【韓国SVOD事情:前編】「TVING」の日本進出に期待。日本での韓ドラ視聴に革命が起こる⁉

韓国最大級の動画配信サービス「TVING」が年内の日本上陸を計画中と発表されている。国内韓ドラファンの期待値も高い本サービスに注目し、韓国の動画配信サービス事情を深堀りする。

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提供:TVING CJ NEWSROOMより
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世界市場を目指す、韓国最大級の動画配信サービス「TVING」

Netflixで放送された「イカゲーム」や「梨泰院クラス」「愛の不時着」の大ヒットをきっかけに、世界中に大きなファンを獲得した韓国のエンターテインメントコンテンツ。その後も多額の製作費をかけたハイクオリティな傑作が次々と生まれ、グローバル化が加速している。

コンテンツだけでなく、韓国の“国産”動画配信サービスも海外展開に積極的だ。2020年に日本で配信サービスを開始した「WATCHA」に続き、CJグループ系列の動画配信サービス「TVING」も日本と台湾、アメリカへの進出を計画していることが2021年10月開催の<TVING CONNECT 2021>で発表された。具体的なスケジュールや海外進出の形態などはまだ発表されていないが、メッセンジャーアプリ「LINE」との提携など、現地のニーズに合わせた展開を準備中だという。

TVINGの筆頭株主であるCJ ENMの代表、カン・ホソン氏は「TVINGをグローバルNo.1のK(韓国)コンテンツプラットフォームに成長させる」と意気込みを語り、LINE Plusのイ・ウンジョン代表は「LINEの海外事業展開のノウハウとTVINGのコンテンツ制作力を融合すれば、アジアを代表するOTTプラットフォームが誕生するだろう」と発表した。

TVINGオリジナルコンテンツに期待

TVINGの主な株主は、前出のCJ ENM(56.94%)、ドラマ制作会社大手のSLL(旧JTBCスタジオ、14.85%)、NAVER(12.42%)となっている。

スタジオドラゴン×SLL×NAVERとの提携でオリジナルコンテンツを制作

筆頭株主のCJ ENMは是枝裕和監督の映画『ベイビー・ブローカー』やアカデミー賞4部門受賞作『パラサイト 半地下の家族』などの製作で知られ、傘下のドラマ制作会社「スタジオドラゴン」は、「愛の不時着」「トッケビ」「二十五、二十一」をはじめ、数々のヒット作を手がけた実績を持つ。一方、今年4月にJTBCスタジオから社名変更したSLLは「梨泰院クラス」「今、私たちの学校は…」「39歳」「私の解放日誌」などを生んだ制作会社だ。

今年5月、スタジオドラゴンとCJ ENMは、LINEマンガなどを展開する「LINE Digital Frontier」と提携し、合弁法人「スタジオドラゴンジャパン(仮)」を設立すると発表。SLLも日本支社の設立を計画しているという。韓国を代表するドラマスタジオ2社と、LINEの親会社であるNAVERとの協業によって、今後ますます完成度の高いコンテンツが誕生しそうだ。LINEマンガが保有するコンテンツのドラマ化、日本オリジナルドラマの制作などにも期待が寄せられている。

↑「梨泰院クラス」の日本版リメイク「六本木クラス」は、TVINGで独占配信されている(「TVING」アプリより)

アメリカの「Paramount +」との提携でさらにパワーアップ。

「Yonder」予告編
アメリカの「Paramount+」は、アジア初の進出国を韓国に選び、TVINGとパートナーシップを結んだ。両社は今後2年間に7本のオリジナルコンテンツを共同製作する。その記念すべき第一作目となるのが、シン・ハギュンとハン・ジミンが共演する『Yonder』。映画『王の男』『空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~』『茲山魚譜 チャサンオボ』などの作品で知られるイ・ジュンイク監督のOTT進出作であり、初めて手がけるドラマとしても注目が集まっている。2022年下半期、TVINGおよびParamount+で配信予定。

バラエティ番組も充実

TVINGはバラエティ番組の豊富さにも定評がある。オリジナルコンテンツとして最初に登場した作品は、2021年の推理バラエティ「女子高推理部」で、その後もさまざまな番組が制作されている。

今年いちばんの注目作は、9月9日に放送がスタートした「青春MT~Re:メンバーアゲイン~」で、キム・ソンユンPDの演出作に出演した俳優たち15名が一堂に会して合宿生活を送るという前代未聞の豪華企画だ。「梨泰院クラス」からはパク・ソジュン、アン・ボヒョン、クォン・ナラ、リュ・ギョンス、イ・ジュヨン、「雲が描いた月明り」からはパク・ボゴム、キム・ユジョン、ジニョン、チェ・スビン、クァク・ドンヨン、「アンナラスマナラ -魔法の旋律-」からはチ・チャンウク、チェ・ソンウン、ファン・イニョプ、チ・ヘウォン、キム・ボユンと3作品から5名ずつが参加し、夢の競演を果たしている。

「女子高推理部」は日本のMnetで放送され、「青春MT~Re:メンバーアゲイン~」はAmazonプライム・ビデオで同日に配信スタートしたが、この他にも歌手イ・ヒョリのリアルライフに密着した「ソウルチェックイン」、別れたカップルが共同生活をする「乗換恋愛」シリーズなど、日本未上陸の人気作が続々と控えている。TVINGの日本進出は、レッドオーシャンの動画配信市場にどんな影響を及ぼすだろうか。今後の展開が楽しみだ。

↑日本ではNetflixのみで配信中のドラマ「シスターズ」は、韓国では土・日21:10~からケーブルテレビチャンネルtvNで放送され、NetflixとTVING、seeznでも配信されている。さらにNaverシリーズonでは1話2,000ウォンで見逃した回のみ視聴も可能。
《藤田麗子》

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藤田麗子

フリーライター&韓国語翻訳者 藤田麗子

訳書に『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ著/ダイヤモンド社)、『あたしだけ何も起こらない "その年"になったあなたに捧げる日常共感書』(ハン・ソルヒ著/キネマ旬報社)、『こころの葛藤はすべて私の味方だ。 「本当の自分」を見つけて癒すフロイトの教え』 (チョン・ドオン著/ダイヤモンド社)など。

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