  • 佐藤匡(カメラマン)
  • 原廣利(監督)

5月24日(金)より公開される映画『帰ってきた あぶない刑事』のティーチイン付き特別試写会が、5月15日(水)日本大学芸術学部江古田キャンパスにて行われ、監督の原廣利氏、カメラマンの佐藤匡氏が登壇した。

1986年のテレビドラマ放映開始から38年。あまりの人気ぶりに数多くの社会現象を巻き起こし、ドラマ&映画史上において伝説を作った「あぶない刑事」シリーズ。軽妙なトークと激しいアクション、他の刑事ドラマとは一線を画すオリジナルな世界観で数多くのファンを魅了し愛され続けてきた“あぶ刑事”が、2016年の映画『さらば あぶない刑事』から8年の時を経て蘇る。

ティーチイン付き特別試写会は、齊藤裕人教授による「映画鑑賞批評Ⅰ」という講義の一環で実施された。まずは上映前に齊藤教授から「あぶない刑事」の“生みの親”でもある黒澤満氏についての話や、「あぶない刑事」や日本の刑事・警察ドラマの遍歴についても簡単に解説が行われた。

新しい『あぶ刑事』で意識したこと

本編の上映後に行われたティーチインでは、原監督と佐藤氏が在学生からの質問に応えた。一人目の学生からは、監督に対し「『あぶない刑事』は30年以上続いている歴史ある作品だからこそ責任も大きかったと思いますが、最新作を制作するにあたり意識したことは?」といった質問が。監督は自身とあぶ刑事の関係について、「僕の父(原隆仁氏)がドラマシリーズの監督を務めていたこともあって、その関係で多少観たことがあった程度」と説明をしながら、「“新しい『あぶ刑事』を見せてほしい”とオファーを受けたので、もちろん今までの『あぶ刑事』ならではのお約束とか、舘さん恭兵さんお二人へのリスペクトは残しつつ、僕らだからこそできることをカメラマンの佐藤と考えて作り上げていきました」と明かした。

原廣利氏(監督)

一方、カメラマンを務めた佐藤氏に寄せられたのは、「ダイナミックで迫力ある映像が魅力的でしたが、撮影する際に意識したことは?」という質問。「“令和の新しい『あぶ刑事』を作ってほしい”という製作陣の意向もあったので、今までの『あぶ刑事』ではやっていないシネスコで撮ってみようとか、車を沈めてみようとか、新しいアイデアをどんどん加えながら進めていきました」と振り返った。

さらにこれまで錚々たるスタッフが参加してきた『あぶない刑事』シリーズに携わるにあたり、肩に力が入りすぎてしまったことで、「当初は真面目になりすぎてしまっていたんですよね。この作品の先にはコメディがあるはずなのに、カッコ良さを追いかけすぎなんじゃないかと」と振り返り、そういった自身の実体験を交えながらも、まずは「真面目になりすぎずに一歩引いて考えてみたり、新しいことにトライしてみることも大事」と学生に語りかけた。

佐藤匡氏(カメラマン)

撮影が難しかったシーンは?

続いて飛び出したのは、「本作の中で撮影が難しかったシーンは?」という質問。まず監督が挙げたのは、タカ&ユージらが激しい銃撃戦を繰り広げるカプリアイランドでのシーン。カプリアイランドの撮影は栃木にある体育館を活用し、中にセットを立てて撮影を行っていたという。監督は「僕らもアクションの撮影に関してはまだまだ知らないことも多くて。さらに舘さんと柴田さんお二人の意見が役を動かすことも多かったので、僕らがやりたいことと、俳優部がやりたいことをすり合わせていく駆け引きや、ディスカッションは大変でしたね。だからこそ、自分としては良いシーンになったなと感じています」と話した。

