「Netflixの下請け」危機に陥る韓国コンテンツ産業。打開策は日本の「製作委員会」方式?コンテンツ振興院が提言

世界を席巻する韓国コンテンツ産業だが、巨大OTTによるIP独占で「下請け化」の危機に直面している。打開策として提言されたのは、なんと日本発祥の「製作委員会方式」の導入だった。自国の強みで進化させる「韓国型製作委員会」の全貌と戦略に迫る。

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出典:KOCCA
出典:KOCCA

グローバル市場で目覚ましい飛躍を遂げている韓国コンテンツ産業だが、グローバルOTTプラットフォームに権利が流出するなど、華やかな成功の裏側で深刻な「持続可能性の危機」が囁かれている。

韓国コンテンツ振興院(KOCCA)は、2026年2月25日、「K-コンテンツ産業発展のための新戦略:韓国型製作委員会」と題するレポートを発行した。同レポートは、韓国コンテンツ産業が直面する課題に対して、日本の製作委員会を参考にした「韓国型製作委員会」の導入を提言している。


なぜ「韓国型製作委員会」を提唱するのか、その背景

OTTの下請け転落の危機

『イカゲーム』に代表されるように、韓国の映像作品は、NetflixなどのグローバルOTTプラットフォームを通じて、世界的な人気を獲得している。しかし、これらのプラットフォームは、制作費の全額に一定の利益(15%前後など)を上乗せして支払う代わりに、IP(知的財産権)を独占する「買切(Buy-out)」方式による契約を求める。これが、業界のスタンダードとして定着しているが、この構造下では、作品が世界的な大ヒットを記録しても、国内制作会社には追加のライセンス収益や付加事業の権利が残らない。

IPを蓄積することなく単なる制作作業のみを請け負う構図が固定化すれば、長期的には韓国の制作会社がグローバルプラットフォームの「単なる下請け企業」に転落してしまうという深刻な懸念が高まっているとレポートは警告する。

広告事業低迷で放送局が苦境

さらに、従来、制作費の大きなパイを担ってきた放送局が苦境に陥っている。主な収益源である広告売上が2兆7,172億ウォンから2兆2,964億ウォンへと激減しており、伝統的な放送局主導の投資が急減している状態にある。

視聴者の目が肥え、グローバルスタンダードなクオリティでなくては競争力を確保できないため、コンテンツの制作費も高騰し続ける中、縮小した国内市場の収益だけでは到底制作費を回収できない赤字構造が深刻化していると指摘。内需だけでは立ち行かないため、ますます海外の巨大OTTへの依存度が高まるという「悪循環」が生じているとレポートは指摘している。

IPビジネスへの展開が遅れている

IPビジネスへの転換の遅れも指摘されている。韓国コンテンツ産業の総売上は162兆8,000億ウォンに達しているものの、その中で実際にIPを活用して創出された売上は47兆7,000億ウォン(全体の29.3%)に過ぎないのが現状だ。

これは、韓国コンテンツ産業が依然として1次的な「制作および流通」の売上に極度に依存しており、高付加価値領域であるIP関連産業への拡張は初期段階に留まっていることを示しており、長期的かつ多角的なIP収益化への移行が急務であることを示唆している。


《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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