映画館の改修・近代化投資を後押しする税額控除法案「SCREEN Act」が、米下院に提出された。正式名称はSupporting Cinema Renewal, Enhancement, and Enriching Neighborhoods Act。5年以上営業している既存映画館を対象に、座席、映写、音響、空調、アクセシビリティ改善といった投資額の30%を連邦税額控除するという内容だ(法案番号H.R.9938)。
大作のヒットが続き、米国映画市場は回復基調に乗ったように見える。だが米国の独立系興行主たちは、「観客は戻りつつあるが劇場の大規模改修に必要な資本は戻っていない」と訴える。
好調な夏興行の裏で、回復はまだ途上にある
米国映画市場は、パンデミックの痛手からいまだ回復しきっていない。2023年のWGA・SAG-AFTRAによるダブルストライキは、公開カレンダーを大きく揺るがした。
パンデミック前水準への回復時期予測は後ろにずれ込んだ。世界興行収入がコロナ前を上回る可能性は当初予測より1年遅れの2026年とされ、しかも入場者数の伸びは限定的と見られていた。
直近では2026年の世界興収を350億ドル規模・前年比5%成長とする予測が出ているが、2025年通年はコロナ前比でマイナスにとどまった。
映画館経営の脆弱さは、大手でも変わらない。AMCシアターズの2024年第2四半期収益は、初夏公開作品の不振により前年同期比23.5%減となった。固定費が重い興行ビジネスでは、四半期ごとのラインナップ次第で収益が大きく振れる。
北米興行界もこの苦境に対応するため、過去1年で15億ドル超を劇場刷新と体験価値向上に投じている。しかし、単館や地方館には一件で数年分の利益に相当する負担となる。SCREEN Actはそうした中小の独立系映画館も補助する内容だ。
既存館の改修に30%控除を提案
同法案は2026年7月23日、クローディア・テニー議員(共和党・ニューヨーク州)、マイク・キャリー議員(共和党・オハイオ州)、デイビッド・カストフ議員(共和党・テネシー州)とともに提出された。トム・スオッツィ議員(民主党・ニューヨーク州)も共同提出者に名を連ね、超党派法案となっている。現時点では提出済み・審議段階にとどまり、成立はしていない(参照)。
対象となる映画館は、公衆に開かれた上映、または家族・知人の範囲を超えた観客への上映を主目的とする施設と定義され、ドライブインも含まれる。
設計上の特徴は三点に整理できる。対象を5年以上営業している既存館のインフラ更新にインセンティブを絞っている点。次に2030年末で終了する時限措置であり、恒久減税ではない点。そして控除が譲渡可能とされている点だ。

赤字や課税所得が小さく控除を使い切れない事業者でも、クレジットを売却して資金化する余地が生まれるため、独立系・地域館にも使いやすいような仕組みだ。ただし上限額は1館あたり25万~50万ドルで、大型改修の全額を賄うものではない。あくまで自己投資の“最後のひと押し”という水準だ。







