ユニクロ「PEACE FOR ALL × 難民映画基金」特別上映会を開催。映画は難民へのまなざしをどう変えられるのか

ユニクロのチャリティプロジェクト「PEACE FOR ALL」に、ケイト・ブランシェットが主導する「難民映画基金(Displacement Film Fund)」が新たに参加。特別上映会では、ファーストリテイリングの柳井康治氏、東宝の松岡宏泰氏、ロッテルダム国際映画祭のクレア・スチュワート氏、東京国際映画祭の市山尚三氏、俳優・モデル・映画監督の岡本多緒氏が登壇し、映画を通じた難民支援の可能性を語った。

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ユニクロ「PEACE FOR ALL × 難民映画基金」特別上映会を開催。映画は難民へのまなざしをどう変えられるのか
ユニクロ「PEACE FOR ALL × 難民映画基金」特別上映会を開催。映画は難民へのまなざしをどう変えられるのか
  • ユニクロ「PEACE FOR ALL × 難民映画基金」特別上映会を開催。映画は難民へのまなざしをどう変えられるのか
  • 宝株式会社代表取締役社長 松岡宏泰氏
  • ロッテルダム国際映画祭 マネージング・ディレクター ク、レア・スチュワート氏
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  • 東京国際映画祭プログラミング・ディレクター 、市山尚三氏
  • 岡本多緒氏
  • 岡本多緒氏
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6月18日、「世界難民の日」を前に、ユニクロによる「PEACE FOR ALL × 難民映画基金 ショートフィルム特別上映会」が開催された。

「PEACE FOR ALL」は、ユニクロが2022年6月より展開しているチャリティTシャツプロジェクト。「世界の平和を心から願い、アクションする」という思いに賛同した著名人や団体などが、ボランティアでTシャツのデザインを手がけ、その利益の全額が、貧困、差別、暴力、紛争、戦争などの影響を受けた人々を支援する団体に寄付される。

2026年3月末時点で、累計販売枚数は1,000万枚を超え、寄付金額は30億円に達した。今回、新たなコラボレーターとして、難民映画基金(Displacement Film Fund、以下DFF)が参加。DFFの支援を受けて制作された短編映画5作品のうち、2作品が特別上映された。

登壇したのは、株式会社ファーストリテイリング取締役 グループ上席執行役員の柳井康治氏、東宝株式会社代表取締役社長の松岡宏泰氏、ロッテルダム国際映画祭マネージング・ディレクターのクレア・スチュワート氏、東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの市山尚三氏、俳優・モデル・映画監督の岡本多緒氏。MCは映画パーソナリティの伊藤さとり氏が務めた。


ユニクロが20年以上続けてきた難民支援

冒頭、主催者を代表して登壇した柳井康治氏は、ファーストリテイリンググループがこれまで取り組んできた難民支援について説明した。

株式会社ファーストリテイリング 取締役グループ上席執行役員 柳井康治氏

同社の難民支援は2001年、NPO団体を通じてアフガニスタン難民に越冬用のアウターを届けたことから始まった。その後、2006年にUNHCRと初めてパートナーシップを結び、2011年には「グローバルパートナーシップ」へと発展。より踏み込んだ支援活動を進めてきた。

柳井氏は、難民支援には大きく4つの形があると語る。緊急時に必要な支援を届ける「緊急支援」、顧客から回収した服を必要とする人々に届ける「衣料支援」、教育や就労機会を提供する「自立支援」、そして店舗などで働く機会を提供する「雇用支援」である。

ファーストリテイリンググループによるUNHCRへの資金協力は累計89億円を超え、衣料支援では、81の国と地域の難民やホームレス、厳しい状況に置かれた子どもたちなどに、これまで合計6,300万点以上の服を届けてきたという。

また、2022年には、バングラデシュのコックスバザール難民キャンプで、ロヒンギャ難民の女性たちを対象にした自立支援プロジェクトを開始。有償ボランティアとして手当を支払いながら、縫製技術を身につけるトレーニングを提供している。

雇用支援については、日本国内で約60名の難民を雇用していると説明した。柳井氏は「難民になられる方の中には、当然ながら我々と同じように普通の生活をされていた方がほとんどです。そうした方々が再び活躍される場所を提供することは非常に重要なのではないか」と語った。

PEACE FOR ALLに難民映画基金が参加

続いて柳井氏は、「PEACE FOR ALL」の新たな展開について紹介した。

6月19日から発売される新柄には、映画監督のソフィア・コッポラ、俳優のキー・ホイ・クァン、そしてDFFが新たに参加。さらに、すでにコラボレーターとして名を連ねる「PEANUTS」とディック・ブルーナによる新柄も登場し、参加コラボレーターは総勢54組となった。

DFFのTシャツでは、同基金が支援した5人の映画監督たちが、それぞれ大切にしている言葉を提供したという。柳井氏は、「難民の人たちが本当に日々求めているような、『ホーム』や『リスペクト』、『ディグニティ』といった言葉が、Tシャツの中に落とし込まれています」と説明した。

東宝が「賛同しない理由がない」と参加

今回の特別上映会は、UNHCRと東宝株式会社の協力のもと実施された。

登壇した東宝代表取締役社長の松岡宏泰氏は、参加を決めた理由について「賛同しない理由がない」と語った。東宝社内でも、若手社員を中心に「会社として社会に対して何ができるのか」という議論が深まっていたという。そのタイミングで声をかけられたことが、参加の大きなきっかけになった。