対して佐藤氏は車を海に落とすシーンを挙げた。「実はあのシーンの撮影の時、(車を)海に落とす前に天気が曇ってしまって。流石に晴れた時に撮りたいとなんとか粘っていたんですが、スタントの人はずっと緊張しながらスタンバイされているので、このまま緊張状態が続くと失敗する可能性もあるなと思い、休憩を入れたり……」と当時の状況を説明。そのような予期せぬ事態に直面する場面もあったというが、「一回しか撮影ができないので僕も本当に緊張していたのですが、なんとか良い画を撮ることができて。現場からは自然と拍手も湧き起こっていましたね。頑張って撮影した甲斐があったなと思います」と笑顔を見せた。

そして質問はキャストに関するものに。「出演者の方々とのコミュニケーションで印象的だったことは?」という質問に、監督は「撮影が始まった三日目くらいの時に、恭兵さんから“現場や芝居の空気を大切にしながら撮ってほしい”というお話をしていただいたことがあって。それまで何度も同じお芝居を撮らせてもらうこともあったのですが、佐藤と“お芝居を優先にしていこう”という話をして、俳優さんたちのスタイルに合わせながら撮影のスタイルも考えていきました」と答えた。佐藤氏も頷きながら、「そういうコミュニケーションをとってもらえた真意をまず考えることが大事だなと。自分たちの意見を突き通すのではなく、“この組なりの良い形”を模索しながら進めていきましたね。結果的にも良い方向に誘ってもらえた気がします」と語った。

撮影当初は緊張!

さらに「真面目になりすぎないように新しいことに挑戦していたという話がありましたが、撮影途中から完成に至るまでどのようなところが変化していきましたか?」という質問には、撮影当初は「ものすごく真面目に考えてしまってガチガチに緊張していた」と話す監督。「いざ現場に入ってお二人の姿を見ているだけで、“タカ&ユージだ!”と。カメラを構えたら、これで『あぶ刑事』になるなと感じた時に肩の力も抜けて、舘さんや恭兵さんからも“こうしたいんだよね”と次第に意見をいただけるようにもなって…」と当時の様子を振り返りながら、「撮影中もどんどん変わって行きましたが、クランクアップ後、編集している時にも遊びを取り入れるようにしました。編集マンが繋いだものを見て、僕が“もう少しこうしたい”というのを伝えて、最初の方から組み立てを少し崩していくような特殊なやり方で進めて行きました」と明かした。編集の際に監督は佐藤氏に対しても意見を聞いていたそうで、佐藤氏も「編集の時に僕も聞かれましたね。“これ面白い?”って。そういうのも良いと思います。普通の現場だとできないようなコミュニケーションを取り入れられると良いですよね。そういう意味では、仲間はたくさんいると良いと思います」と実体験を交えながら学生たちに言葉を送った。

最後には両者から学生たちに向けて、「今はたくさん遊んでいろんな経験をすれば、それが画で表現できるようになると思います。僕もずっと監督とそうやってきて、今があります。もっと面白い作品ができるように頑張るので、みんなも頑張ってください」(佐藤)、「今日は『あぶない刑事』を同級生と一緒に作ることができたというので、みんなの刺激になればいいなという想いで今回このような場を設けさせていただきました。今だからこそ経験できることが絶対あると思います。近くにいる仲間を大切にしているとこういうことができるよ、というのが僕が今日伝えたかったことです。周りのいる人たちを大切にしながら、学校生活を楽しんでもらえたら」(監督)とメッセージが送られ、授業は締めくくられた。

『帰ってきた あぶない刑事』

公開日:2024年5月24日(金)
監督:原廣利
脚本:大川俊道、岡芳郎
製作プロダクション:セントラル・アーツ
配給:東映
キャスト:
舘ひろし 浅野温子 仲村トオル 柴田恭兵
土屋太鳳
西野七瀬 早乙女太一 深水元基
ベンガル 長谷部香苗 鈴木康介 小越勇輝/杉本哲太
岸谷五朗/吉瀬美智子

《Branc編集部》

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