2026年5月15日、カンヌ国際映画祭のマーケット部門「マルシェ・ドゥ・フィルム」で、「16th Annual International Film Finance Forum I Presented by Winston Baker」が幕を開けた。エンターテインメント系カンファレンスの制作で知られるWinston Bakerとマルシェ・ドゥ・フィルムの共催で、今年で16年目。映画ファイナンスの「いま」を定点観測できる場として、カンヌの必見イベントに数えられている。
本稿で振り返るのは、冒頭のウェルカム・アドレスと、続くオープニングパネル「State of the Industry; State of Finance(産業の現在、ファイナンスの現在)」だ。モデレーターはFifth Third BankのKayla Bowman氏(メディア&エンターテインメント部門エグゼクティブ・ディレクター)。パネリストはXYZ Films COOのMaxime Cottray氏、Passage PicturesプレジデントのUri Singer氏、Ashland Hill Media Finance投資担当SVPのJuliana Lubin氏、ファン所有型スタジオLegion M Entertainment共同創設者兼CEOのPaul Scanlan氏。銀行、スタジオ、プロデューサー、ファイナンサー、コミュニティ型企業を横断する顔ぶれが揃った。
リヴキンMPA会長が示した「パートナーシップ」の経済学
主催者Winston BakerのCEO、Amy Bakerの開会挨拶に続いて登壇したのは、MPA(Motion Picture Association)会長兼CEOのCharles Rivkin氏。元駐フランス・モナコ米国大使で、ジム・ヘンソン・カンパニーのCEOも務めた人物だ。冒頭、彼はパートナーシップの重要性を語った。
その裏付けとして、MPA加盟スタジオが欧州で映画を1本作るごとに、平均およそ2,900万ユーロが現地市場に落ち、1,100人を超える地元雇用と最大1,100万ユーロの賃金が生まれると説明。2022年から2024年には、加盟各社が欧州主要8市場で1,000本以上のローカル言語の映画・シリーズに投資した。文化・クリエイティブ産業は1,500万人を雇用するEU第3位の雇用主で、EUのGDPの4%超。通信や製薬、自動車をも上回る規模だという。

この成長を続けるための条件としてリヴキンが挙げたのは、リスクテイクに報いる規制、投資を呼び込む柔軟な法制度、強固な著作権保護、そして海賊版対策だ。シカゴの高校生だった頃はフランス映画に触れる手段がほとんどなかったという自身の体験に触れ、「いま物語が大陸を越えてワンクリックで届くのは、パートナーシップのおかげだ」と結んだ。
映画を作ってから観客を探すのではなく、観客を見つけてから映画を作る
パネルディスカッションでは映画産業の最前線を知る面々が登壇。XYZ FilmsのCottray氏は、独立系映画を取り巻く環境を「非常に困難な状況」と言い、問題の本質をこう言い切った。「映画はこれだけのコストがかかるのに、価値はこれだけしかない。この機能不全の不均衡こそが出発点だ」。
撮影インセンティブでリスクを抑えるといった従来の処方箋の先に必要なのは、「馬鹿げて聞こえるかもしれないが、人々が本当に観たいものを作ること」だという。「この業界は長らく『映画を作る技術』で生き延びてきた。良い映画、観たい映画を作る技術ではなくだ」。
呼応したのが、「世界初のファン所有型エンターテインメント企業」を掲げるLegion MのScanlan氏だ。10年前に実験として始めた同社の発想は、順序の逆転にある。先に熱量あるファンコミュニティを束ね、彼らの声を聞いてから企画を探す。「映画を作ってから観客を探すのではなく、観客を見つけてから映画を作る。その方がずっと理にかなっている」と語る。