エンターテインメントと平和の関係について問われると、松岡氏はコロナ禍で「不要不急」と言われた経験を振り返った。その中で、映画や演劇、アニメが観客に数時間の非日常や感動を届けることができるという思いを改めて強くしたという。

宝株式会社代表取締役社長 松岡宏泰氏

ケイト・ブランシェットが主導する難民映画基金とは

トークセッションでは、ロッテルダム国際映画祭マネージング・ディレクターのクレア・スチュワート氏が、基金の成り立ちを説明した。

ロッテルダム国際映画祭 マネージング・ディレクター ク、レア・スチュワート氏

DFFは、UNHCR親善大使のケイト・ブランシェット氏が2025年の第54回ロッテルダム国際映画祭で発表した基金である。マスターマインド、ユニクロ、ドローム・エン・ダード、タマーファミリー財団、アマホロ連合が創設パートナーとして名を連ねる。

ロッテルダム国際映画祭は、30年にわたって「ヒューバート・バルス基金」を運営してきた。映画制作のインフラが限られている国や、政治的な困難を抱える地域の映画作家を支援してきた経験をもとに、DFFのマネジメントパートナーを務めている。

DFFが支援するのは、避難や移動を余儀なくされた経験を持つ映画作家、あるいはディスプレイスメントをテーマに継続的に作品を作ってきた映画作家たちだ。

選ばれたのは、イラン出身のモハマド・ラスロフ、アフガニスタン出身のシャフルバヌ・サダト、ソマリア出身のモ・ハラウェ、ウクライナ出身のマリナ・エル・ゴルバチ、シリア出身のハサン・カッタンの5名。彼らの作品は、今年1月のロッテルダム国際映画祭で世界初上映され、大きな反響を呼んだという。


柳井氏は、ユニクロがDFFに参加する意義について、長年の難民支援を通じて抱いてきた問題意識を語った。

ファーストリテイリングが難民支援を始めた当時、世界の難民の数は約4,000万人だった。しかし現在、その数は1億人を超え、日本の人口に近い規模になっている。支援を続けても状況がなかなか改善しないこと、そもそもその現実が十分に知られていないことに、柳井氏は危機感を抱いている。

「統計上で『難民の方が1億人を超えました』と言われることとは違う形で、映画や映像は皆さんの心に届くのではないかと思いました」

映画を通じて、その人たちの生活や状況を目にすることで、想像力が働く。その先に支援の気持ちが芽生えるのではないか。柳井氏は、長年難民支援に取り組んできたユニクロだからこそ、映画という手段に関わる意味があると語った。

東京国際映画祭がDFF作品を上映する理由

DFFの5作品は、秋に開催される東京国際映画祭でジャパンプレミア上映される予定だ。

東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの市山尚三氏は、同映画祭は毎年特定のテーマを設けているわけではないとした上で、それでも毎年、難民や政治的に困難な状況に置かれた国々を扱う作品が必ずあると語った。

市山氏がDFF作品に強く惹かれた理由は、それらが単にテーマ性の強い作品にとどまっていない点にある。

「“テーマ先行主義”ではなく、映画としても素晴らしい。才能ある監督を選び、その監督たちに委嘱している」

東京国際映画祭プログラミング・ディレクター 、市山尚三氏

その上で市山氏は、DFFの支援モデルの特徴として、完成した映画の著作権が委員会などではなく、監督本人に帰属する点を高く評価した。監督自身の裁量で公開や映画祭出品を進めることができることは、今後の活動において大きな意味を持つという。

岡本多緒が語る、物語がエンパシーを広げる力

トーク後半には、先月のカンヌ国際映画祭で日本人初となる最優秀女優賞を共同受賞した岡本多緒氏が登壇した。

多忙な中で今回のイベントに参加した理由について、岡本氏は、自身が映画作りに携わる根本的な思いとDFFの活動が重なったからだと語った。

「一人一人のストーリーがより多くの人々に伝わることによって、エンパシーが広がり、それがいい世界、優しい世界へとつながっていくんじゃないかなと信じています」

岡本多緒氏

難民の人々のストーリーがより多くの人に届くことは、とても大切だと岡本氏は語る。ユニクロやDFFがそうした活動を支援していることを知り、自ら登壇を希望したという。

岡本氏自身も、短編映画『マイ・スウィート・パーラ』を監督している。同作は、チベット系移民の家族を描いた作品だ。「パーラ」とはチベット語で「お父さん」を意味する。岡本氏難民としての背景を持つ家族のエピソードや、自身の監督作『マイ・スウィート・パーラ』の制作に至った思いを語り、DFFの活動に共感を示した。

映画を通じて、難民を“物語る主体”として捉える

DFF作品が映画祭で上映される意義について、スチュワート氏は、作品を「芸術と文化の文脈」に置くことが重要だと語った。

それは、監督たちを一人のアーティスト、クリエイターとして尊重することであり、作品を映画そのものとして評価することでもある。同時に、ユニクロのチャンネルを通じて、将来的により広い一般の観客が作品に触れられる可能性にも期待を寄せた。

DFFは、難民を“支援される存在”としてだけでなく、物語を語る主体として捉える試みである。東宝の協力、東京国際映画祭での上映、そしてユニクロの「PEACE FOR ALL」を通じた支援は、その物語をより広い観客へ届けるための回路となる。

統計やニュースだけでは届きにくい現実を、一人ひとりの人生として伝えること。映画が持つその力を、難民支援の新たな形へとつなげようとする試みが、今回の特別上映会で示された。

《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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