【ANIAFF】コンペ選出監督が会見。個人制作から13年がかりの大作まで幅広い作品が揃う

愛知県名古屋市のミッドランドスクエアシネマにて開催中の「あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF)」において、国際コンペティション部門選出監督による記者会見が行われた。

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左からフェリックス・デフュール=ラペリエール監督、タニア・アナヤ監督、鈴木竜也監督
左からフェリックス・デフュール=ラペリエール監督、タニア・アナヤ監督、鈴木竜也監督
  • 左からフェリックス・デフュール=ラペリエール監督、タニア・アナヤ監督、鈴木竜也監督
  • 鈴木竜也監督
  • タニア・アナヤ監督
  • フェリックス・デフュール=ラペリエール監督、

2025年12月15日、愛知県名古屋市のミッドランドスクエアシネマにて開催中の「あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF)」において、国際コンペティション部門選出監督による記者会見が行われた。

登壇者は、『無名の人生』の鈴木竜也監督(日本)、『ニムエンダジュ』のタニア・アナヤ監督(ブラジル)、『死は存在しない』のフェリックス・デフュール=ラペリエール監督(カナダ)の3名。


3監督の名古屋の印象は?

『無名の人生』を手掛けた鈴木竜也監督は、同作の公開時に名古屋のミニシアター「シネマスコーレ」を訪れた経験に触れ、駅を挟んで対照的な表情を見せる名古屋の街並みを興味深く語った。

「シネマスコーレ側とこちら側(ミッドランド側)では街の雰囲気が全く違う。新旧の建物が入り乱れた面白い土地だと感じた」という。

一方、ブラジルのタニア・アナヤ監督は、「マンガ・アニメの伝統を持つ日本に来られて光栄」と述べた上で、「誰もが夢見るジブリパーク」が近くにあることが重要と語り、アニメーション産業における愛知エリアのコンテンツ力の高さが窺える一幕もあった。

また、カナダのフェリックス・デフュール=ラペリエール監督は、日本のアニメや漫画から受けた影響を語り、日本に来日できた思いを熱く語った。

アニメーション作家、それぞれの制作苦労

会見では、それぞれの作家がいかに今回選出された作品を完成させたかについても語られた。

鈴木監督の『無名の人生』は、コロナ禍を機に制作が開始された。元々実写映画を志向していた鈴木監督は、コロナ禍にiPadで独力でアニメーション制作を開始。最初は600円のアプリで始めたという。『無名の人生は』はほぼ1人で約1年半かけてたった一人で描き上げた。「資金も仲間もいない中で、いかに絵を動かさずに長編アニメとして成立させるかを逆算した」という。

対照的に、アナヤ監督の『ニムエンダジュ』は完成までに13年を要した大作だ。ドイツ系ブラジル人の民族学者の生涯を描いた本作は、ブラジルの公的支援に依存していたが、政権交代による文化予算の凍結という政治的リスクに直面。「ボルソナロ政権下では全ての芸術支援が停止し、制作を2度中断した」という。最終的にペルーとの共同製作によって完成にこぎつけたとのこと。

ラペリエール監督の『死は存在しない』は、カナダ・ケベック州の手厚い公的資金(予算の90%)によって支えられている。自身のスタジオを持ち、「商業作品はやらず、作家性の強いインディペンデント作品のみを作る」という方針で活動しているそうで、「リスクはあるが、公的資金のおかげで芸術的な自由を得ている」と語る。

質疑応答では、作品の演出意図や今後の展望についても深い議論が交わされた。

ラペリエール監督は、政治的暴力というテーマを扱うにあたり、具象的な描写と抽象的な色彩フィールドを往還する演出を採用。「暴力が現実を破壊し単純化するさまを、情報の喪失と真実の露見として表現した」と、その意図を解説した。

アナヤ監督は、主人公が訪れる部族ごとに空の色を変える色彩設計について明かし、民族学的リサーチをアニメーション表現に昇華させる手腕を披露した。

次回作について、鈴木監督は「次はチームを組み、大きなバジェットで制作したい」と個人制作からのスケールアップに意欲を見せた。アナヤ監督は低予算シリーズの開発と先住民族作家との共同プロジェクトを、ラペリエール監督は2026年の資金調達完了を目指し、木炭画を用いた新作『Everything is in its Place』の準備を進めているという。

同映画祭は12月17日まで開催。プログラムは公式サイトで確認できる。

《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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